旭川が推進する「Universal MaaS」とは?

移動に不安を感じ、旅行をためらう方は少なくありません。独立行政法人経済産業研究所の試算によると、こうした不便が解消された場合、全国のユニバーサルツーリズム市場の潜在規模は、実際の市場規模よりも約1.4倍大きい約4,200万人(2023年時点)に上るとされています。この市場規模は、高齢化を背景に2035年まで拡大し続けると予測されています。

旭川市では、このような背景を受け、2023年以降、全国に先駆けて「Universal MaaS(ユニバーサルMaaS)」の推進に取り組んできました。これは、移動介助の事前手配をオンラインでまとめて依頼できる「一括サポート手配」や、徒歩区間のバリアフリー情報をリアルタイムで案内する「ユニバーサル地図/ナビ」など、全国初のサービスを同時提供することで、旭川市内全域のアクセシビリティ環境を整備するものです。

近距離モビリティ「WHILL」で旭川観光がもっと身近に

今回のWHILL導入は、旭川に到着してからの実際の移動手段をさらに充実させることを目的としています。JR旭川駅に直結する旭川観光物産情報センターと、空港近くのカムイ大雪バリアフリーツアーセンターにWHILLが配備されることで、到着から目的地での散策まで、途切れることのないスムーズな移動体験が提供されます。

貸し出しモデルには、コンパクトに折りたたんで車載や持ち運びに便利な「WHILL Model F」と、ハンドル操作で歩道を走行する4輪スクーター「WHILL Model R」が採用されています。どちらのモデルも操作が簡単で、歩行者と同じペースで走行できるため、家族や同行者と一緒に、市中心部から少し距離のある場所へも気軽に足を延ばせるでしょう。また、レンタカーやタクシーに積載して、遠出した先でWHILLに乗って散策を楽しむことも可能です。

電動モビリティスクーターに乗って移動する高齢の男性

車のトランクに収納された折りたたみ式電動車椅子

「WHILL」移動サービスの利用方法と詳細

旭川市内で提供されるWHILL移動サービスの概要は以下の通りです。

  • 提供開始日: 2026年5月21日(木)

  • 貸出場所:

    1. 旭川観光物産情報センター(JR旭川駅東改札前)
    2. カムイ大雪BFTC
  • 常設モデル:

    1. 歩道の高性能スクーター「WHILL Model R」
    2. 折りたためるモビリティ「WHILL Model F」
  • 料金:

    1. 1時間1,000円(税込)※延長可能
    2. 1日4,000円(税込)
  • 利用方法:
    電話・FAX・WEBから事前予約が可能です。希望に応じて貸出場所や貸出モデルを柔軟に対応してもらえます。空きがあれば当日貸出も受け付けています。

  • 受付時間:

    1. 9:00~19:00
    2. 9:00~17:30
  • 利用条件:
    体重制限(Model Rは147kg以下、Model Fは115kg以下)、着座時にフットプレート(足おき)に足がつく、操作に必要な注意力などを備えていること。

詳細は、旭川観光コンベンション協会公式HP(https://x.gd/o6PJW)およびカムイ大雪BFTCの公式HP(https://npo.kamui-daisetsu.org/rental/)で確認できます。

WHILLとは?製品とモビリティサービスの特徴

WHILLは、免許不要で歩行領域を走行できる近距離モビリティです。提供されるモデルには、大きく分けて以下の2種類があります。

  • WHILL Model F: 軽量化を実現した折りたたみ可能なモデルで、持ち運びや車載に便利です。

  • WHILL Model R: 歩道を走行できる高性能な4輪スクーターで、自転車のような操作感と安定した走行性、高い小回り性能が特徴です。

WHILLのパーソナルモビリティデバイスを使用するシニア世代の人々

WHILL社は、これらの製品を法人向けに提供する「WHILLモビリティサービス」も展開しています。このサービスは、安心安全設計の近距離モビリティを施設内外に導入できるもので、保険、メンテナンス、機体管理システムがパッケージ化されており、導入する法人の負担を軽減し、柔軟な運用体制を整えることができます。利用者の滞在体験向上にも貢献するサービスです。

WHILLのモビリティサービスを紹介する広告画像

旭川観光コンベンション協会とカムイ大雪バリアフリー研究所の取り組み

今回のWHILL導入は、一般社団法人旭川観光コンベンション協会と特定非営利活動法人カムイ大雪バリアフリー研究所が、WHILL株式会社と協業して実現したものです。両団体は、旭川大雪圏の魅力をあらゆる人が存分に楽しめるアクセシビリティ環境の整備・拡充を引き続き推進しています。

  • 旭川観光物産情報センターは、JR旭川駅東コンコースに直結する観光案内施設で、旭川市や大雪山エリア、道北地域の魅力を発信する拠点です。観光パンフレットの配布、宿泊・交通案内、地元特産品や土産品の販売、手荷物預かりサービスなど、多岐にわたるサポートを提供しています。公式HP:https://www.atca.jp/

  • カムイ大雪バリアフリー研究所は、SDGsの目標達成を目指し、障害の有無、年齢、性別、国籍に関わらず誰もが暮らしやすい地域づくりに取り組んでいます。カムイ大雪バリアフリーツアーセンターの設立もその一環であり、国内外のバリアフリー推進活動に積極的に貢献しています。公式HP:https://npo.kamui-daisetsu.org

まとめ:誰もが旅行を楽しめる社会へ

旭川市における近距離モビリティ「WHILL」の導入は、ユニバーサルツーリズムを推進し、障害のある方や高齢者を含む誰もが、移動の不安なく観光を楽しめる社会の実現に向けた大きな一歩です。移動の自由が広がることは、人々のQOL(Quality of Life)向上にも繋がり、より豊かな生活体験をもたらすでしょう。旭川大雪圏が、今後も多様なニーズに応えるアクセシビリティ環境を整備し、すべての旅行者が心ゆくまで楽しめる場所であり続けることに期待が高まります。

Written by

菅間 大樹

findgood編集長、株式会社Mind One代表取締役
雑誌制作会社、広告代理店、障害者専門人材サービス会社を経て独立。
ライター・編集者としての活動と並行し、就労移行支援事業所の立ち上げに関わり、管理者も務める。職場適応援助者(ジョブコーチ)養成研修修了。
著書に「経営者・人事担当者のための障害者雇用をはじめる前に読む本」(Amazon Kindle「人事・労務管理」「社会学」部門1位獲得)がある。
https://www.amazon.co.jp/dp/B0773TRZ77