CULUMUと大日本印刷(DNP)の包摂的パッケージ開発の取り組みを解説。片麻痺・弱視・高齢者ら8名のリードユーザーとの共創リサーチで判明したデザインの盲点と、障害福祉の視点を取り入れたインクルーシブデザインの導入手順・成功ポイントをまとめました。
この記事で分かること
- CULUMUと大日本印刷(DNP)連携の全体像:包摂的なパッケージ開発に向けた共創プログラムの背景と最新動向
- リードユーザー調査から得られた4つの設計指針:片麻痺・弱視・高齢者とのリサーチで分かったパッケージデザインの盲点
- 障害福祉の重要概念「社会モデル」:初心者向けに例え話を用いて解説するインクルーシブデザインの基本知識
- 競合記事にはない独自分析と専門家視点:6,500以上のNPOネットワークを活用した当事者発想の強み
- 企業が包摂的開発を成功させる4ステップ:導入から試作・発信までの具体的フローとおすすめの相談導線
パッケージ開発でこんなお悩みはありませんか?
「誰もが使いやすいユニバーサルデザインの商品を作りたいが、何から手をつければいいか分からない」 「障害者や高齢者のリアルな困りごとを、どのようにパッケージ設計に反映すればよいのか?」 「DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)やSDGsに取り組みたいが、単なるポーズで終わらせたくない」
商品開発やマーケティング、CSR・DE&I推進を担当する多くの方が、このような壁に直面しています。従来のパッケージ設計は、「目で文字をしっかり読める」「両手を使って開けられる」「定められた力を入れられる」といった健常者の状態を無意識の前提(デフォルト)として作られてきました。しかし、身体機能や見え方、使用する環境は人それぞれ異なります。
本記事では、障害福祉分野の専門的視点とSEO分析に基づき、インクルーシブデザインスタジオ「CULUMU(クルム)」と「大日本印刷株式会社(DNP)」が推進する「包摂的なパッケージ開発」の先駆的事例を詳しく解説します。読者のみなさまの疑問や不安を解消し、次世代の「未来のあたりまえ」を作るヒントをお届けします。
CULUMUと大日本印刷(DNP)の連携概要と背景
DNPの「インクルーシブ商品開発プログラム」の目的
大日本印刷(DNP)は、多様な視点から「未来のあたりまえ」をデザインする取り組みの一環として、2016年よりパッケージにおけるインクルーシブデザインを推進しています。
従来のパッケージは、視力・筋力・両手の動作といった身体的機能を前提として設計されていましたが、実際の生活者の身体や使用環境との間には様々な「摩擦(ストレスや障壁)」が存在します。DNPはこれらの摩擦を解消し、多様な生活者が安心して使える「包摂的(インクルーシブ)なパッケージ」の標準化を目指しています。
インクルーシブデザインスタジオ「CULUMU(株式会社STYZ)」の強み
株式会社STYZが運営する「CULUMU(クルム)」は、企業課題と社会課題の同時解決を目指すインクルーシブデザインスタジオです。
CULUMUの最大の強みは、全国6,500以上のNPO等との深いネットワークを活かしたリサーチ基盤にあります。これまでアプローチが難しかった高齢者や障害者などの多様な当事者(リードユーザー)と企業を結びつけ、個人の深いインサイト(N=1)からイノベーションを創出するプロセスが高く評価され、2024年度グッドデザイン賞を受賞しています。
共創成果の公開:「TOKYO PACK 2026」での試作発表
今回のCULUMUとDNPの連携によって開発された試作品は、2026年10月14日(水)〜16日(金)に開催される国際包装展「TOKYO PACK 2026」にて展示・公開されます。DNPはこの展示をスタート地点とし、メーカー各社へ包摂的なパッケージ開発支援を展開していく計画です。
リードユーザー8名との共創リサーチから見えた「包摂的パッケージ」4つの視点
DNPとCULUMUは、片麻痺(かたまひ)のある方、弱視(じゃくし)の方、高齢者計8名のリードユーザーを対象に、日記法調査・対面インタビュー・ワークショップによるパッケージ評価を実施しました。
当事者が商品を見つける段階から、開封・使用・分別廃棄に至る一連のカスタマージャーニーを観察・分析した結果、従来のパッケージ設計の前提を問い直す「4つの視点」が導き出されました。
【視点1】「読んでもらう」前に「見つけてもらう」デザイン設計
視覚障害や弱視のある生活者は、パッケージに書かれた細かな文字を読む前に、商品の色合いや質感(触覚)、過去の購買体験を手がかりにして商品を特定しています。
単に文字を大きくするだけでなく、一目で識別できるカラーコントラストや手触りの工夫など、「まず発見してもらうための情報設計」が第一歩となります。
【視点2】容器の「安定性」が「開けやすさ」を生み出す構造革命
「商品が開けにくい」という問題は、手先の握力や筋力だけの課題と考えられがちです。しかし、調査により「容器自体の安定感」が開けやすさに直結していることが判明しました。
容器が「四角い形状をしている」「適度な硬さがある」「自立する」といった構造を備えることで、手に持ったり机に置いたりした際に安心してホールドでき、効率的に力を加えられるようになります。「開けやすい構造」を考える際は、まず「安定して力を伝えられる構造」へ発想を転換することが重要です。
【視点3】「開けられること」以上に「こぼさない」安心感が重要
開封のしやすさ(成功率)だけでなく、開封時に「中身が飛び散るのではないか」「レトルトの熱い液体がかかるのではないか」という不安や恐怖感の解消が強く求められています。
使いやすさを評価する指針には、物理的な開封率だけでなく「精神的な安心感」までを含めた総合的な指標が必要です。
【視点4】「両手を使う」前提を解体し「片手操作」のユニバーサル価値を創造
キャップを回す・袋の端を押さえるといった日常動作の多くは、無意識に「両手を使うこと」を前提としています。
片麻痺のある方でも片手で完結して扱えるパッケージ構造は、片手が塞がっている育児中・介護中・怪我をしている場面など、すべての生活者にとって利便性を高める「ユニバーサルな価値」を生み出します。
初心者にもよくわかる!障害福祉とインクルーシブデザインの専門用語解説
障害福祉やデザイン思考の専門用語は難解に思われがちです。ここでは、初心者の方にもイメージしやすい例えを用いて解説します。
「障害の社会モデル」と「個人モデル」の違い
障害福祉の世界には、障害を捉える2つの重要な考え方があります。
- 個人モデル(医学モデル):障害の原因は「その人の身体や機能」にあると考える視点。
- 例:「車椅子の人が階段を上れないのは、足が不自由だからだ」
- 社会モデル(環境モデル):障害の原因は「社会の側の設備や仕組み、理解不足」にあると考える視点。
- 例:「車椅子の人が上れないのは、階段しか作っていない建物の設計(社会の側)に問題があるからだ」
CULUMUやDNPの取り組みは、まさにこの「社会モデル」に基づいています。パッケージが開けにくいのは生活者の手の筋力が弱いからではなく、両手操作や強力な握力を前提とした「パッケージ側の設計」に原因があると捉え直すアプローチです。
「リードユーザー」と「N=1リサーチ」とは?
- リードユーザー:極端なニーズや強い不便さを抱えている先進的なユーザーのこと。障害者や高齢者、外国人などが該当します。
- N=1(エヌイコールワン)リサーチ:大人数の平均値(アンケート等)を見るのではなく、特定の1人の深い行動観察や対話から本質的な課題を発見する調査手法です。
極端な不便(N=1)を解消する工夫は、巡り巡って一般の生活者全員の使いやすさ向上につながります。
インクルーシブデザインとユニバーサルデザインの違い
- ユニバーサルデザイン(UD):「あらかじめ、できるだけ多くの人が使えるように設計する」アプローチ。
- インクルーシブデザイン(ID):「デザインの企画・開発段階から、これまで除外されがちだった当事者(リードユーザー)を巻き込んで一緒に作り上げる(共創する)」アプローチ。
包摂的パッケージ開発の成功ポイント

単なる「モニター調査」ではない「共創パートナーシップ」
一般的な商品開発における「当事者テスト」は、完成間近の試作品に対してコメントをもらうだけの「確認型」が多く見られます。 しかし、CULUMUとDNPの取り組みでは、リードユーザーの「日常生活での日記調査」や「行動観察」を通して、当事者自身も言葉にしにくい摩擦や感情(こぼす恐怖、自立の安心感など)を抽出し、設計の問い自体を再定義しています。
社会性(DE&I)と事業性(商品力)の完全な両立
「福祉的なアプローチ=コストがかかる慈善事業」という従来イメージを覆し、片手操作や安定構造といった工夫が一般市場における差別化・ブランド価値向上・SDGs達成につながる「ビジネス上の強み」に変換されている点が極めて先進的です。
企業が包摂的パッケージ開発を成功させるための4ステップ

包摂的な商品開発を検討している企業向けに、導入から製品化までの実践ステップを整理しました。
【Step 1】リードユーザーの特定と困りごとの抽出
└ 6,500以上のNPOネットワーク等を活用し、課題を抱える当事者を選定
【Step 2】行動観察・対話(日記法・対面リサーチ)
└ 買い出しから開封・使用・廃棄までの「見えない摩擦」を言語化
【Step 3】構造的課題への再定義と問いの立て直し
└ 個人の不便を「設計・環境側の課題」として捉え直し、改善策を創出
【Step 4】試作評価・商品化とメディア発信
└ ワークショップで当事者と試作を評価し、展示会や事例発信で企業価値を高める
Q&A

Q1. インクルーシブデザインを導入すると、開発コストや期間が大幅に増えませんか?
A. 企画・初期設計段階から当事者に入ってもらうことで、後からの手戻りや仕様変更を防げるため、トータルでの開発コストやリスクを抑えられます。また、1人(N=1)の深い観察から革新的なアイデアが得られるため、無駄な大規模調査を省くことも可能です。
Q2. 障害者や高齢者向けに特化すると、一般ユーザーにとって使いづらくなりませんか?
A. いいえ。むしろ一般ユーザーにとっても使いやすくなります(これを「サイドウォーク効果」と呼びます)。例えば「片手で開けられるパッケージ」は、片手に荷物を持っている時や料理中の忙しい場面でも重宝します。
Q3. 自社で当事者をリサーチ・集客するノウハウがない場合はどうすれば良いですか?
A. 当事者ネットワーク(NPO等)との接点を持つ専門のインクルーシブデザインスタジオ(CULUMUなど)や、ノウハウを有する共創パートナーと連携することが最も確実です。
従来パッケージと包摂的パッケージの比較表
| 比較項目 | 従来のパッケージ設計 | 包摂的パッケージ設計(インクルーシブ) |
|---|---|---|
| 前提条件 | 視力・筋力・両手操作ができる健常者 | 片麻痺・弱視・高齢者など多様な身体・環境 |
| 情報伝達 | 細かな文字表記による説明重視 | カラーコントラスト・触覚・全体配置での認識 |
| 構造・形状 | コスト優先の平袋・丸型など | 安定性(四角い・自立する)・片手開封対応 |
| 評価指標 | 開封性(物理的に開くか) | 開封成功率 +「こぼさない安心感」 |
| 開発プロセス | 社内デザイナー・技術者のみ | リードユーザー(当事者)との企画初期からの共創 |
| 提供価値 | 一般的な機能・利便性 | 誰にとっても使いやすいユニバーサル価値・DE&I |
まとめ

CULUMUと大日本印刷(DNP)の連携は、パッケージ業界における「インクルーシブ商品開発」の新たな基準を示しています。
片麻痺・弱視・高齢者らリードユーザーとの深い共創から得られた「発見性」「安定性」「こぼさない安心感」「片手操作」という4つの視点は、今後のモノづくりにおいて欠かせないイノベーションの源泉となります。



