この記事で分かること

  • 社会的養護施設が抱える人材不足の現状と課題

  • 「チャボナビ」を通じた採用支援の具体的な成果

  • 採用拡大を牽引した4つの主要な取り組み

  • 社会的養護分野でのキャリア形成に役立つ情報

社会的養護施設では、虐待や経済的困難を抱える子どもたちのケアを担う重要な役割がありますが、慢性的な人材不足が課題となっています。NPO法人チャイボラが運営する社会的養護の人材確保支援サイト「チャボナビ」は、この課題に対し、施設と求職者をつなぐ架け橋となり、年間採用人数が前年度比158%増の586人に達する大きな成果を上げました。この記事では、「チャボナビ」がいかにしてこの成果を実現したのか、その具体的な取り組みと、社会的養護分野での仕事に関心を持つ方が知っておくべき情報について詳しく解説します。

社会的養護施設の人材不足と採用の現状

社会的養護施設は、さまざまな事情で家庭での生活が困難になった子どもたちを支える重要な場所です。児童養護施設などがこれにあたりますが、多くの場合、職員一人で複数の子どもたちをケアする状況が常態化しており、人材確保が喫緊の課題となっています。

施設の広報活動や採用活動には、子どもたちのプライバシー保護や予算の制約から困難が伴う傾向があります。その結果、施設の魅力や仕事内容が求職者に十分に伝わらず、見学や応募につながりにくいという課題がありました。

「チャボナビ」が実現した採用拡大の具体的な成果

このような状況の中、NPO法人チャイボラが運営する「チャボナビ」(https://chabonavi.jp/)は、社会的養護施設と求職者のマッチングを強化し、大きな成果を上げています。

2026年3月末時点のデータによると、「チャボナビ」を通じた年間の採用人数は586人に達し、前年度と比較して158%の増加を記録しました。また、同サイトを通じて人材を採用した施設は198施設となり、前年度比143.4%増となっています。

このデータは、登録施設551施設のうち83%にあたる458施設の回答に基づいています。

採用拡大を支えた4つの画期的な取り組み

「チャボナビ」の採用拡大は、以下の4つの取り組みによって実現されました。

チャボナビのウェブサイト

登録施設数の大幅な増加

過去1年間で「チャボナビ」の登録施設数は461施設から551施設へと増加しました。これは全国の社会的養護施設の約38%に相当し、児童養護施設に限れば昨年度50%超の掲載率を達成しています。登録施設の増加は、求職者が地域や施設種別、職種、勤務条件などから、多様な選択肢の中から自分に合った施設を探せる機会を広げました。

オンラインイベントによる認知度拡大

毎年5月に開催される大規模オンライン見学フェアは、施設側・求職者双方の参加者数を着実に伸ばしています。2026年には全国46都道府県から739人の求職者、全国27都道府県から129施設が参加するまでに成長しました。これらのイベントを通じて、社会的養護施設の仕事の魅力が広く伝わり、潜在的な候補者層へのリーチが拡大しました。

オンライン会議の様子

学校・学生向けアプローチの強化

社会福祉士を目指す学生向けの就職・実習ガイドを新たに制作し、既存の保育士志望学生向けガイドと合わせて提供を開始しました。これにより、社会的養護分野のキャリアについて知る機会が少ない学生に対し、具体的な情報を提供し、早い段階からの検討を促しています。

社会福祉士・精神保健福祉士の資格が活かせる児童養護施設のシゴト 社会的養護実習・就職ガイド

資格別勉強会を通じた幅広い求職者層へのアプローチ

「保育士」「社会福祉士」「心理」といった資格を持つ職員が登壇し、現場での専門性の活かし方を伝える資格別勉強会が継続的に実施され、昨年比203%増の177名の求職者が参加しました。

また、今年度は初めて「無資格」の方向けの勉強会も開催。無資格で入職した職員や異業種からの転職者、50代で入職した職員が登壇し、実際の経験談を共有することで、これまでこの分野を検討していなかった層にも、新たなキャリアの選択肢を提示しました。資格がなくても応募できる求人や、入職後に実務経験を積むことで児童指導員の任用資格要件を満たせるケースが紹介されています。

無資格で活躍する現場職員が語る児童福祉のお仕事オンラインイベント告知

さらなる人材確保・定着に向けた今後の展望

「チャボナビ」の成功を受け、NPO法人チャイボラは今後の支援をさらに強化する計画です。

今年度からは、人材確保・定着に課題を抱える施設に対し、アセスメントから個別の支援計画立案、実務型伴走支援までを行う「コンサルテーション事業」を開始しました。複数の自治体と連携し、年間を通じて各施設の課題解決を支援していくとのことです。

また、「チャボナビ」事業では大規模な改修を予定しており、求職者と施設双方の利便性向上が目指されます。

これらの取り組みを通じて、社会的養護施設における人材不足の解消と、子どもたちが大切に育てられる社会の実現に貢献していくことでしょう。

NPO法人チャイボラとは?

NPO法人チャイボラは、児童養護施設を含む社会的養護施設の職員確保と定着を支援する国内唯一の団体です。こども家庭庁の「令和7年度社会的養護魅力発信等事業」にも採択されており、全国の社会的養護施設の3分の1以上をサポートしています。

主な活動には、「チャボナビ」の運営、施設見学会の企画運営、大学・短大・専門学校への出張授業、施設職員の定着を目的とした研修運営などがあります。オンライン見学フェアやメタバース上での交流イベントなど、業界の先駆的な取り組みも積極的に行っています。

NPO法人チャイボラのロゴマーク

読者の疑問を解決!Q&A

Q1: 社会的養護施設で働くには、どのような資格が必要ですか?

A1: 保育士、社会福祉士、心理士などの資格が一般的に求められます。しかし、「チャボナビ」の勉強会で紹介されたように、無資格から入職し、実務経験を積むことで児童指導員の任用資格要件を満たすキャリアパスもあります。資格の有無に関わらず、関心がある方は情報収集から始めることをお勧めします。

Q2: 未経験から社会的養護施設で働くことは可能ですか?

A2: はい、可能です。特に「チャボナビ」では、異業種からの転職者や子育て経験を活かしたい方、50代で入職した方など、多様なバックグラウンドを持つ職員の事例が紹介されています。研修制度やサポート体制が整っている施設も多く、未経験からでも安心して働き始められる環境が増えています。

Q3: 「チャボナビ」はどのような情報を提供していますか?

A3: 「チャボナビ」では、全国の社会的養護施設の求人情報、施設の種類や仕事内容の解説、オンライン見学フェアや資格別勉強会などのイベント情報、社会福祉士や保育士を目指す学生向けの就職・実習ガイドなどが提供されています。施設を探すだけでなく、社会的養護分野への理解を深めるための総合的な情報源として活用できます。

まとめ

社会的養護施設の人材不足は、子どもたちの未来に直結する重要な社会課題です。NPO法人チャイボラが運営する「チャボナビ」は、革新的なアプローチと継続的な努力により、この課題に具体的な解決策をもたらし、年間586人もの採用を実現しました。

登録施設数の増加、オンラインイベントでの認知度向上、学生向けアプローチの強化、そして資格別勉強会を通じた多様な層への働きかけは、社会的養護分野における採用活動の新たな可能性を示しています。

今後も「コンサルテーション事業」や「チャボナビ」の大規模改修を通じて、より多くの子どもたちが安心して成長できる社会の実現に貢献していくことでしょう。

Written by

菅間 大樹

findgood編集長、株式会社Mind One代表取締役
雑誌制作会社、広告代理店、障害者専門人材サービス会社を経て独立。
ライター・編集者としての活動と並行し、就労移行支援事業所の立ち上げに関わり、管理者も務める。職場適応援助者(ジョブコーチ)養成研修修了。
著書に「経営者・人事担当者のための障害者雇用をはじめる前に読む本」(Amazon Kindle「人事・労務管理」「社会学」部門1位獲得)がある。
https://www.amazon.co.jp/dp/B0773TRZ77