「応援には本当に力があるの?」パラ・パワーリフティングから生まれた新しい教育プログラム

特定非営利活動法人日本パラ・パワーリフティング連盟(JPPF)は、2026年7月6日、福島市立荒井小学校において、「応援には本当に力があるの?」をテーマにした体験型教育プログラムを実施しました。このプログラムは、子どもたちが「挑戦」「応援」「勇気」を体験しながら、「応援には本当に力があるのか」を自ら確かめることを目的としています。競技を学ぶこと自体を主眼とはしていません。

「応援の力」を体験する教育プログラムの目的と背景

知識から体験へ:福島市立荒井小学校での実践

本プログラムに先立ち、子どもたちは事前学習として「応援にはどんな効果があるのか」を調べ、クラスオリジナルの応援コールを考案しました。これは、知識として「知る」だけでなく、実際に応援し、応援される体験を通して「分かる」へとつなげることを重視しているためです。

第一号モデルとして実施された福島市立荒井小学校では、4年生25名、6年生17名、計42名が参加しました。

近年、学校教育の現場では、子どもたちの挑戦する意欲や自己肯定感の向上、互いを認め合う学級づくりといった「心を育てる教育」の重要性が高まっています。このような社会背景を受け、JPPFはパラ・パワーリフティングが持つ競技特性を教育に活かした体験型プログラムの開発に至りました。

なぜパラ・パワーリフティングが教育テーマに?

パラ・パワーリフティングは、下肢に障がいを持つ選手が行うベンチプレス競技です。この競技では、一人の選手に会場全体の応援が集まるという特徴があります。

子どもたちは、応援が選手の挑戦を後押しする様子を目の前で体感できます。この競技特性を活かし、本プログラムでは「応援」を教育テーマとして設定しました。

東京2020パラリンピック代表選手が示す「挑戦の価値」

光瀬智洋選手による熱い授業とデモンストレーション

授業では、児童全員が「挑戦する」「応援する」「応援される」という三つの体験に取り組みました。講師は、東京2020パラリンピック日本代表であり、男子59kg級日本記録保持者である光瀬智洋選手が務めました。

プログラムの最後には、光瀬選手が自己ベスト158kgの98%にあたる154kgに挑戦しました。

光瀬選手は児童に対し、「失敗が怖いから挑戦しないのではなく、挑戦することが大切。だから、この挑戦をみんなの応援で後押ししてほしい。」と語りかけました。その呼び掛けに応え、子どもたちはクラスオリジナルの応援コールで体育館いっぱいの声援を送りました。その結果、直前3日間の福島合宿では成功できなかった154kgを、子どもたちの大声援を受けて見事成功させました。

成功後、光瀬選手は「みんな、ありがとう!みんなの応援のおかげで154kgが上がりました。パラ・パワーリフティングは、応援してくれる人がいて初めて完成するスポーツなんです。」と感謝の気持ちを伝えました。

選手からのメッセージ:「一歩踏み出す勇気」と「応援の循環」

授業の締めくくりに、光瀬選手は自身の経験を交えながら、子どもたちへメッセージを送りました。「できないかもしれないと思って挑戦をやめるのではなく、少しだけ一歩踏み出してみてください。その一歩を踏み出す勇気をくれるのが応援です。」と、挑戦することの大切さを伝えました。

また、「応援されることを待つだけではなく、自分から人を応援することで応援は巡ってきます。今日から家族や友達を応援してみてください。」と、応援が持つ双方向の力についても呼び掛けました。

参加者の声と今後の展望:共生社会への一歩

児童と教諭、選手が感じた「応援の力」

プログラムに参加した児童からは「光瀬選手の挑戦を見て、本当に応援には力があるんだと思いました。」という声が聞かれました。担任教諭も「子どもたちと一緒に夢中で応援しているうちに、私自身も気持ちがすっきりして元気になりました。」と、応援がもたらすポジティブな影響を実感したようです。

光瀬智洋選手自身も、「最初は緊張していた子どもたちが最後には笑顔で帰っていく姿を見て安心しました。子どもたちの応援を力に変えて154kgを成功させることができ、この経験は競技人生にとっても大きな財産になりました。」と語っています。

光瀬智洋選手は、1993年3月23日生まれ、株式会社エグゼクティブプロテクション所属の男子59kg級日本記録保持者です。東京2020パラリンピックに出場し、毎年国際大会にも出場しています。2026年10月に名古屋で開催予定のアジアパラリンピックや2028年ロサンゼルスパラリンピックの日本代表入りを目指し、トレーニングに励んでいます。愛称はTOM(トム)です。

全国展開を目指すJPPFの取り組み

JPPFは、今回の荒井小学校での実践を第一号モデルとして、今後、全国の学校、自治体、教育委員会と連携しながら、本プログラムを「挑戦」「応援」「勇気」を体験的に学ぶ教育プログラムとして広めていく方針です。この取り組みは、子どもたちの健全な成長を促し、多様性を認め合う共生社会の実現に向けた一歩となることが期待されます。

本プログラムに関する詳細情報は、以下のリンクよりご確認いただけます。

パラスポーツを通じた教育活動は、子どもたちにとって貴重な学びの機会を提供し、未来の社会を担う上で大切な価値観を育むことでしょう。JPPFの今後の展開に注目が集まります。

Written by

菅間 大樹

findgood編集長、株式会社Mind One代表取締役
雑誌制作会社、広告代理店、障害者専門人材サービス会社を経て独立。
ライター・編集者としての活動と並行し、就労移行支援事業所の立ち上げに関わり、管理者も務める。職場適応援助者(ジョブコーチ)養成研修修了。
著書に「経営者・人事担当者のための障害者雇用をはじめる前に読む本」(Amazon Kindle「人事・労務管理」「社会学」部門1位獲得)がある。
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