就労移行支援事業所などでは、一般企業に就労するためにビジネススキルに関するトレーニングを行っています。そこで、ある事業所で行っている「対人業務スキルを身につける」ための取り組みを抜粋して紹介します。

精神・発達障害の方で「対人業務スキル」を苦手とする人は多い傾向にある

一般企業に就労すると、多少なりとも「対人業務」が発生します。たとえば、職場において営業や窓口応対の担当にならないとしても、ある程度の電話応対が発生したり、お客様が来社した際などの簡単な挨拶は発生すると考えられます。今はテレワーク時代とはいえ、100%テレワークの企業はまだ少なく、対人スキルを全く身につけていないと、いざ就労した際に困るケースが発生するでしょう。

しかし、「対人業務スキル」を苦手とする精神・発達障害のある人で少なくありません。しかし、「なぜ苦手とするのか」などを就労移行支援事業所の利用者にヒヤリングすると、多くは<ビジネスマナーを知らない><自分のビジネスマナーに自信がない>のどちらかに分類されることが多いことが分かります。

<ビジネスマナーを知らない><自分のビジネスマナーに自信がない>のいずれにせよ、どちらも就労した際に望ましいビジネスマナーを就労移行支援事業所の利用期間中に知り、トレーニングして「苦手を解消する」ことは可能です。そこで、ここで取り上げる就労移行支援事業所で行っているさまざまな取り組みを紹介します。

就労移行支援事業所とは

就労移行支援事業所で行っている苦手意識をなくすための試み

ある就労移行支援事業所では、対人業務スキルを身につけるために以下のようなようなことを行っています。ここでは苦手意識をなくすために取り組んでいる2つのプログラムを紹介します。

(1)「ビジネスマナー講座」で基本的な身だしなみや言葉遣いを学ぶ

就労移行支援事業所での行われるビジネススキルを身につけるためのプログラムの1つに「ビジネスマナー講座」があります。同講座は、会社のルールや身だしなみ、敬語の使い方などを実践的に学ぶプログラムです。ビジネスにふさわしい立ち振る舞いを知らない利用者が、講座に参加することで、望ましい言葉遣いやふるまいを知り、練習し、後の就職活動や面接で実践できるようになります。

(2)「電話応対プログラム」で、電話のマナーを学ぶ

「電話応対プログラム」も日ごろのプログラムに組み込まれていて、多くの利用者が参加しています。電話応対プログラムでは、職場でよくある電話応対について、ロールプレイをしながら身につけていきます。電話応対の経験がなく、求人で電話応対ありきの業務を避けていた利用者が、ロールプレイで自信をつけ、電話応対があっても求人に応募できるようになったケースもあります。

「対人業務スキル」を苦手とする精神・発達障害のある人も苦手の克服は可能

「対人業務スキル」を苦手とする精神・発達障害のある人は少なくありません。もちろん個人差はあるものの、なぜ苦手なのかを分析すると、多くが<ビジネスマナーを知らない><自分のビジネスマナーに自信がない>であることが分かります。そのような場合、トレーニングをすることで多少なりとも苦手を払しょくすることは可能です。

特性により難しい場合もありますが、しっかりとしたトレーニングを積み、基本的なビジネスマナーを身につけることは、自身が就労する際に選べる業務の幅が広がます。

Written by

菅間 大樹

findgood編集長、株式会社Mind One代表取締役
雑誌制作会社、広告代理店、障害者専門人材サービス会社を経て独立。
ライター・編集者としての活動と並行し、就労移行支援事業所の立ち上げに関わり、管理者も務める。職場適応援助者(ジョブコーチ)養成研修修了。
著書に「経営者・人事担当者のための障害者雇用をはじめる前に読む本」(Amazon Kindle「人事・労務管理」「社会学」部門1位獲得)がある。
https://www.amazon.co.jp/dp/B0773TRZ77