障害福祉の現場で「支援記録や書類作成などの事務作業に追われ、利用者さんと向き合う時間が十分に取れない」「就労継続支援B型での工賃向上に向けた新たな施策が打てない」といった悩みを抱えていませんか?
本記事では、2026年10月に登場した業務支援エージェント「HAKASE CARE(ハカセケア)」について解説します。
📌 この記事で分かること
- 障害福祉現場の課題:支援記録や書類作成などの事務作業負担と工賃向上の難しさ
- HAKASE CAREの概要と特徴:AIが先回りして業務をサポートする日本初※の「業務支援エージェント」
- 現場発の開発ストーリー:9年の構想と挫折を経て、利用者さんとともに開発した背景
- 導入メリットと料金体制:月額費用、無料体験期間、今後の対象サービス拡大予定
- 障害福祉×AI活用に関するQ&A:現場導入の疑問点を分かりやすく解説
障害福祉現場が抱える「業務負担」と「支援」の両立における課題
支援記録や国保連請求など事務作業による圧迫
障害福祉の現場では、日々利用者の様子を記録する「支援記録」の作成や、自治体・国民健康保険団体連合会へ給付費を請求する「国保連請求(こくほれんせいきゅう)」などの事務手続きが不可欠です。
💡 用語解説:国保連請求(こくほれんせいきゅう)とは?
障害福祉サービス事業所が、提供したサービス費用(障害福祉サービス給付費)を受け取るために、国民健康保険団体連合会へ毎月提出する請求業務のことです。記載漏れや計算間違いが許されないため、職員の事務負担が大きい作業の一つとされています。
こうした書類作成や確認作業に多くの時間を取られることで、支援員がパソコンに向かう時間が長くなり、本来最も注力したい「利用者一人ひとりと向き合う時間」が制限されやすい点が業界全体の課題として指摘されています。
就労継続支援B型における工賃向上という恒常的なテーマ
💡 用語解説:就労継続支援B型とは?
障害や体調により、一般企業等で雇用契約を結んで働くことが困難な方に対して、就労の機会や生産活動の場を提供する障害福祉サービスです。作業の対価として「工賃」が支払われます。
就労継続支援B型事業所では、利用者の自立支援や生活安定に向け、生産活動による「工賃」をどのように向上させるかが重要なテーマとなっています。しかし、日々の業務管理や事務手続きに追われる中で、新たな生産活動や事業展開にリソースを割くことが難しいケースも少なくありません。
現場発のAI業務支援エージェント「HAKASE CARE(ハカセケア)」とは?
頼まれる前に自ら動く「AIエージェント(博士)」の機能
💡 用語解説:AIエージェントとは?
指示された作業を待って処理を実行する従来のソフトウェアとは異なり、状況を自ら判断し、能動的に提案や作業のサポートを行う人工知能システムのことです。
2026年10月1日、就労継続支援B型事業所を12年運営する株式会社エー・サポート(大阪市城東区)より、業務支援エージェント「HAKASE CARE(ハカセケア)」が発売されました。
本サービスでは、AIキャラクターである「博士」が日々の支援記録などのデータから注意すべき点を見つけ出し、能動的に支援を提案したり、期限を事前に通知したりします。通所系障害福祉サービスにおいて、日々の記録分析から会議議題の作成、朝のブリーフィングまでを1つのAIエージェントが先回りして行う仕組みは日本初※と発表されています。
※日本初:通所系の障害福祉サービス事業所向け業務支援ソフトのうち、日々の記録分析・支援提案・期限通知・議題作成・朝のブリーフィングを1つのAIエージェントが自ら行うものとして(2026年9月時点、同社調べ)。
HAKASE CAREが提供する主な機能
HAKASE CAREには、日々の業務を円滑に進めるための以下のような機能が備わっています。
- 支援の提案:日々の記録をAIが読み込み、気になる変化や留意点を抽出して支援方針を提案します。
- 期限のお知らせ:個別支援計画書などの更新期限が切れる前に、先回りして通知を行います。
- 議題づくりとブリーフィング:支援会議で必要な議題の準備や、毎朝その日にやるべき業務をまとめて共有します。
- 一元管理と制度追従:パソコンやLINEからの日々の記録、出席簿、利用者・スタッフ管理から国保連請求までを一元化し、法改正には制度エンジン「HAKASEルールブック」で対応します。
9年の構想と挫折を超えて生まれた開発ストーリー
750万円の投資断念から「生きた記録」への再挑戦
株式会社エー・サポートでは、10年前に業務効率化を目指してクラウドツールを導入し、紙の記録をデジタル化しました。しかし、キーボード入力に置き換わったのみで作業負担の根本的な解消には至りませんでした。
その後、外部のシステム会社へ750万円を投じて開発を試みたものの、福祉現場の実情や思いとシステム開発側の視点が噛み合わず、開発を断念せざるを得ない挫折を経験しました。
しかし、「蓄積される支援記録を現場で活かせる『生きた記録』に変えたい」「支援員がパソコンに向かう時間を、利用者さんと向き合う時間に変えたい」という代表の安江伸二郎氏の思いから模索が続けられ、近年の生成AIの台頭によって実現に至ったと説明されています。
利用者さんとともに作る「3F」解消と工賃向上の仕組み
💡 用語解説:3F(サンエフ)とは?
現場で働く職員や利用者が日々感じている「不安・不満・不便」の課題を指す言葉です。
HAKASE CAREの開発には、同社の就労継続支援B型事業所に通う利用者自身が開発スタッフとして参加しています。
福祉現場の「3F(不安・不満・不便)」を当事者である利用者とともにシステム開発によって解決し、その自社製品の販売から得られる収入を開発に携わった利用者の工賃へ還元するエコシステムが構築されています。同社ではこれまでにも、有機JAS生産工程管理システム「格さん」などのツールを利用者とともに開発・運用してきた実績があるとされています。
「HAKASE CARE」の導入方法・料金と今後の展望
利用料金と無料体験期間
HAKASE CAREの導入費用および利用条件は以下の通り公表されています。
- 製品名:業務支援エージェント「HAKASE CARE(ハカセケア)」
- 対象:就労継続支援B型事業所
- 利用料金:1事業所番号あたり月額26,800円(税別 / 税込29,480円)
※年契約の場合は294,800円(税込) - 初期費用:0円
- 無料お試し:最大1ヶ月半の無料体験期間あり(申込日から当月末まで。16日以降の申込は翌月末まで)
- 製品サイト:https://hakasecare.jp
今後の展開と対象サービスの拡大
同社では、人手不足に悩む福祉現場への業務支援エージェントの普及と、身の回りの「3F」解決を通じた工賃向上を目指しています。
今後は、2026年11月1日に「放課後等デイサービス向け」の提供開始が予定されているほか、対応する障害福祉サービスの領域を順次広げていく方針が示されています。
Q&A

Q1. AIエージェントを導入すると、現場の作業はどのように変わりますか?
A. 従来の業務ソフトのように「人間が毎回検索・入力して確認する」手間が減り、AIが期限や支援のポイントを先回りして提示してくれるようになります。これにより事務作業に費やす時間が短縮され、利用者のケアや対話により多くの時間を割くことが期待されています。
Q2. 利用者さんがシステム開発に参加するメリットは何ですか?
A. 現場の困りごとを最もよく知る当事者の視点が製品に反映されるだけでなく、開発業務という実践的な仕事を通じてスキルを習得する機会となります。さらに、製品の売上が工賃として利用者に還元されるため、やりがいと経済的なメリットの両面につながるとされています。
Q3. 制度改定などが起きた場合、システムは継続して使えますか?
A. 障害福祉分野では定期的に報酬改定や制度変更が行われますが、HAKASE CAREでは専用の制度エンジン「HAKASEルールブック」を備えており、制度改正にも追従してアップデートが行われる仕組みとなっています。
まとめ:AIと人の協働が拓く障害福祉の新しい可能性

障害福祉の現場におけるデジタル化は、単なる作業の省力化にとどまらず、支援の質向上や利用者のウェルビーイングに直結する重要な取り組みとなっています。
株式会社エー・サポートが提供を開始した「HAKASE CARE(ハカセケア)」は、現場の切実な声と試行錯誤から生まれたAI業務支援エージェントであり、支援員の事務負担軽減と利用者の工賃向上を同時に目指す新しいアプローチとして注目されています。
AIがルーティンワークや管理業務をバックアップし、支援員が人間にしかできない丁寧な関わりに注力できる環境づくりは、これからの障害福祉事業所におけるひとつの選択肢となりそうです。



