パニック障害は突然に動悸やめまい、吐き気などの症状に襲われる精神疾患であり、転職の際にも慎重に配慮しなければならない要素です。

転職がうまくいっても、仕事中に発作が起きて職場に迷惑をかけてしまったり、最悪仕事を継続できなくなったりすることもありえます。

人によっては広場恐怖や予期不安などの心配があり、なかなか転職に踏み出せない方もいるのではないでしょうか。

今回はパニック障害を抱える330人の体験談やアンケートから、働きやすい職場や業界、職種などを考察してみます。

パニック障害を抱えている方は、少しでも良好な環境で働けるように本記事を参考にしてみてください。

目次

  1. パニック障害のある方にとって満足度が高い職場
  2. パニック障害のある方にとって満足度が低い職場
  3. パニック障害のある方におすすめの業界
  4. パニック障害のある方におすすめの職種
  5. パニック障害のある方の転職活動の進め方
  6. まとめ

1.パニック障害のある方にとって満足度が高い職場

パニック障害のある方が働きやすい職場を知るための指標が職場への満足度です。職場への満足度に関するデータを用いて働きやすい職場の特徴を解説します。

そもそもパニック障害のある方は職場に満足している?

パニック障害のある方がそもそも職場に満足しているのか見てみましょう。

※アンケート「あなたはその会社の就労環境に満足していますか?」を集計して割合を抽出

グラフによると、「とても満足している」と「満足している」の合計が51%となり、パニック障害を抱える方の2人に1人が職場に満足していることがわかります。

「満足していない」「全く満足していない」の合計は23%となり、4人に1人ほどが職場に不満を持っていることがわかります。

半数は職場に満足できていることから、パニック障害のある方でも職場の選び方を間違えなければ、自分に合った職場と出会える可能性は高いといえるでしょう。

職場への満足度が高い理由は?

満足度の高い職場の特徴を知るためにも、職場への満足度が高い理由も確認してみます。

※アンケート「あなたが答えた満足度について理由を教えてください」を分類しプラス評価している内容を集計して割合を抽出。上位5位表示。

上位3つの理由をふまえると、周囲との関係性に満足度の秘密があると考えられます。データをもとに満足度が高い職場の特徴を考察してみます。

満足度が高い職場の特徴1.1人1人の特性について理解がある

パニック障害では勤務中に発作が起こる可能性が高く、症状を理解してもらえないと突然の体調不良に適切に対処してもらえないことも少なくありません。

ときには、体調不良がきっかけで職場を休みがちになることもありえます。職場によっては、パニック障害のある方に配慮する余裕のない同僚や上司もいるかもしれません。

その点で、障害について理解してもらえる職場であることが肝心といえるでしょう。


「病気の状態を理解してくれて従業員の方もサポートしてくれていました。体調が悪くなった時も休憩をくれたり、サポートしてくれて負担を減らしてくれました。」
(女性、小売・流通・商社系)

「周りの方がとても親切にしてくださり、サポートして頂けたからです。」
(女性、運輸・交通・物流・倉庫系)

「病気(特に精神的)には、やさしく対応してくださり、随時、面談をして気持ち落ち着かせてくれました。」
(男性 、その他)

「プレッシャーに弱い私のために、みんなが助けてくれた。」
(女性、不動産・建設・設備系、医療関係)

コメントからもわかるように、休憩や面談の機会をもらえる職場は満足度が高くなりやすいといえるでしょう。
また、パニック障害を理解してくれる環境だと、サポートしてくれる可能性が高まり、肉体的・精神的な負担が軽減されるようです。

疾患全体への理解と同時に1人1人の特性への理解も満足度を上げる要因になるようです。

パニック障害のある方は予期不安といわれる「再度発作が起こったらどうしよう」という不安から症状を悪化させてしまう傾向があります。

その予期不安を和らげるためには、1人1人で異なる発作の起こりやすい状況やシチュエーションに陥りづらくすることが大切です。

そのためには発作の起こりやすい状況やシチュエーションを理解、把握し、上手に避けるサポートがある職場は満足度も高くなっているようです。

苦手なシチュエーションの例としてはこのようなものが挙げられています。


「動悸、呼吸困難感、気が狂ってしまうのではないか、死ぬのではないかという恐怖(予期不安)があります。特に緊張しやすいような場面で症状は強くなる傾向にあります。」
(女性、メーカー・製造系、医療関係)

「閉ざされた空間になると、動悸や吐き気がしてしまう。また、その場は大丈夫だったとしても、またそうなるのでは?という不安感が強い」
(女性、小売・流通・商社系、事務)

そのような悩みにも理解がある職場では、以下のようなうれしい対応をさりげなくしてくれるとのコメントも届いています。


「車での現場移動の際などは高速が苦手なのを会社の人達もわかっていたので下道を使ってくれたり飲み会なども電車が苦手な僕に気を使ってくれて僕の家の近くで飲み会をしてくれたりととてもよくしてもらいました。」 (男性、小売・流通・商社系、エンジニア・技術職)

「パニック障害の症状はハプニングなどにより、突然現れるため、口を荒らすお客様などを対応した際には発祥しやすくなります。その事を周りが理解してくれていて、私がそのようなお客様の対応をしている時は、素早く駆けつけてくれて、フォローしてくれたこと。」
(女性、小売・流通・商社系、接客)

「幸いにも、症状が出てくるシチュエーションにある程度法則性というか、一定の条件のようなものがあったのでそういった状況をある程度周囲の方々が気にかけてくれて、症状が出て勤務が続けられないような状態にはならないようにしてくれていました。」
(男性、メーカー・製造系、軽作業)

パニック障害という疾患全般に関する理解だけではなく、1人1人の苦手に一緒に向き合ってくれるような職場は働きやすく、満足度が高くなるのではないでしょうか。

満足度が高い職場の特徴2.優しく見守り1人を避ける環境づくり

コメントの傾向をみると、仕事を行う環境についてある特徴がみられました。


「業務中も棚卸等体力の使う仕事は他の方も一緒に手伝ってくれたりと、とにかく色々と助けてくれました。」
(女性、小売・流通・商社系)

「なるべく一人にならない様にしてくれた所です。」
(女性、メーカー・製造系)

「症状が出てしまった時に代わってもらえるよう、上司の手が空いている時は遠隔でモニタリングをしてくれていました。」
(女性、IT・通信・インターネット系、コールセンター、オペレータ)

どのコメントからも、一人で作業をしなくて済む環境に満足している様子がうかがえます。

パニック障害にともない広場恐怖(アゴラフォビア)に陥る方もいます。発作が起きたときに助けが得られない状況に極度の不安を感じる症状です。中にはこの症状が強くて外出ができなくなる方もいることが知られています。

このような広場恐怖の症状があることもふまえると、パニック障害のある方にとっては誰かに頼れる状況が不可欠と考えられます。一人にならなくて済む環境も、パニック障害のある方が満足しやすい職場の条件の一つといえそうです。 

満足度が高い職場の特徴3.人間関係が良好である

一般的な職場では、人間関係が悪いと働きづらく、良好だと働きやすいものです。それはパニック障害のある方にとっても変わらない事実といえます。

コメントからもそのことがわかります。


「人間関係が割とよい シフトの融通がきく 楽しいと思える時もたまにある」
(教育)

「比較的に主任や従業員がみんな優しくて働きやすかった。」
(女性、サービス・外食・レジャー系)

パニック障害のある方は、人間関係に対して楽しみを見いだせたり、上司や同僚が優しかったりすると勤務しやすいようです。

パニック障害のある方が満足できる職場で働くには、人間関係が良好な環境を見つけることが大切だとわかります。

ここまで満足度の高い職場の理由について見てまいりましたが、まとめてみましょう。

【パニック障害のある方にとって満足度の高い職場とは】

① パニック障害について理解し1人1人に合わせた周囲のサポートがある。具体的には
・突然の発作に対する対応を知ろうとしてくれる姿勢がある
・急な体調変化に伴う休みに対する理解
・業務へのサポートで不安を和らげる
・直接的なサポートだけでなく見守る気持ちがある
・個々の予期不安の原因を知り、発作が起きにくい環境づくり
・広場恐怖を避けるために1人で仕事を行う環境を作らない

② 人間関係が良好である
・パニック障害は、理解のある職場の具体的な内容からもわかるように、周囲の理解やサポートが必要になります。そのため人間関係が良好であることは重要なポイントです。

参考:厚生労働省「みんなのメンタルヘルス」

2. パニック障害のある方にとって満足度が低い職場

パニック障害のある方にとって満足度が低い職場を知ることも、長く働ける職場を見つけるために重要です。満足度が低い職場の特徴について口コミをもとに解説します。

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Written by

今井 靖之

findgood編集者、ライター。

大手電機メーカーで半導体電子部品のフィールドアプリケーションエンジニア、インターネットサービスプロバイダのプロモーションやマーケティングに従事。以後フリー。

身内に極めて珍しい指定難病者を抱える。

神奈川県川崎市在住。サブカルヲタク。「犬派?猫派?」と聞かれたらネコ派、猫同居中。