株式会社医学書院の新シリーズ「架け橋のほん」第1作『おたがいさまの思想――南医療生協と考えたこと』(鈴木敦秋著)の概要、目次構成、著者の経歴、地域医療や福祉における「相互扶助」の重要性を解説します。
この記事で分かること
- 『おたがいさまの思想――南医療生協と考えたこと』の刊行情報と基本概要
- 愛知県・南医療生活協同組合(南生協病院)の歴史と地域ケアの取り組み
- 著者のジャーナリスト・精神保健福祉士である鈴木敦秋氏の経歴と実績
- 本書が提示する「おたがいさま」の思想と全6章の目次構成
- 医療生協や精神保健福祉士など障害福祉・医療に関する初心者向け用語解説
- 「架け橋のほん」シリーズのコンセプトと今後の刊行ラインナップ
近年、感染症の流行や災害の発生などにより、日々の暮らしと地域における支え合いのあり方が改めて見直されています。医療や福祉の現場では、単に病気を治療するだけでなく、人々の暮らしや尊厳をどのように支えていくかが重要な課題となっています。
本記事では、2026年10月に株式会社医学書院より刊行された書籍『おたがいさまの思想――南医療生協と考えたこと』を取り上げ、その背景にある地域医療の実践や「相互扶助」の思想について解説します。
H2:書籍『おたがいさまの思想――南医療生協と考えたこと』の概要と背景
株式会社医学書院の新シリーズ「架け橋のほん」第1作としての位置づけ
株式会社医学書院(本社:東京都文京区、代表取締役社長:金原俊)は、2026年10月より医療・ケアを切り口に異なる領域をつなぐ新シリーズ「架け橋のほん」を創刊しました。その第1作目として2026年10月26日に刊行されたのが、鈴木敦秋氏の著書『おたがいさまの思想――南医療生協と考えたこと』です。本書は、これからの「生きる」ことや地域での支え合いを考える思想ノンフィクションとして企画されています。
地域住民が生んだ南医療生活協同組合(南生協病院)の歴史と取り組み
本書の題材となっている愛知県の「南医療生活協同組合」は、伊勢湾台風の後に地域住民たちの手によって立ち上げられた組織です。南生協病院を中核としながら、組合員による運営のもとで地域住民にひらかれた医療やケアが実践されています。コロナ禍以降、災害や暮らしの危機が隣り合わせとなる中で、行政や医療機関単体ではカバーしきれない住民同士の助け合いのモデルとして注目されています。
著者・鈴木敦秋氏の経歴と専門性
元読売新聞医療部編集委員・受賞歴のあるジャーナリスト
著者の鈴木敦秋(すずき のぶあき)氏は、1963年東京都生まれのジャーナリストです。商社勤務を経て1990年に読売新聞東京本社に入社し、社会部記者や医療部記者として長期連載「医療ルネサンス」などを担当しました。医療部編集委員を務めた後、2023年12月に退職しています。 過去には『明香ちゃんの心臓 <検証>東京女子医大病院事件』(講談社)で第29回講談社ノンフィクション賞(現・講談社 本田靖春ノンフィクション賞)を受賞したほか、長期連載『いのちの値段』で第7回日本医学ジャーナリスト協会賞優秀賞を受賞するなど、医療分野での豊富な取材実績を有しています。
精神保健福祉士としての視点と主な著書
鈴木氏はジャーナリストとしての活動にとどまらず、精神保健福祉士の資格も所持しています。医療現場や当事者の視点に立った著作を多数手掛けており、『大学病院に、メス!』(講談社)や『小児救急 「悲しみの家族たち」の物語』(講談社)などの著書があります。専門的な医療取材の知見と精神保健福祉士としての福祉的視点の双方が、本書の考察に反映されています。
『おたがいさまの思想』が提示する「地域ケア」と「相互扶助」の本質
医療だけでは解決できない暮らしと尊厳を支える「おたがいさま」
本書では、病気や障害、老い、死といった、医療の枠組みだけでは解決しきれない人の現実に対して、暮らしと尊厳を支えるケアの本質が論じられています。本文中では「おたがいさま」という言葉について、失われかけたからこそ時代の中で新たな価値が託されている概念であり、ケアの本質と深く響きあうものであると述べられています。
全6章で展開される目次構成とテーマ
本書は以下の目次構成により、多角的な視点から「地域」と「ケア」の関係性を紐解いています。
- まえがき 「コロナ禍後」のリアリティ
- 第一章 浮き沈む「地域」
- 第二章 「つながり」を求めて
- 第三章 コロナ禍と「型」の力
- 第四章 ケアの「継承」
- 第五章 病院から見た「地域」
- 第六章 おたがいさまの「思想」
- あとがき
地域社会の変容やコロナ禍での影響、病院と地域との関係性、そして未来へのケアの継承といったテーマが段階的に考察されています。
障害福祉・医療に関する専門用語の整理
医療生活協同組合(医療生協)とは?
医療生活協同組合(医療生協)とは、地域住民(組合員)と医療専門職が出資・利用・運営を行い、自分たちの健康や地域づくりに取り組む消費生活協同組合法に基づいた組織です。
- 身近な例:地域の住民たちが自ら資金を出し合って「自分たちが求める病院やケア施設」を作り、医師や看護師と共に運営や地域活動へ関与する仕組みです。
精神保健福祉士(PSW)とは?
精神保健福祉士とは、精神障害を持つ方や心に課題を抱える方の生活支援、社会復帰、日常生活の相談に乗る福祉の国家資格職種です。
- 身近な例:医療機関や地域社会において、病気の治療だけでなく「その人がその人らしく安心して暮らせる環境づくり」をサポートする専門相談員です。
相互扶助(おたがいさま)とは?
相互扶助とは、人々が互いに助け合い、支え合う関係性や仕組みのことです。
- 身近な例:近所同士で困ったときに声を掛け合ったり、行政制度や専門サービスだけでは行き届かない日常の手助けを「お互い様」の気持ちで行う関係性を指します。
Q&A(よくある質問)

Q1. 書籍『おたがいさまの思想』の基本情報や購入方法は?
A. 株式会社医学書院より刊行されており、定価は2,420円(本体2,200円+税)です。仕様は四六並製・324頁で、ISBNは978-4-260-06724-9となっています。全国の書店やオンラインショップ、医学書院のウェブサイト等で入手が可能です。
Q2. 新シリーズ「架け橋のほん」のコンセプトと今後の刊行予定は?
A. 「架け橋のほん」は、医療・ケアを切り口に異なる領域をつなぐ人・知・技を探求する読み物シリーズです。2026年から2027年にかけて、造形作家の岡﨑乾二郎氏による『治癒とはなにか』、文化人類学者の高橋絵里香氏による『ケアのインフラストラクチャー』、医師の國松淳和氏による『医師と患者のあいだで必ず起こること』などの刊行が予定されています。
比較表(『おたがいさまの思想』基本情報とシリーズ予定一覧)
| 項目 / 書名 | 『おたがいさまの思想――南医療生協と考えたこと』 | シリーズ「架け橋のほん」今後の刊行予定作品 |
|---|---|---|
| 著者 | 鈴木敦秋(ジャーナリスト・精神保健福祉士) | 岡﨑乾二郎、高橋絵里香、國松淳和 ほか |
| 発行元・刊行月 | 医学書院 / 2026年10月刊行(10月26日発売) | 医学書院 / 2026年〜2027年刊行予定 |
| 判型・頁数・定価 | 四六並製・324頁・2,420円(税込) | 順次発表(書名はいずれも仮題) |
| 主なテーマ | 南医療生協の取り組みを通じた地域ケアと相互扶助の考察 | 医療・ケアと美術、文化人類学、臨床等の異なる領域の接続 |
まとめ

書籍『おたがいさまの思想――南医療生協と考えたこと』は、愛知県の南医療生活協同組合の歴史と実践を通じて、医療だけでは解決できない人の暮らしや尊厳を支える「おたがいさま」のケアの本質を深掘りした作品です。著者の鈴木敦秋氏によるジャーナリズムと精神保健福祉士の知見が融合しており、地域医療や福祉の現場に携わる方から、これからの生き方に関心を持つ方まで幅広く示唆を与える内容となっています。

