IPCパーソンズ会長が語る東京のレガシー:将来の開催都市への模範
視察後、パーソンズ会長は、東京のレガシーについて次のように講評しました。「東京2020大会のレガシーは、将来の開催都市に対する模範です。それは、組織委員会と公的機関が持続的なインパクトを生み出すために目的意識を持って協力し合ったとき、何が可能になるのかを示しています。東京2020大会のレガシーは、パラリンピックが世界で最も変革力のあるスポーツイベントであるという私の信念をより一層強めてくれました。」
さらに会長は、「東京に戻り、多くの懐かしい顔ぶれに再会し、大会からの5年間でインクルーシブな社会(多様な人々が排除されることなく、共に参加し、活躍できる社会のこと)の実現に向けて素晴らしい進展が見られたことを目の当たりにできたのは、非常に特別なことでした。東京は、大会を開催した当時よりも、今日さらにインクルーシブな都市となっています。その功績は、小池知事、東京都、そしてこの進展を導いた多くの組織や個人の先見の明と尽力に帰するものです。」と述べ、東京の取り組みを高く評価しました。
東京の日常に息づくパラリンピックのレガシー:6つの視察現場から見る変化
今回のレガシーツアーでは、「大会のために整備したものが、その後、東京の日常でどのように生かされているか」という視点から、5つの現場の視察とパラ応援大使との意見交換が行われました。
有明アリーナ:パラスポーツ体験の場としての活用とバリアフリー設備
有明アリーナでは、機能分散トイレ(複数の機能(オストメイト対応、ユニバーサルシート、多目的スペースなど)を分散配置し、多様なニーズに対応できるようにしたトイレ)やカームダウンスペース(刺激の多い環境でストレスを感じた人が、静かで落ち着ける場所でクールダウンできるよう設けられた空間)など、障害当事者の声が反映されたバリアフリー設備が視察されました。また、企業や地元スポーツクラブによる子供向け車いすバスケットボール体験教室が継続して実施されており、大会会場が地域のパラスポーツ体験の場として活用されている様子も確認されました。
ボランティア文化の継承:「ボ学」で育む支え合いの心
日本財団ボランティアセンターが実施する特別授業「ボ学」では、東京2020大会などで活動したボランティア経験者の話や、視覚障害者の誘導、聴覚障害者とのコミュニケーションを学ぶ体験が提供されています。これにより、障害への理解とともに、支え合いの文化が子供たちへと受け継がれています。
誰もが芸術文化を楽しめる環境へ:江戸東京博物館の取り組み
江戸東京博物館では、文字支援、手話スタッフなどのコミュニケーションサポートや、点字フロアマップ、触察模型などの鑑賞サポートツールが視察されました。障害の有無や国籍などに関わらず、誰もが芸術文化を楽しめる鑑賞環境の整備が進んでいます。
パラ応援大使と語る:東京2020レガシーの未来と展望
パラ応援大使との意見交換では、パラスポーツ振興やユニバーサルデザイン(障害の有無や年齢、性別、国籍などに関わらず、すべての人が利用しやすいように製品や環境を設計する考え方)のまちづくりなど、大会を契機に進んだ取り組みと今後の展望が共有されました。パラスポーツへの関心の広がりや大会会場の有効活用に加え、駅や道路などの街、情報や心、芸術文化面でのバリアフリーの浸透など、様々な分野でレガシーが着実に受け継がれ発展していることが確認されました。また、雇用を含め、より障害者が活躍できる社会を作っていくことの重要性も議論されました。
インクルーシブな交流とテクノロジーの可能性:都立光明学園の事例
都立光明学園では、近隣住民や障害のある子供たちが参加するパラスポーツ・レクリエーション体験、eスポーツエキシビジョンマッチ、分身ロボット(遠隔操作で、その場にいない人がロボットを介してコミュニケーションや体験を共有できるロボット)を活用した遠隔参加によるスポーツ体験が視察されました。これにより、インクルーシブな交流の場が地域に定着するとともに、テクノロジーの活用により、重度障害者を含め誰もがスポーツに参加できる可能性が広がっています。
移動を支える情報バリアフリー:鉄道駅の最新技術
都営地下鉄日比谷駅および東京メトロ有楽町駅では、音声を文字化・多言語化する「翻訳対応透明ディスプレイ」や、聴覚に障害のある人や外国語話者向けに公共交通機関のアナウンス内容を視覚的に表示する「みえるアナウンス」が視察されました。これらの取り組みは、パラリンピックのレガシーを継承し、デフリンピック(聴覚障害者のための国際総合スポーツ競技大会のこと)を契機に進展したもので、誰もが利用しやすい交通環境づくりが進んでいます。
数字と都民の声が示すパラリンピックレガシーの広がり
東京2020パラリンピック大会後も、街のバリアフリー化やパラスポーツを支える活動は広がりを見せています。具体的な数値として、都内鉄道駅のエレベーター設置率は2024年度末までに98.0%に達し、都営地下鉄のホームドア整備率は100%を達成しています。また、パラスポーツボランティア登録者は2026年7月時点で約1万人に上り、「TEAM BEYOND」(パラスポーツの応援プロジェクト)の登録企業等も約1,800社に及んでいます。

東京都では、東京2020パラリンピック後の5年間で感じたバリアフリーやパラスポーツの広がり、身近な変化について都民からメッセージを募集しました。1,400件を超えるメッセージからは、都民の日常生活にパラリンピックのレガシーが着実に根付いていることがうかがえます。その一部を紹介します。
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街の変化:「大会のあと、駅で車いすの方を見かけた時、スロープやエレベーターの位置、通路の幅に自然と目が向くようになりました。誰かが使いやすい街は、誰にとってもやさしい街なんだと気づいた瞬間でした。東京2020パラリンピックが私に残してくれたのは、一瞬の感動ではなく、日常の景色の見え方を変える力だったのだと思います!」
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意識の変化:「パラリンピック以降、大人から子供まで障害を理解しようとする空気が広がり、社会全体が優しくなったと感じています。この変化は、私自身の行動も変えました。街で困っている人を見かけた時、以前より自然に、ためらわずに声をかけられるようになったのです。一人ひとりの小さな歩み寄りが、社会を変えていく。当時もらった勇気は、今、思いやりの行動という花になっています。この前向きな連鎖を、ずっと繋いでいきたいです。」
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パラスポーツへの関わりの変化:「5年前、画面越しに受け取った勇気。それは今、ボッチャという形で私の日常に息づいています。職場のイベントで体験し、年齢も障害も関係なく純粋に戦略を競い合う面白さに熱狂しました。その日を境に、同僚との間から『見えない壁』が消えたのを感じています。違いを楽しみ、共に熱くなれる経験が私の前向きな力。このインクルーシブな輪を、これからも自分の行動でより大きな花として咲かせていきます。」
これらのメッセージは、大会が人々の意識や行動、そして街のあり方に深く影響を与えていることを示しています。都民からのメッセージの詳細は、以下のウェブサイトで確認できます。
https://www.sports-tokyo-info.metro.tokyo.lg.jp/5yearsanniversary/para5jigyou/message/list.html
「残すもの」から「育てるもの」へ:共生社会実現に向けた今後の展望
東京2020大会を契機に進んだ取り組みは、競技会場の施設整備にとどまらず、地域でのパラスポーツ体験、ボランティア活動、当事者が参画した取り組み、文化芸術の鑑賞支援、情報アクセシビリティなど、都民の日常に深く接続する形で展開されています。レガシーは単に「残すもの」ではなく、「育てるもの」へとその意味合いを深めています。
東京都は、今回の5周年を一つの節目として、多様な主体と連携しながら、障害の有無にかかわらず誰もが暮らしやすい共生社会の実現に向けた取り組みをさらに推進していく方針です。この継続的な努力が、東京をよりインクルーシブで、誰もが活躍できる都市へと進化させていくことでしょう。

関連資料
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パラ応援大使とIPC会長が語る東京2020レガシーの未来(8/29意見交換会資料)
https://sports-tokyo-info.metro.tokyo.lg.jp/seisaku/cross-effort/2020/assets.parabari/20260829.pdf -
東京2020パラリンピック競技大会5周年記念事業
https://www.sports-tokyo-info.metro.tokyo.lg.jp/5yearsanniversary/para5jigyou/

