Last Updated on 2023年7月16日 by 菅間 大樹
全国250校舎の学習塾を運営する湘南ゼミナールの特例子会社「湘南ゼミナールオーシャン」。神奈川県内、初となる学習塾の特例子会社として設立し、平成27年度の厚生労働省の障害者雇用職場改善好事例集に掲載、各地で講演を開くなど、特例子会社として大きな注目を集めています。注目される一つの要因が『高い定着率』。今回は、その秘密を伺いました。
目次
- 完璧な人はいらない、補い合ってチームになる
- 強みを知り、強みを活かせる仕事をする
- 段階的に目標を変えていったから成功した
- 『育つ環境』を整えることを大切にする
- ”場”を好きになってもらうことから始めた
- 勤怠を安定させて自信を持ってもらうためにも『セルフケア』は大切
- 一日の流れ
- 幸福度を上げれば生産性は高まる
完璧な人はいらない、補い合ってチームになる
ーまず、精神障がい者雇用に特化している理由についてお聞かせください。
前山さん:全ての障がい種別の方を受け入れるべきだと思ったのですが、障がい者雇用のノウハウがなかったため、採用対象者を精神障がい者の方に絞り、雇用をスタートしました。
当時は、知的障がい者と身体障がい者の優秀な方ほど大手企業に就職してしまい、採用することが難しい現状でした。
その一方で、精神障がい者の方の雇用はなかなか進まず、就職に困っている方が大勢いました。それならば、一番遅れている精神障がい者雇用から始めたいと思いました。
ー精神障がいのある方を採用してみて感じたことはありますか?
前山さん:設立当初は、6名の精神障がい者の方を採用しましたが、当時は全く仕事がなく、グループワークばかりしていました。
一緒に働く中で分かった彼らの特徴は、緊張や不安が高くて疲れやすいことでした。そして、ものすごく丁寧で”ホスピタリティ”と”正確性”に長けているということでした。また、能力面は個人差があり、それは個性でもあることに気付きました。
そこで、彼らの得意なところを活かしてもらえばよいのではないかと思い、徹底的に強みを活かす仕組みにしました。本人が自覚している限り、課題は特に取り上げません。
ー強みを活かす仕組みとは、どのような取り組みでしょうか?
前山さん:強みや弱みというのは、今まで同じ時間や労力をかけてできているわけですよね。
でも、弱みはある一定のラインを迎えるとそれ以上にはならず、反対に、強みはもっともっと伸びると考えました。
能力のレーダーチャートに例えると、全ての項目を満たす必要はなく、得意不得意がある人でチームとしてすべての項目を満たせば良いという発想をしました。
強みを知り、強みを活かせる仕事をする
ー具体的にどのようなお仕事をされているのでしょうか?
前山さん:親会社の事務や軽作業の補助をしています。具体的には、個人情報の処理、封入封緘、名刺の作成と印刷、文書の電子化、データ入力などを行なっています。
設立当初は、全く仕事がもらえなかったとお話しましたが、その時の本社への依頼の仕方は「締め切りがゆったりめで、判断基準が明瞭な仕事」でした。でも、それでは仕事がもらえないことに気付き、”ホスピタリティ”と”正確性”という強みを活かせる仕事を探し、現在に至ります。
ー業務の中で、”ホスピタリティ”と”正確性”が活かされている事例があれば教えてください。
前山さん:名刺作成を事例として挙げると、本社の全社員の名刺を作成し、梱包する際に『39(ありがとう)カード』というものを必ず付けています。
そうやって、定期的に全社員へ向けてメッセージを届け、感謝を伝えています。
その積み重ねによって弊社を応援してくれる社員も増え、今では、社内の困り事や仕事をまとめて届けてくれる本社社員もいます。
ーそれは素晴らしいですね。”ホスピタリティ”と”正確性”が強みであると明言してから『39(ありがとう)カード』を始めたということですね。
前山さん:そうです。ただ、社員に”ホスピタリティ”や”正確性”を大切にしようと伝えると、障がいのある方は不安になってしまうと考え、不安や負担感を下げる工夫をしています。
弊社は、ペアで仕事をすることがとても多いのですが、二人で同じものを確認する『デュアルチェック』という形式をとっています。
ダブルチェックとの違いは、一方がもう一方のチェックをするのではなく、”共に確認をする”という点です。二人で一緒に確認することで、安心感が生まれ、生産性も高まったと感じます。
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