第14回山田風太郎賞受賞作『藍色時刻の君たちは』文庫化!ヤングケアラーと震災後の「解放」と「再生」を描く感動の物語

家族の介護や家事に忙殺される高校生たちの姿、そして東日本大震災によって一変する日常。第14回山田風太郎賞を受賞した前川ほまれ氏の小説『藍色時刻の君たちは』が、2026年7月30日に創元文芸文庫より刊行されました。読書メーター「読みたい本ランキング」でも単行本月間第1位(2023年5月19日~6月18日)を獲得した本作は、ヤングケアラーや震災被災者というテーマを通して、読者に深い共感と希望を届けています。

文庫本カバー「藍色時刻の君たちは」

家族を支える高校生たちの日常と、震災がもたらした変化:ヤングケアラーの視点から

物語の舞台は宮城県の港町。高校2年生の小羽(こはね)、航平、凜子の3人は、それぞれが家族の介護や家事に忙殺され、鬱屈を抱える日々を送っていました。彼らは、本来大人が担うと想定されている家事や家族の世話などを日常的に行っている子どもたち、いわゆる「ヤングケアラー」です。

専門用語解説:ヤングケアラー
家族に病気や障害がある、または高齢の家族がいるなどの理由で、本来大人が担うようなケアや家事を日常的に行っている18歳未満の子どもを指します。学業や友人関係、自身の心身の健康に影響が出やすいことが社会的な課題となっています。

そんな3人が、町にやって来た女性・青葉の理解と支援によって前向きな気持ちを取り戻し始めた矢先、2011年3月の東日本大震災により、彼らの生活は全て一変してしまいます。震災時の後悔と傷を抱えながら看護師になった小羽が、旧友たちと再会する2022年7月。これを機に、過去や青葉の秘密と向き合うことになります。

「解放」と「再生」の物語として評価された理由とは?山田風太郎賞選考委員の言葉

『藍色時刻の君たちは』は、2023年に第14回山田風太郎賞を受賞しました。東北出身者としては初の受賞作であり、選考委員からはその物語が持つ力強いメッセージが高く評価されています。

東北出身者初!山田風太郎賞受賞の告知画像

選考委員の夢枕獏氏は「思わず落涙。重いテーマの本だがこの道は希望へと続いている。安心して読まれたし」と推薦。また、朝井まかて氏は「『解放』と『再生』の物語。“かく生きた、生きている”瞬間に何度も胸が震えた」とコメントを寄せています。これらの言葉は、ヤングケアラーや震災被災者という困難な状況を描きながらも、登場人物たちが希望を見出し、前向きに生きていく姿が、読者に深い感動と勇気を与えることを示唆しています。

現役看護師が描くリアルな視点:心の痛みと寄り添う「祈り」

著者の前川ほまれ氏は宮城県出身の現役看護師です。この背景が、作品に登場する心の痛みを抱えたヤングケアラーや震災の被災者たちに寄り添う、祈りに満ちた物語に説得力と深みを与えていると考えられます。

現役看護師が描いた感動小説の宣伝画像

文芸評論家の瀧井朝世氏による解説では、ヤングケアラーや震災被災者、あるいは疾患を持つ人々のそばにいる時に、どのような言葉をかけ、どう働きかけるのが良いのかという問いが投げかけられています。そして、「ただ、少なくとも、表面だけを見て『可哀想な人』『同情すべき人』と見なすことは短絡的だと、本書は感じさせてくれる」と述べています。苦しい状況にある人の人生にも晴れ間があり、また笑顔を見せたからといって立ち直ったと決めつけるべきではないという、人間の感情の複雑さと生活のリアリティが描かれている点が、作品の大きな魅力です。

『藍色時刻の君たちは』書誌情報と著者プロフィール

文庫化を機に、改めて前川ほまれ氏の『藍色時刻の君たちは』に注目が集まっています。

■書誌情報

  • 書名:藍色時刻の君たちは

  • 著者:前川ほまれ

  • 判型:文庫判

  • ページ数:540ページ

  • 初版:2026年7月31日

  • ISBN:978-4-488-80321-6

  • Cコード:C0193

  • 文庫コード:LA-ま-2-1

  • 装画:かない

  • 装幀:アルビレオ

■著者プロフィール

前川ほまれ(まえかわ・ほまれ)氏は1986年生まれ、宮城県出身の作家です。看護師として働くかたわら小説を書き始め、2017年『跡を消す 特殊清掃専門会社デッドモーニング』で第7回ポプラ社小説新人賞を受賞しデビュー。2020年『シークレット・ペイン 夜去医療刑務所・南病舎』が第22回大藪春彦賞の候補となり、そして2023年『藍色時刻の君たちは』で第14回山田風太郎賞を受賞しました。その他の著書に『セゾン・サンカンシオン』『臨床のスピカ』『在る。SOGI支援医のカルテ』などがあります。

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Written by

菅間 大樹

findgood編集長、株式会社Mind One代表取締役
雑誌制作会社、広告代理店、障害者専門人材サービス会社を経て独立。
ライター・編集者としての活動と並行し、就労移行支援事業所の立ち上げに関わり、管理者も務める。職場適応援助者(ジョブコーチ)養成研修修了。
著書に「経営者・人事担当者のための障害者雇用をはじめる前に読む本」(Amazon Kindle「人事・労務管理」「社会学」部門1位獲得)がある。
https://www.amazon.co.jp/dp/B0773TRZ77