この記事で分かること

  • 発達障害のあるお子さまが飛行機(特に国際線)利用時に抱える心理的・環境的ハードル
  • 日本航空(JAL)が本邦初開催する「国際線 空の旅体験会」の開催概要・対象者・募集要項
  • 空港・税関・出入国在留管理局・検疫所・教育支援機関が連携する「官民一体」のサポート体制
  • 国際線搭乗における手続きの流れと事前準備の具体例(図解・ステップ解説)
  • ご家庭で活用・支援できる関連サービスやチャリティ制度の比較

発達障害のあるお子さまを持つご家族の飛行機利用に関する不安と課題

発達障害(自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、学習障害など)のあるお子さまを持つご家族にとって、航空機を利用した移動や旅行には多くの心理的・物理的ハードルが存在します。特に国際線の利用においては、国内線以上に複雑な手続きや慣れない環境が伴うため、移動を諦めてしまうケースも少なくありません。

本記事では、障害福祉分野および旅行・移動支援の視点から、発達障害のあるお子さまの空の旅をサポートする最新の取り組みとして、日本航空株式会社(JAL)が実施する「国際線 空の旅体験会」の全容と、事前の準備方法について解説します。


発達障害のある子どもが飛行機利用で直面する主なハードル

発達障害のあるお子さまやそのご家族が空港や航空機内で感じる不安要素には、感覚過敏や環境の変化に対する適応の難しさが大きく影響しています。

音・人混み・待ち時間など空港特有の環境要因

空港のターミナルビル内は、大勢の移動客による混雑、アナウンスや機械音などの大きな刺激、見通しの立ちにくい待ち時間など、刺激に過敏なお子さまにとって負担となりやすい要素が集積しています。予期せぬスケジュールの変更や長時間の行列は、パニックや強いストレスを引き起こす要因となり得ます。

保安検査・出入国審査・検疫など複雑な手続きの心理的負担

国際線の利用時には、国内線で実施される保安検査に加え、出国審査・入国審査・税関検査・動物や植物の検疫といった専門的な手続きが必要となります 。見知らぬ係員によるボディチェックや手荷物検査、専用の検査装置の通過などは、お子さまにとって強い威圧感や恐怖感を与える場合があります。

用語解説:保安検査・出入国審査・検疫とは?

  • 保安検査: 航空機内に危険物が持ち込まれないよう、X線検査装置や金属探知器を用いて手荷物や身体を検査する手続きです。
  • 出入国審査: パスポートを確認し、国境を越えて出入国する許可を判定する行政手続きです。
  • 検疫: 海外からの病原体や害虫の侵入を防ぐため、動植物や持ち込み品を検査する手続きです。

JAL「国際線 空の旅体験会」の概要と特徴

日本航空(JAL)は、こうした心理的ハードルを軽減し、海外への旅立ちを支援する目的で、本邦初となる国際線搭乗を想定した事前体験プログラムを企画しました。

本邦初となる国際線搭乗体験プログラムの全体像

JALグループでは2022年より、空港や機内での過ごし方を事前に体験できる取り組みを国内線を中心に実施してきました 。参加者からの「国際線にも挑戦したい」という要望を受け、羽田空港第3旅客ターミナルを舞台とした国際線体験会が実現しました。本邦の主要航空会社14社を対象とした比較において、国際線搭乗を想定した体験会の開催は本邦初の試みとなります。

官民連携による手厚いサポート体制

今回の体験会は、民間航空会社単独の取り組みにとどまらず、空港管理会社や国の行政機関、専門企業が一体となって協力する点に大きな特徴があります。

  • 協力・参加機関一覧:
    • 東京国際空港ターミナル株式会社
    • 東京税関羽田税関支署
    • 東京出入国在留管理局羽田空港支局
    • 動物検疫所羽田空港支所
    • 横浜植物防疫所羽田空港支所
    • 株式会社ジェイ・エス・エス(航空保安検査・セキュリティ事業者)
    • 株式会社Grow-S(発達障害児向け学習塾「さくらんぼ教室」等の運営企業)

用語解説:官民連携とは? 国や地方自治体などの「官(行政機関)」と、民間企業やNPOなどの「民」が互いの強みを活かして協力し、社会課題の解決に取り組む仕組みです。本プログラムでは、税関や入国管理局といった国の機関とJALや発達障害支援の専門企業が協力しています。

開催要項・募集条件のまとめ

プレスリリースに掲載されている「国際線 空の旅体験会」の基本情報は以下の通りです。

項目詳細内容
開催日時2026年12月6日(日)
実施場所羽田空港第3旅客ターミナル
対象者中高生とその保護者
募集人数10組20名
参加費用無料
応募方法Webサイト内「子どもの夢応援マイル2026(はじめての空を応援する)」より応募
開催目的障害者週間(12月3日~9日)に合わせた、国際線搭乗の手続き体験および心理的ハードルの軽減

国際線搭乗手続きの流れと事前に体験できる4ステップ

体験会では、実際の国際線利用時と同じ流れを模擬体験することで、見通しを持った行動を促します。

[ステップ1] 搭乗手続き(チェックイン)・手荷物預け入れ
      ↓
[ステップ2] 保安検査(手荷物検査・身体検査の体験)
      ↓
[ステップ3] 各種検疫(動植物)・税関手続き・出国審査
      ↓
[ステップ4] 入国審査体験・搭乗口への移動体験

ステップ1:搭乗手続き(チェックイン)と荷物預け入れ

カウンターでのパスポート提示や搭乗券の発行、手荷物を預ける一連の作業を確認します。

ステップ2:保安検査(手荷物検査・身体検査)

金属探知ゲートの通過や、専門会社(JSS等)の係員によるボディチェックの雰囲気を体験し、光や音、身体への接触に対する不安を和らげます。

ステップ3:出国審査・検疫・税関手続き

パスポートの確認手続きや、動植物検疫、税関での申告手続きなど、国際線特有の窓口でのやり取りを体験します。

ステップ4:入国審査体験と搭乗イメージの形成

現地到着後に行われる入国審査の流れを体験し、出発から到着までの全体像を把握することで、旅行当日の予測可能性を高めます。


発達障害のあるお子さまとの飛行機利用に向けた事前準備ポイント

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体験会への参加に加えて、日常やご家庭で実践できる事前準備の工夫が推奨されています。

1. スモールステップと視覚的支援(ソーシャルストーリー)の活用

文字や写真、イラストを用いた手順書(スケジュール表や絵カード)を作成し、「次に何が起きるか」を視覚的に理解できるよう準備することが有効とされています。手順を細分化して1つずつ確認する「スモールステップ」の考え方が適しています。

専門家メモ:予測可能性を高めるアプローチ 発達障害のあるお子さまは、「見通しが立たない状況」に対して強い不安を感じる傾向があります。事前に空港の写真を見せる、搭乗までの手順を動画で確認するなどの工夫により、環境変化へのストレスを軽減できます。

2. 音や光への刺激対策グッズの準備

イヤーマフやノイズキャンセリングヘッドホン、サングラス、普段使い慣れているタオルや静音おもちゃなど、お子さまが落ち着けるアイテム(センソリーグッズ)を持参することが推奨されます。

3. 専門機関やサポートサービスの事前確認

発達障害に特化した教育機関(さくらんぼ教室等)や、各航空会社が提供するスペシャルアシスタンス窓口(お手伝いを希望されるお客様向けサービス)へ事前に相談し、サポート内容を把握しておくことが推奨されます。


関連サービス・支援制度の比較表

発達障害のあるお子さまの移動支援や事前体験に関連するサービス・制度の比較です “。

サービス・制度名提供主体 / 運営組織特徴・支援内容対象・利用形態
JAL 国際線 空の旅体験会日本航空(官民連携)国際線ターミナルでの一連の手続き(保安検査・審査・検疫)の模擬体験中高生と保護者(無料・抽選制)
さくらんぼ教室(Grow-S)株式会社Grow-S発達障害児向け学習支援、社会性・生活習慣の指導、指導ノウハウの提供幼児〜高校生・若者
JAL チャリティマイル日本航空 / JMB会員マイレージ寄付を通じた体験会開催および子どもたちの挑戦への資金支援JALマイレージバンク会員

よくある質問(Q&A)

Q1. 体験会は小学生や成人でも参加できますか?

A. 今回開催される2026年12月6日の「国際線 空の旅体験会」は、中高生とその保護者が対象として設定されています 。過去には年齢設定の異なる体験会も実施されているため、最新の募集要項を確認することが推奨されます。

Q2. 参加費や必要な費用はありますか?

A. 体験会自体の参加費用は無料です 。会場(羽田空港第3旅客ターミナル)までの交通費等は自己負担となります。

Q3. 今後も継続して開催されますか?

A. JALグループでは2022年以降、事前体験プロジェクトを継続的に実施しており、今後も多様なニーズに寄り添った環境づくりを展開する方針が示されています 。また、チャリティマイルを通じた支援募集により、取り組みの継続・発展を目指しています。


まとめ

日本航空(JAL)による本邦初の「国際線 空の旅体験会」は、発達障害のあるお子さまやご家族が抱える心理的ハードルを解きほぐし、海外旅行という新たな一歩を後押しする先進的な取り組みです 。官民一体となった手厚いサポート体制や、教育支援企業の参画により、安心感のある体験環境が整えられています。

事前体験プログラムの活用やご家庭での丁寧な準備を通じて、誰もが安心して空の旅を楽しめる機会が広まることが期待されます。


(注:掲載情報は2026年10月時点の公式プレスリリースに基づきます。プログラム応募や最新情報についてはJAL公式サイト等をご確認ください。)


Written by

菅間 大樹

findgood編集長、株式会社Mind One代表取締役
雑誌制作会社、広告代理店、障害者専門人材サービス会社を経て独立。
ライター・編集者としての活動と並行し、就労移行支援事業所の立ち上げに関わり、管理者も務める。職場適応援助者(ジョブコーチ)養成研修修了。
著書に「経営者・人事担当者のための障害者雇用をはじめる前に読む本」(Amazon Kindle「人事・労務管理」「社会学」部門1位獲得)がある。
https://www.amazon.co.jp/dp/B0773TRZ77