障害のある人も考える、人生の最終章における自己決定と尊厳
萬田緑平氏の著書『死ぬまで生きる』は、「人生の最終章のシナリオを書くのは患者さんであること」「余命は医師ではなく、患者さんが決めること」というメッセージを強く打ち出しています。これは、障害のある方々が自身の人生を主体的に選択し、尊厳を持って生きるという考え方と共通するものです。
「余命は自分で決める」:主体的な選択を支える福祉の役割
本書で提唱される「無駄な治療をしない」「寝たきりにならない」「亡くなる直前まで自分の足でトイレに行く」といった考え方は、単なる延命ではなく、生活の質(QOL)を重視する姿勢を示しています。胃ろう、点滴、抗がん剤といった延命治療の実態にも触れ、それらの選択が個人の生き方にどう影響するかを深く問いかけています。障害のある方々が、自身の意思で医療やケアの選択を行うための情報提供や支援は、福祉の重要な役割と言えるでしょう。
在宅緩和ケア医が提唱する「死ぬまで生きる」という選択肢
萬田緑平氏は、2,000人以上の最期を看取ってきた経験から、病院での最期と自宅での最期には大きな違いがあることを指摘します。病院が「アウェイ」であるのに対し、自宅は「ホーム」であり、住み慣れた場所でこそ穏やかな最期を迎えられると語ります。
自宅で迎える穏やかな最期:具体的なエピソードと支援の可能性
本書には、自宅で穏やかな最期を迎えた多くの患者さんのエピソードが紹介されています。例えば、亡くなる15分前に訪問入浴を楽しみ「極楽〜極楽〜」と笑っていたおばあちゃん、家族に「ありがとう!」と告白して爆笑を誘ったおじいちゃんなど、温かい家族の愛と歴史に縁どられた看取りの場面が描かれています。これらの実例は、自宅での看取りがドラマの最終回よりもずっと素敵な場面にあふれていることを示唆しています。
障害のある方々が自宅や住み慣れた地域で生活を続けるための支援は、障害福祉の重要な柱です。在宅緩和ケアは、その支援の最終段階として、個人の尊厳を守りながら、住み慣れた場所で安らかに旅立つための選択肢を提供します。
歩けることが生きる力:障害福祉の視点から考える活動維持の重要性
萬田緑平氏は、外来で患者さんに「歩けなくなったら死んじゃうよ。でもがんばって歩いていれば死ぬまで歩けますよ」とハッパをかけると言います。この「歩けることが生きる力」というメッセージは、障害のある方々にとって特に心に響くかもしれません。
亡くなる前日まで「トイレに行く」という目標
「歩けなくなると、今日できていることのほとんどができなくなります。トイレに行けない。おむつになる。この現実が生きるつらさになってしまうのです。」と著者は語ります。だからこそ、「亡くなる前日までトイレに行くこと!」を目標に掲げると、多くの患者さんが目を輝かせると言います。この目標は、単なる身体機能の維持だけでなく、自己肯定感や尊厳の保持にも繋がります。障害福祉分野でのリハビリテーションや日常生活動作(ADL)の維持支援も、この考え方と深く連動しています。
著者紹介と書籍情報
萬田緑平(まんだ・りょくへい)氏
「緩和ケア 萬田診療所」院長。1964年生まれ。群馬大学医学部を卒業後、外科医として手術や延命治療に携わる中で終末ケアに関心を持ち、緩和ケア医に転身しました。2017年にがん専門の緩和ケア診療所を開設し、亡くなるまで自宅で暮らしたい人々を外来と訪問診療でサポートしています。年間50回以上の講演活動も行い、著書に『自宅で迎える本当に幸せな最後のとき』『家で死のう! 緩和ケア医による「死に方」の教科書』『棺桶まで歩こう』などがあります。
書籍情報

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書名: 死ぬまで生きる 穏やかな死に医療はいらない(河出新書)
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著者: 萬田緑平
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仕様: 新書判/並製/232ページ
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発売日: 2026年4月28日
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税込定価: 990円(本体900円)
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ISBN: 978-4-309-63202-5
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装丁: オクターブ
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amazon:https://amzn.to/4cYmxI9
※電子書籍も近日中に発売予定です。詳細は各電子書籍ストアにてご確認ください。
障害福祉の視点から考える、これからの終末期ケア
萬田緑平氏の『死ぬまで生きる』は、人生の最終章をいかに自分らしく、尊厳を持って生き抜くかという問いに、具体的な選択肢と温かいエピソードで応えてくれる一冊です。障害のある方々やそのご家族にとって、この書籍は、自身の「終活」や「人生会議(アドバンス・ケア・プランニング)」を考える上で、貴重な情報源となるでしょう。自己決定が尊重され、住み慣れた場所で安心して最期を迎えられる社会の実現に向けて、本書が新たな議論と選択肢を提示してくれることを期待します。

