近年、各地で地震や水害などの自然災害が相次いで発生しており、防災意識の高まりが見られます。しかし、「防災グッズを購入して保管しているけれど、いざという時に使いこなせるだろうか」という不安を抱える方も少なくありません。
特に視覚に障がいのある方にとっては、見えづらさによって自宅内の危険箇所を事前に把握しにくかったり、新しく用意した備蓄品を暗闇や緊急時にスムーズに扱えるかわからなかったりと、災害時に初めて直面する課題が存在するとされています。
本記事では、2026年10月に開催される視覚障がい者向けの体験型セミナーの事例を取り上げながら、障害福祉の視点に基づいた「実践的な防災の備え」や、地域社会に求められる配慮について解説します。
📌 この記事で分かること
- 視覚障がい者が災害時に直面しやすい課題と住環境レイアウトの重要性
- IBF Foundation等主催の「実践・防災セミナー」における体験型プログラムの内容
- 障害福祉に関わる専門用語(避難行動要支援者、防災介助士、障害者差別解消法など)の分かりやすい解説
- 平時からの備えや地域でのサポートに関するQ&A
視覚障がい者の防災における課題とは?従来の「備蓄だけ」から一歩進む重要性
災害への備えといえば、非常食や防災セットの購入が思い浮かびがちです。しかし、物品を用意するだけでは不十分な場合があることが指摘されています。
視覚障害と災害時リスク:自宅レイアウトの見直し
視覚障がいのある方は、視界の制限や全盲などの状況により、地震などで物品が散乱した際、避難経路の確保や室内での安全な移動が困難になる傾向があります。また、新しく購入した備蓄品であっても、災害時に初めて開封して使用する場合、取扱説明書が読めなかったり構造が把握できなかったりして、戸惑う可能性があるとされています。
そのため、平時のうちに住環境のレイアウトを見直し、危険個所を減らしておくことや、防災グッズに実際に触れて使用感を確かめておくことが推奨されています。
【専門用語解説】「避難行動要支援者」とは?
防災や障害福祉の現場で頻繁に用いられる専門用語について解説します。
- 避難行動要支援者(ひなんこうどうようしえんしゃ): 災害が発生した際、自力で避難することが困難であり、避難の支援を必要とする方々のことを指します。高齢者、障害のある方、乳幼児、妊産婦などが含まれます。自治体では、当事者の同意を得て「避難行動要支援者名簿」を作成し、平時からの見守りや災害時の安否確認・避難支援に活用する取り組みが進められています。
視覚障がい者のための「実践・防災セミナー」の概要と注目ポイント
災害時の不安を軽減するため、知識の習得だけでなく「体験」に重点を置いた取り組みが行われています。
セミナーの開催概要と主催団体の取り組み
一般財団法人インターナショナル・ブラインドフットボール・ファウンデーション(IBF Foundation)が運営に携わる「VISI-ONE Innovation Hub」は、2026年10月4日(日)に視覚障がい者を対象とした「実践・防災セミナー」を開催します。本セミナーはIBF Foundationが運営主管を務め、参天製薬株式会社が運営サポート、公益財団法人日本ケアフィット共育機構が協力を行っています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| セミナー名 | 視覚障がい者のための「実践・防災セミナー」 |
| 開催日時 | 2026年10月4日(日)14:00~16:00 |
| 会場 | 公益財団法人日本ケアフィット共育機構(東京都千代田区神田三崎町2-2-6) |
| 開催形態 | 対面参加(定員20名前後・予定)/ オンライン参加(講義パートのみ) |
| 参加費 | 無料 |
| 主催・運営 | 主催:VISI-ONE Innovation Hub / 運営主管:IBF Foundation |
講師・冨樫正義氏と専門資格の役割
本セミナーの講師は、公益財団法人日本ケアフィット共育機構の東京本部長である冨樫正義氏が務めます。冨樫氏は、企業や教育機関などで障害のある方への介助技術や障害者差別解消法に関する講演活動を行うほか、施設チェックや避難行動要支援者対策にも携わっています。
- サービス介助士(さーびすかいじょし): 高齢者や障害のある方に対し、おもてなしの心と正しい介助技術をもって接するための資格です。
- 防災介助士(ぼうさいかいじょし): 災害時において、高齢者や障害者などの要配慮者に対する適切な避難支援や、避難所での配慮・介助を行うための専門知識・技能を備えた人材です。
「一度やったことがある」状態をつくるプログラム
本セミナーの構成は、以下の3つのステップで進められます。
- 災害時に備えて視覚障がい者が準備しておけること
- 自分の家で考える災害時に安全に過ごすには(自宅のレイアウトシミュレーション)
- 【体験】備蓄品に触れてみよう(簡易トイレの組み立て体験など)
もしもの時に初めて試すのではなく、平時のうちに手で触れて「一度やったことがある」経験を蓄積しておくことで、災害発生時の恐怖感やトラブルを軽減することが期待されています。
障害福祉視点で考える共生社会とユニバーサルデザインの防災
防災対策は個人の備えにとどまらず、社会全体の環境整備や法制度の理解とも深く関連しています。
【専門用語解説】障害者差別解消法とユニバーサルチェック
- 障害者差別解消法(しょうがいしゃさべつかいしょうほう): 障害を理由とする差別を禁止し、すべての人が障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現を目指す法律です。行政機関や事業者に対し、障害のある方への「合理的配慮の提供」を義務付けています。
- ユニバーサルチェック: 施設や設備、サービスにおいて、高齢者や障害者、外国人など多様な人々が利用しやすい設計(ユニバーサルデザイン)になっているかを当事者や専門家が点検・評価する取り組みです。
防災の領域においても、避難所の環境整備や情報伝達の手法において、こうした障害福祉の視点を取り入れることが不可欠とされています。
よくある質問(Q&A)

Q1. 視覚障がい者が防災グッズを準備する際、どのような点に注意すればよいですか?
A. 必要な物品を揃えることに加え、どこに何が保管されているかを触覚で判別できるように工夫することが有効とされています。また、ラジオや懐中電灯、簡易トイレなどの器具は、平時に実際に触って操作手順を確認しておくことが推奨されます。
Q2. 避難時に視覚障がい者をサポートする際、どのような声かけが適切ですか?
A. 「あっち」「そっち」といった指示語ではなく、「右手に階段があります」「約3メートル先に曲がり角があります」のように具体的な方向や距離を言葉で伝えることが望ましいと考えられます。また、肘の上や肩のあたりを軽く持ってもらい、半歩前を歩いて誘導する「手引き」の技術が知られています。
Q3. セミナーなどの体験イベントは遠方からでも参加できますか?
A. 該当の「実践・防災セミナー」のように、講義パートについてオンライン参加に対応しているイベントも存在します。直接会場に足を運ぶことが難しい場合でも、オンライン配信を活用して知識を深めることが可能です。
まとめ:障害福祉と防災の連携が拓く安全な未来

災害時の安全確保には、個人の備えと社会的な支援体制の両面が重要です。
視覚障がい者のための取り組みとして開催される「実践・防災セミナー」は、単に備蓄品を用意するだけでなく、平時のうちに触れて試す「体験」を通じて、災害時の危険や困りごとを減らすアプローチを示しています。
障害福祉への理解を深め、当事者視点に立った防災対策やユニバーサルな支援を広げていくことが、誰もが安心して暮らせる共生社会の実現につながると考えられます。



