Last Updated on 2025年12月24日 by 菅間 大樹
「稼ぐ」を超え「還す」デザインへ
デザインは、経済活動を促進するだけでなく、社会に貢献し、人々の生活を豊かにする可能性を秘めています。川合俊輔氏は、CULUMUでの多様なユーザーとの共創を通じたインクルーシブデザインの実践に加え、NPOとの対話や自閉スペクトラム症の子どもとの暮らしといった自身の経験から、「稼ぐ」だけでなく「還す」デザインという視点にたどり着きました。
この視点は、「感性という価値の発見と活用によって、社会に資する」という日本感性工学会の目的と深く共鳴するものです。ウェビナーでは、一人のデザイナーとして「デザインは資本主義の仕組みを回すためだけのものなのか?」という問いに向き合い、人とのつながりを生み出し、社会の制度や仕組みの隙間を埋めるデザインの可能性について語られます。
社会的潮流としての「インクルーシブデザイン」
講演では、「社会へ還すデザイン」の具体的な実践手法として、CULUMUが推進する「インクルーシブデザイン」についても紹介されます。
インクルーシブデザインは、これまで見過ごされがちだったリードユーザー(高齢者、障害者、外国人など)と共に開発プロセスを進める手法です。これは単なる福祉的なアプローチにとどまらず、イノベーション創出の源泉として注目されています。
2025年3月に経済産業省 九州経済産業局が公表した報告書『経営戦略としてのインクルーシブデザイン』でも、その可能性が示唆されています。
経済産業省 九州経済産業局『経営戦略としてのインクルーシブデザイン』
https://www.kyushu.meti.go.jp/seisaku/kyosoryoku/oshirase/250312_1_1.pdf
報告書では、以下の点が挙げられています。
-
新たな市場形成とイノベーション: 従来メインターゲットでなかったユーザーと共に開発することで、新市場の形成や企業競争力強化につながる。
-
「ために」から「ともに」への転換: 誰かのために作るのではなく、プロセス全体を通して多様な人と「ともに」作ることで、企業組織の無意識の偏見を解消し、社会のバリアを取り除くことにつながる。
ウェビナーでは、こうした社会的潮流も踏まえ、一人のデザイナーの視点から見た「社会の隙間を埋めるデザイン」の実践知と哲学が語られる予定です。
講演概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| タイトル | De$ign? 「稼ぐ」だけでなく「還す」ためのデザイン |
| 主なトピック | ・デザインは資本主義の仕組みを回すためだけのものなのか? |
| ・NPOとの対話や当事者家族としての経験から得た「気づき」 | |
| ・「利益を生む」から「人とのつながりに役立てる」への視点転換 | |
| ・小さなデザイナーが社会課題に対してできる具体的なアクション | |
| 開催日時 | 2026年1月17日(土)13:00-14:30(講演60分+質疑応答30分) |
| 主催 | 日本感性工学会 HDT(ヒューマンデザインテクノロジー)研究部会 |
| 参加費 | 無料 |
| 形式 | オンラインウェビナー |
| 詳細・申込 | https://design-20250117.peatix.com/ |
登壇者プロフィール

川合 俊輔
インクルーシブデザインスタジオ CULUMU 事業責任者
海外のデザイン会社での経験を経て、インクルーシブデザインスタジオ『CULUMU』を設立。多様なユーザー・生活者との共創によるデザインプロジェクトを多岐にわたる業界・企業と手掛けています。芝浦工業大学ではUXデザイン演習等の非常勤講師を務め、人間工学に基づいたユーザー中心のプロセス、デザイン評価手法、UXデザインの研究や教育に携わっています。現在は大学院にて「当事者発想」のメカニズムについて研究中です。
インクルーシブデザインスタジオ CULUMUについて
CULUMUは、高齢者や障がい者、外国人、マタニティ、Z世代・α世代など、多様なユーザーや当事者と共創するインクルーシブデザインスタジオです。ビジネスコンサルタント、UXデザイナー、UIデザイナー、プロダクトマネージャー、エンジニアなど、多数のスペシャリストが在籍し、さまざまな事業開発を支援しています。

5,000団体以上の非営利団体とのつながりを通じて、これまでリーチが困難だった人々を含む多様な人々とマッチングし、定性的な調査を提供できる希少なN=1調査パネルを強みとしています。このサービスは、公益財団法人日本デザイン振興会より「NPOやNGOと連携し、当事者との距離が近く洗練されたプロダクト開発の手助けになる」と評価され、「2024年度グッドデザイン賞」を受賞しました。
これまで大手企業からスタートアップまで100件以上のデザイン&開発案件実績があり、社会課題への専門性やDE&Iに取り組むプロジェクトも豊富です。
CULUMU公式サイト
https://culumu.com/
株式会社STYZについて
株式会社STYZは「民間から多種多様な社会保障を行き渡らせる」をミッションに掲げ、以下の3つの事業を展開しています。
-
非営利セクターを中心に新しい資金流入を促す「ドネーションプラットフォーム事業」(https://syncable.biz/)
-
企業課題と社会課題の解決を共に目指す「インクルーシブデザイン事業」(https://culumu.com/)
-
次世代的なテクノロジーで人間ならではの体験を創造する「システム開発&エンジニアリング事業」(https://styz.io/tech)
これらの事業を通じて、企業、行政、NPO、個人との媒介となり、社会の課題解決を促進しています。
株式会社STYZ コーポレートサイト
https://styz.io/
日本感性工学会について
日本感性工学会は1998年10月9日に設立された学会です。人文科学、社会科学、自然科学といった従来の枠にとらわれず、幅広い学問領域を融合し、感性工学という新しい科学技術を展開しています。感性工学は、感性という価値の発見と活用によって、社会に資することを目的としています。
日本感性工学会公式サイト
https://www.jske.org/
このウェビナーは、デザインの力でより良い社会を築きたいと願うすべての方々にとって、新たな視点と気づきをもたらす貴重な機会となるでしょう。

