「MOVE FES 2026」でTSI、吉藤オリィ氏、武藤将胤氏が共同開発した「MOVE WEAR 第2弾」が登場

2026年6月20日、六本木EXシアターにて開催された「MOVE FES 2026」において、株式会社TSIホールディングス(以下、TSI)が、株式会社オリィ研究所所長の吉藤オリィ氏、そしてALS(筋萎縮性側索硬化症)患者である武藤将胤氏と共同開発した「MOVE WEAR」プロジェクトの第2弾が発表されました。人工ロボットアームを「服」で支援するというユニバーサルデザインウェアは、約1,100人の観客に披露され、大きな注目を集めました。

ステージ上で、車椅子利用者を含む多様な人々が笑顔で集合写真を撮っている。花束を手に、観客が見守る中、インクルーシブなイベントの成功を祝う感動的な瞬間が写し出されている。

人工ロボットアーム対応「MOVE WEAR 第2弾」のデザインと機能性

今回の「MOVE WEAR 第2弾」は、「MOVE FES 2026」のテーマである「thanks×リスペクト~感謝と尊敬の10年~」から着想を得た「X_CONNECT」をコンセプトに制作されました。10年間の軌跡と未来への挑戦が交差し、武藤将胤氏を中心に人々やテクノロジー、想いが繋がるイメージが込められています。

暗いステージ上で、多くの配線と光る装飾が施されたジャケットを着た男性が車椅子に座っています。スポットライトが彼を照らし、パフォーマンス中のようです。

ナイロンパーカの革新的な特徴

ナイロンパーカには、人工ロボットアームのバッテリー熱がこもる課題に対応するため、熱を逃がしやすいメッシュ素材が随所に取り入れられています。フードの左右にはX型のフック用ループが取り付けられ、人工ロボットアームを使って簡単にフードを着脱できるよう工夫されています。袖口のリブは袖のずり落ちを防ぐ機能を持ち、ステージ映えを考慮してLEDテープがクロス状に袖に配置されました。フードの内側にはテーマカラーである赤と青のLEDテープが配されており、LEDテープが光ることで、遠くからでも人工ロボットアームが上下に動く動作が視覚的に分かりやすくなっています。

MA-1ベストのユニバーサルデザイン

パーカの下に着用するMA-1ベストは、ナイロンツイル素材を使用しています。本格的なフライトジャケット仕様で、箱ポケットやラジエーターポケット、配線タブなどが装備されています。着脱のしやすさを考慮し、両脇にはオープンファスナーが採用され、握力の強弱に関わらず操作しやすいリング状の引手がユニバーサルデザインとして取り入れられました。前身頃には上下どちらからでも開閉できる逆開きファスナーが使われており、車いすに座った状態でも裾幅を調整しやすい設計です。ジェンダーフリー仕様のため、男女問わず快適に着用できる点も特徴です。

アパレルショップの店内で、ハンガーラックに吊るされた黒いベストやその他の衣料品が写っています。奥にはネオンサインがあり、店員らしき女性がカウンターに立っています。

武藤氏がアイデザインしたオリジナルワッペン

今回は、オリィ研究所が開発し、武藤氏が活用している視線入力システム「オリヒメアイプラススイッチ」を使い、武藤氏がアイデザインしたグラフィックをモチーフにしたオリジナルワッペンも制作されました。マグネットを布でくるむことで、好きな場所にワッペンを付けることが可能となっています。

「MOVE WEAR」の販売と「01 ROBOT POP-UP STORE」の展開

これまでの「MOVE FES」では当日限りの衣装提供でしたが、今回はMA-1ベストと各種オリジナルワッペンが商品化されました。「MOVE FES 2026」の会場内、および武藤氏が代表理事を務めるWITH ALSのブランド「01 BORDERLESS WEAR」のオンラインサイトにて受注が受け付けられています。

  • MA-1ベスト:税込44,000円

  • オリジナルワッペン:1枚税込3,000円

購入はこちらから:http://01borderlesswear.stores.jp/

ALS支援と啓発のための募金活動ブース。募金箱には「WITH ALS」のメッセージと日本円が、テーブルには「KEEP MOVING」などのワッペン、書籍、スピーカーが展示されている。

当日会場では、分身ロボット「OriHime(オリヒメ)」と連携した「01 ROBOT POP-UP STORE」がオープンしました。外出困難な方が自宅から遠隔操作で接客を行う分身ロボット「OriHime」のパイロットたちが、遠隔で商品説明だけでなく自己紹介や雑談を交えながら接客・販売を行いました。これにより、障害を持つ方々の社会参加と活躍の場が創出されました。

白いキャップをかぶった女性が、白いヒューマノイドロボットと笑顔で交流している様子を捉えた画像です。イベントか展示会のような場所で、人間とAIのポジティブな関わりを示しています。

「MOVE FES 2026」:テクノロジーとエンターテインメントの融合でALS啓発

ALSの啓発とボーダレスなエンターテインメント体験の創出を目的とした音楽フェス「MOVE FES.」は、2016年にスタートし、今年で10周年を迎えました。

武藤氏自身が視線コントロールでDJ・VJを操作する「EYE VDJ MASA」のライブステージでは、ダンスモーション生成を駆使したデジタルアバターや、脳波でコントロールするロボットアーム演出など、最先端のテクノロジーを融合した身体拡張ライブが披露されました。EYE VDJ MASAのステージ楽曲はすべて武藤将胤氏が視線入力で作詞作曲したオリジナル曲で、脳波によって自身で人工ロボットアームを上下左右に操作し、会場のボルテージを高めました。

また、NTTとの取り組みである「Project Humanity」の一環として、アバター操作に使用されている筋電センサー技術をゲーム操作に応用したドローンレースのeスポーツ大会「MOVE FES.2026 ESPORTS CUP」も開催され、チーム対抗のドローン飛行ゲーム大会がステージ上の大迫力スクリーンで繰り広げられました。

暗いステージで、車椅子に乗ったパフォーマーがVRヘッドセットを装着し、DJ機材の前に立っています。鮮やかなレーザーライトと青紫の照明が空間を彩り、背後の大型スクリーンには幾何学的な模様が映し出され、未来的なライブパフォーマンスを演出しています。

豪華アーティストとALS支援の最前線を語るトークショー

当日のライブステージには、「MOVE FES 2026」の趣旨に賛同した多くのアーティストが出演し、素晴らしいパフォーマンスを披露しました。また、日本から世界へ向けてALSの最前線を紹介するALSトークショーも開催され、テクノロジー分野からは吉藤オリィ氏(WITH ALS技術顧問 / オリィ研究所)、荻野幹人氏(東京大学大学院特任研究員・WITH ALS脳科学技術アドバイザー)、南澤孝太氏(慶応義塾大学大学院メディア研究科教授)、せきぐちあいみ氏(VRアーティスト)、中村真理子氏(NTT)が参加しました。治療薬研究開発のファンドレイジング分野からは、漫画『宇宙兄弟』から始まったALSの治療方法を見つけるための研究開発費を集める活動を行う黒川久里子氏(WITH ALSファンドレイジングパートナー・せりか基金代表)が登壇し、ALS支援の現状と未来について議論が交わされました。

ステージ上で多くの出演者や関係者が集合している様子を捉えた写真です。背景のスクリーンには「MOVE FES. 10TH ANNIVERSARY」と表示されており、多様な人々が集まるイベントの記念撮影であることが伺えます。

関係者のコメントと今後の展望

一般社団法人WITH ALS代表理事で「MOVE FES 2026」総合プロデューサーの武藤氏は、フェスがALSを知ってもらう場だけでなく、ALSと共に生きる今を音楽やクリエイティブの力で切り拓くためのものであると語りました。テクノロジーとクリエイティブの力を掛け合わせることで、身体拡張の新たな未来を創造し、ALSが治せるその日まで自分らしく生きることを目指すという強いメッセージが伝えられました。

TSI代表の下地毅氏は、吉藤オリィ氏の「人類の孤独をリレーションテックで解決する」というミッションと、TSIの「ファッションエンターテインメントの力で、世界の共感と社会的価値を生み出す」というパーパスに共通するものを感じ、今回のユニバーサルデザインの商品化が実現したことへの喜びを表明しました。今後もダイバーシティ&インクルージョンの観点から「One TSI」として、社会的および身体的に困難を抱える方々が笑顔になる支援活動を継続していく方針を示しています。

関連情報

解説:知っておきたい障害福祉関連用語

  • OriHime(オリヒメ): 難病や重度の障がいなどで外出困難な方が、自宅などから遠隔操作で接客や会議参加などを行うことができる分身ロボットです。

  • ALS(筋萎縮性側索硬化症): 進行性の神経変性疾患で、手足やのど、舌などの筋肉がやせて力がなくなり、呼吸も困難になる難病です。意識や知覚は保たれることが多いとされています。

  • ユニバーサルデザイン: 年齢、性別、身体能力、国籍などにかかわらず、誰もが快適に利用できる製品や環境をデザインすることです。

  • 視線入力システム: ユーザーの目の動きを検知し、それをPCやタブレットの操作に変換する技術です。言葉を発したり手を使うことが難しい方がコミュニケーションや操作を行うために利用されます。

  • 筋電センサー技術: 筋肉が収縮する際に発生する微弱な電気信号(筋電)を検出し、その信号を用いて機器を操作する技術です。身体の一部を動かすことができれば、ロボットアームなどのデバイスを制御することが可能になります。

今回の「MOVE WEAR 第2弾」の発表と「MOVE FES 2026」の開催は、障害を持つ人々の生活の質向上と社会参加を促進する上で、ファッションとテクノロジーが果たす役割の大きさを改めて示すものと言えるでしょう。今後もこのような取り組みが広がり、より多くの人々が自分らしく輝ける社会が実現することが期待されます。

Written by

菅間 大樹

findgood編集長、株式会社Mind One代表取締役
雑誌制作会社、広告代理店、障害者専門人材サービス会社を経て独立。
ライター・編集者としての活動と並行し、就労移行支援事業所の立ち上げに関わり、管理者も務める。職場適応援助者(ジョブコーチ)養成研修修了。
著書に「経営者・人事担当者のための障害者雇用をはじめる前に読む本」(Amazon Kindle「人事・労務管理」「社会学」部門1位獲得)がある。
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