この記事で分かること
- 電話における「きこえの壁」の現状:聞こえにくさを抱える推定1,400万人以上の背景と課題
- 新常識アプリ「ヨメテル」の概要:相手の声をリアルタイムで文字化する仕組みと特徴
- 障害福祉と法律の関わり:「聴覚障害者等による電話の利用の円滑化に関する法律」と公共インフラの役割
- 日常や緊急時の利用方法:24時間365日対応や緊急通報(110番・119番等)への対応状況
- よくある疑問を解決するQ&A:利用対象者や料金体系に関する疑問への回答
日常のコミュニケーションやビジネスにおいて、電話は現在も重要な連絡手段として活用されています。日本国内では年間のべ約1,140億回の電話利用が行われているとされています。しかし、聴覚障害のある方や加齢に伴い耳が遠くなった高齢者など、電話での音声聞き取りに不安や困難を抱えている読者の方も少なくありません。
障害福祉の分野では、こうした音声を前提とした社会構造における課題を「きこえの壁」と呼ぶことがあります。社会のバリアフリー化が進む中で、電話をはじめとする情報アクセシビリティの保障は極めて重要なテーマとなっています。
本記事では、一般財団法人日本財団電話リレーサービスが配信したプレスリリースやビジネス映像メディア「PIVOT」での解説内容を基に、相手の声を読む電話アプリ「ヨメテル」の機能や、電話リレーサービスが果たす障害福祉上の役割について解説します。
障害福祉の現場で注目される「きこえの壁」とは?日常生活や電話利用における課題
障害福祉の取り組みにおいて、車椅子用のスロープや多目的トイレといった「物理的なバリアフリー」だけでなく、情報やコミュニケーションにおける「情報のバリアフリー」の重要性が高まっています。その中でも、電話通話における障害は目に見えにくく、周囲に気づかれにくい課題とされています。
加齢や難聴により「電話がきこえにくい」と感じる人は推定1,400万人以上
日本国内において、電話での相手の声が聞き取りにくいと感じている「潜在的ユーザー」は1,400万人以上にのぼると試算されています。この試算は、一般社団法人日本補聴器工業会による「JapanTrak 2025 調査報告」および総務省の人口推計を基に算出されたものです。
聞こえにくさは生まれつきの難聴だけでなく、加齢に伴う加齢性難聴や突発的な病気など、年代を問わず誰にでも起こりうる現象です。しかし、「少し聞き取りにくいだけだから」と遠慮して我慢したり、周囲に相談しづらかったりすることで、課題が見えにくくなっている側面があると指摘されています。
社会生活や緊急時における電話バリアフリーの必要性
買い物や病院の予約、行政手続き、さらには職場での業務連絡など、現代社会では電話での確認を求められる場面が数多く存在します。聞こえに不安があることで電話利用を避けるようになると、社会参加の機会が制限されたり、必要な支援情報を受け取りにくくなったりする恐れが考えられます。
さらに、事件や事故、急病が発生した際の緊急通報において、迅速かつ確実な意思疎通が行える環境を整備することは、障害福祉の観点からも生命と安全を守る重要な基盤となります。
ビジネス映像メディア「PIVOT」で話題!「相手の声が読める電話」アプリ「ヨメテル」の仕組みと特徴
ビジネス映像メディア「PIVOT『&新常識』」において、総務大臣指定電話リレーサービス提供機関である「一般財団法人日本財団電話リレーサービス」が出演し、「きこえの壁」を解消する新たな電話のあり方として「ヨメテル」が紹介されました。
番組内では、オトクリニック東京院長で慶應義塾大学名誉教授の小川郁氏、気象予報士・防災士で両耳難聴の舩橋沙貴氏、同財団広報チームディレクターの上村麻子氏らが出演し、専門的知見や当事者の視点を交えた解説が行われました。
電話リレーサービス提供機関(日本財団電話リレーサービス)とは
一般財団法人日本財団電話リレーサービスは、総務大臣から指定を受けた電話リレーサービス提供機関です。設立は2020年8月であり、聴覚障害者等の電話利用を支援するための公共インフラの運営を担っています。
AIと手動修正を選べる「文字起こし機能」の仕組み
「ヨメテル」は、通話相手の発話内容をリアルタイムで画面上に文字表示する電話アプリです。相手の声を聞くだけでなく「読む」ことで、スムーズな意思疎通を補助する仕組みとなっています。
ヨメテルでは、文字起こしの方法として以下の2つのモードを都度選択できる仕様が採用されています。
- AIモード(速度重視):人工知能による自動音声認識を活用し、リアルタイム性と素早い応答を重視するモードです。
- +修正モード(正確性重視):AIによる自動認識に加えて、オペレーター等による人間の手動修正を組み合わせることで、より高い正確性を追求するモードです。
このように、会話のテンポを重視したい日常会話と、内容の正確さが求められる手続き等に応じて表示方法を選べる点が特徴とされています。
相手側の操作不要・声で会話ができる利便性と料金体系
ヨメテルの利用において、通話相手側には特別なアプリのインストールや特別な操作は必要ありません。着信側は冒頭約2秒間の音声ガイダンスを聞いた後、通常の電話と同様に音声で会話を継続することができます。発信者(ヨメテル利用登録者)側も、自らの「声」を使って会話を行う形となります。
料金体系に関しては、以下の通り設定されています。
- 文字起こし利用料:無料(相手の声を表示する文字化機能自体の費用は発生しません)。
- 通話料:電話をかけた側(発信者)が通話料を負担します。
24時間365日対応と緊急通報への接続
ヨメテルは、時間帯を問わずいつでも利用できるよう24時間365日の提供体制が整えられています。また、警察(110番)や消防・救急(119番)、海上保安庁(118番)といった緊急通報への発信にも対応しており、緊急時における確実な連絡手段として機能することが期待されます。
障害福祉における電話のバリアフリー化と法律(電話リレーサービス法)
電話のバリアフリー化は、民間企業の自主的な取り組みにとどまらず、国の法律に基づいた公共施策として推進されています。
「聴覚障害者等による電話の利用の円滑化に関する法律」に基づく公共インフラ
日本においては、「聴覚障害者等による電話の利用の円滑化に関する法律(令和2年法律第53号)」が施行されています。この法律は、聴覚や言語機能に障害がある方々の電話利用を円滑に行える環境を整備し、共生社会の実現に寄与することを目的としています。
法律に基づき安定的な運用が定められているため、電話リレーサービスや関連アプリは、電気や水道、通常の電話網と同様に公共性の高いインフラストラクチャーとして位置づけられています。
音声通話依存からインクルーシブな社会へのアップデート
これまで電話は「音声を相互に聞き取り・発声すること」を前提としたツールとして使われてきました。しかし、技術の進化や制度の整備により、文字や手話などを組み合わせた「きこえの状況に関わらず誰でも使いやすい電話」へとアップデートが進んでいます。
障害の有無によって利用できるサービスや情報に格差が生じない環境を目指す「インクルーシブ社会(包摂的社会)」の実現において、こうした電話アクセシビリティの向上は不可欠な要素であると考えられています。
【Q&A】よくある質問

障害福祉に関心のある読者や、利用を検討されている方から寄せられる代表的な質問とその回答をまとめました。
Q1. 「ヨメテル」の利用対象者はどのような人ですか?
A. 身体障害者手帳の有無に関わらず、「電話で相手の声が聞き取りにくいことがある」と感じているすべての方が利用登録の対象となります。加齢による聞こえにくさを感じている高齢者の方や、一時的に聴力が低下している方なども対象に含まれます。
Q2. 相手の声を文字化する機能に追加料金はかかりますか?
A. 声を文字にするサービス利用自体に料金はかかりません。通話料に関しては、電話をかけた側が通常の通話料を負担する仕組みとなっています。
Q3. 通話相手(電話を受ける側)もアプリをダウンロードする必要がありますか?
A. 通話相手がアプリをダウンロードする必要はありません。相手は普段お使いの固定電話やスマートフォンでそのまま着信し、冒頭のガイダンス後に音声で会話することができます。
Q4. 夜間や休日、緊急時でも利用できますか?
A. はい、24時間365日いつでも利用可能です。また、110番や119番などの緊急通報電話への発信にも対応しています。
まとめ:きこえの壁をなくす最新技術が拓く障害福祉の未来

本記事では、電話における「きこえの壁」の現状と、日本財団電話リレーサービスが提供する「ヨメテル」をはじめとするバリアフリー化の取り組みについて解説しました。
- 聞こえにくさを抱える人は国内に推定1,400万人以上存在し、情報のバリアフリー化が求められています。
- アプリ「ヨメテル」は、相手の声をリアルタイムで文字化し、AIと修正機能を組み合わせてスムーズな通話を補助します。
- 法律(令和2年法律第53号)に基づく公共インフラとして、24時間365日体制で運用されています。
- 相手側のアプリ導入は不要で、24時間の緊急通報にも対応しています。
テクノロジーの活用と法制度の整備によって、電話という身近なインフラが誰もが使いやすい形へと進化しています。障害福祉の現場やご家庭において、コミュニケーションのバリアを減らし、誰もが安心して社会とつながり続けられる環境づくりが今後ますます期待されます。



