知的障がい者の「内なる感情」を解き放つ展覧会「今治福祉園をはみ出す」

53名のアーティストがギャラリーの壁に描く、予測不能な表現空間

今治福祉園で生活する53名の利用者の皆さまは、それぞれの個性や感情を持ちながら日々を過ごしています。しかし、集団生活の中では、心の内にある葛藤や怒り、喜び、こだわりなどを十分に表現する機会は多くありません。今回の展覧会は、そうした感情をギャラリーの白い壁いっぱいに解き放つ場として企画されました。

何を描くのか、どんな色を使うのか、どのような空間になるのかは、まだ誰にもわかりません。障がい者アートという既存の枠組みを超え、一人ひとりが抱える喜びや葛藤、こだわりやエネルギーが空間全体にあふれる、予測不能な展覧会となるでしょう。

アート活動の様子

創作過程そのものがアート。感情が空間いっぱいに広がる見どころ

本展覧会の大きな見どころは、完成された「作品」を展示するのではなく、利用者の皆さまがギャラリーの壁面に自由に表現した「過程と結果」をありのまま展示する点です。怒りや喜び、戸惑い、好奇心といった日常では表に出し切れない感情が、空間全体にダイナミックに広がります。

今治福祉園には32歳から79歳までの53名が暮らしており、中には開所当初から30年以上にわたって生活している方もいます。一人ひとり異なる価値観やこだわりを持つ彼らの個性が重なり合い、誰にも予想できない巨大な表現空間が生まれることは、この展覧会ならではの魅力と言えるでしょう。

アートワークショップの様子

来場者も参加できる「自由工作コーナー」で共感を深める

展覧会では、来場者も積極的に参加できる「おすそわけHUB」による自由工作スペースが設置されます。作品を鑑賞するだけでなく、来場者自身も自由に表現を楽しむことができ、障がいのある方々の表現活動への理解や共感を深める機会となることでしょう。

地域社会とつながる「だんだんBASEギャラリー」の取り組み

障がいのある方の表現を「暮らしの中の自然な表現」として捉える

社会福祉法人来島会が運営する「だんだんBASEギャラリー」は、アートや創作活動を通じて地域とつながる場として2025年春にオープンしました。これまでも施設利用者の創作活動に焦点を当てた「ギャラリーシリーズ」を4回開催し、絵画や立体作品、言葉や色彩による表現など、日々の暮らしの中から生まれる多様な創作を地域にひらいてきました。

このシリーズでは、創作を特別なものではなく、一人ひとりの暮らしの中から生まれる自然な表現として捉え、その価値を地域社会と共有することを目指しています。今年度は対象を地域で暮らす障がいのある方々へと広げ、より多様な表現に光を当てる展覧会を年間4回開催予定です。創作をきっかけに人と人が出会い、互いの違いを認め合える地域づくりが期待されます。

今治福祉園が目指す、地域にひらかれた共生社会

今治福祉園は1994年に開所した障害者支援施設で、現在53名の利用者が暮らしています。施設は地域社会から見えにくい場所でもあり、利用者の皆さまがどんなことを感じ、どんな世界を見ているのかを知る機会は多くありませんでした。しかし、スタッフは日々の支援を通して、一人ひとりの行動やこだわりのなかに豊かな感情や表現が存在していることを知っています。

本展は、その内側にある世界を地域へひらく試みであり、障がいのある人たちの表現を「作品づくり」だけで捉えず、日々の暮らしの中で見せる仕草やこだわり、感情の動きそのものが豊かな表現であると考えています。この展覧会を通じて、障がいのある人とない人を分けるのではなく、「面白い」「なんだろう」と感じる体験を共有することから、地域のつながりが生まれることを願っています。

開催概要

  • 展示期間:6月27日(土)~29日(月)、7月4日(土)~6日(月) 10時~15時

  • 場所:だんだんBASEギャラリー(今治市高市甲161-3)

  • 主催:社会福祉法人来島会

  • 関連リンク

まとめ

展覧会「今治福祉園をはみ出す」は、知的障がいのある方々の豊かな感情や個性を社会にひらく、重要な機会となるでしょう。予測不能な表現空間と、来場者が参加できる自由工作コーナーは、障がい福祉に関心のある方々だけでなく、多くの方にとって新たな発見と共感をもたらすはずです。この展覧会が、地域における多様性を認め合う共生社会の実現に向けた、大きな一歩となることを期待します。ぜひ会場に足を運び、53名のアーティストたちが壁いっぱいに表現する「私たちの気持ち」に触れてみてください。


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findgood

Written by

菅間 大樹

findgood編集長、株式会社Mind One代表取締役
雑誌制作会社、広告代理店、障害者専門人材サービス会社を経て独立。
ライター・編集者としての活動と並行し、就労移行支援事業所の立ち上げに関わり、管理者も務める。職場適応援助者(ジョブコーチ)養成研修修了。
著書に「経営者・人事担当者のための障害者雇用をはじめる前に読む本」(Amazon Kindle「人事・労務管理」「社会学」部門1位獲得)がある。
https://www.amazon.co.jp/dp/B0773TRZ77