障害者雇用代行ビジネスは、厚生労働省が「売り買いされる雇用率」として問題視し、また各メディアがニュースで取り上げたのも記憶に新しいところです。findgoodでも2023年1月に「急増する障害者雇用代行業者の背景にあるもの」と題したコラムを掲載したところ、農園で働く方などから個別にメッセージをいただくなど大きな反響がありました。そこで今回、障害のある当事者は「障害者雇用代行ビジネス」についてどのように感じているのか、株式会社ゼネラルパートナーズ様と合同アンケート調査を行いました。

「障害者雇用代行ビジネス」についてfindgoodとゼネラルパートナーズが合同アンケートを実施

対象者: 20~70代の障害者
実施方法:インターネット調査
アンケート期間:2023/5/12~2023/5/21(有効回答者数:174名)

以下、本コラムで掲載しているアンケート結果および画像は、ゼネラルパートナーズnote「障害者雇用代行ビジネスに関するアンケート」より引用

当事者の認知は低い?アンケート回答者の半数以上が、障害者代行ビジネスを「知らない」と回答

「障害者雇用代行ビジネスを知っているか?」という問いに対し、52.3%が「知らない」と回答しています。これは、メディアに取り上げられたことなどをふまえると意外といえるでしょう。ただ、アンケート回答者の年代は20代~70代以上と幅広いことから、就業・求職中でない人にとって障害者雇用代行ビジネスへの関心は高くないのかもしれません。

また、「障害者雇用代行ビジネス」という言い方は、メディアや、障害者を雇用する企業、就労を支援する企業が使うものと思われます。障害のある当事者が日ごろ「障害者雇用代行ビジネス」というワードを使うことは少ないのではないでしょうか。

当事者が、実際の雇用先となる企業名や、雇用を代行して募集などを行ってる企業名、「貸農園での就労」などのワードに触れる機会が多いことが、52.3%の「知らない」につながった可能性もありそうです。

障害者雇用代行ビジネスに良い印象を持っている障害者は1割程度

「あなたは障害者雇用代行ビジネスについてどのような印象をお持ちですか?」という問いでは、「どちらともいえない」が60%近くでした。「非常に悪い印象」「悪い印象」は合わせて約30%で、好印象を持っている人たちの2倍以上となりました。

続いての「悪い印象、非常に悪い印象と答えた方に質問します。それはなぜですか?(複数回答可)」において目立ったのは、「障害者の自立を支援してくれない」「給与が不十分」といった回答でした。

急増する障害者雇用代行業者の背景にあるもの」掲載後、findgoodに寄せられた貸農園での作業に従事する当事者の声から推測すると、これは農園をリースしている企業の姿勢も関係していそうです。

つまり、担当者が定期的に農園を訪れ、細かく作業指示をし、成果物(収穫)についてもノルマを設定している雇用先企業がある一方で、ノルマなどはなく取れた作物は自分たちで分け、また勤務時間の大半を具体的な作業をすることなくブラブラ過ごすといった企業も存在するとのことです。

後者へのイメージが強い場合「非常に悪い印象」「悪い印象」という回答が多くなるのは必然でしょう。このアンケート回答者からも「障害者を社会から切り離すものだから」(男性 30代 精神障害者保健福祉手帳 うつ)、「労働者を、ただの数字としか見ていないような気がするから」(男性 30代 精神障害者保健福祉手帳 うつ)といった声が聞かれました。

安定的に働ける職場環境などへの前向きな意見も

一方、「非常にいい印象、良い印象と答えた方に質問します。それはなぜですか?(複数回答可)」には、「障害者の自立を支援してくれるから」「障害者が働く上で安心できる職場環境を提供してくれるから」という答えが上位となりました。

フリーアンケートからは、「企業が欲している人材と障害者のマッチングを双方の詳細な意見を聞いて就活、転職の手伝いをしてくれる。(以下、略)(男性 40代 身体障害者手帳 腎臓)、「就職の不安がない。」(男性 50代 身体障害者手帳 下肢)など、就労できる環境であること、安定的な収入があることなどが好印象の理由といえそうです。また障害特性により、人との接触が比較的少なく作業に集中できる農園業という業務が向いている人などからもポジティブに捉えられていると思われます。

当事者にとって仕事内容や給与は「障害者雇用代行ビジネス」に限らず重要

「障害者雇用代行業者の運営する職場で働くことを検討する場合、何が最も重要だと思いますか?」で上位に並んだのは「仕事内容」「給与」「勤務地」でした。これは勤務先の企業が代行ビジネスを利用しているかはもちろん、障害の有無にかかわらず、仕事をするうえで重要なポイントと思われます。

結局のところ、障害当事者にとって、勤務先の企業が代行ビジネスを利用しているかはあまり関係のないことなのかもしれません。それ以上に職場環境や、自立につながるか、といったあたりが就労先選びのポイントとなっているようです。

アンケート結果から

その存在が問題視された障害者代行ビジネスですが、本アンケートからは、障害者代行ビジネスが意外にも認知度が低く、また良い印象もあまり持たれていないということがわかりました。すべての代行業者が「悪」とは限りません。障害者が抱える就労問題の解決や、障害者雇用に悩むクライアントの悩みに真摯に向き合っている代行業者も少なくないはずです。そうであるならば、たんに農園を貸し出したり、障害者雇用に悩む企業にとって都合よくなる投げできる存在になるのではなく、代行業者への丸投げを認めず本社の一事業として積極的に関わることを促したり、障害者の自立に真剣に取り組むことに互いに向き合ったりするなどの、自浄作用的な行動が求められます。

今後、障害者代行ビジネスがどのように展開し、評価されるか注視していきたいと思います。

ゼネラルパートナーズについて

「誰もが自分らしくワクワクする人生」を|社会問題をビジネスで解決する会社。略称はGP(ジーピー)

商号 株式会社ゼネラルパートナーズ
本社所在地 〒100-0011 東京都千代田区内幸町2-1-1 飯野ビルディング9階
本社以外の所在地はこちら
設立 2003年4月9日
代表者氏名 代表取締役社長 進藤 均

本件についての問い合わせ:media-pr@generalpartners.co.jp

Written by

菅間 大樹

findgood編集長、株式会社Mind One代表取締役
雑誌制作会社、広告代理店、障害者専門人材サービス会社を経て独立。
ライター・編集者としての活動と並行し、就労移行支援事業所の立ち上げに関わり、管理者も務める。職場適応援助者(ジョブコーチ)養成研修修了。
著書に「経営者・人事担当者のための障害者雇用をはじめる前に読む本」(Amazon Kindle「人事・労務管理」「社会学」部門1位獲得)がある。
https://www.amazon.co.jp/dp/B0773TRZ77