発達障害や発達特性のある子どもへの関わり方に悩んでいませんか?「叱ってばかりで自己嫌悪になる」「家庭や学校でどう接すればいいかわからない」と不安を抱える保護者や支援者は少なくありません。本記事では、小児科専門医・子どものこころ専門医であり、自らも「きょうだい児」「3児の母」として当事者視点を持つ西村佑美医師の取り組みをもとに、子どもとの接し方が変わる「肯定的注目(実況中継)」の具体的な実践方法を解説します。


この記事で分かること

  1. 「治す時代」から「活かす時代」へ:発達特性を深く理解し、子どもの強みを引き出すための視点
  2. 「肯定的注目(実況中継)」の実践法:評価や判断をせず、できた事実を伝える具体的な関わり方
  3. 専門医・当事者視点のメッセージ:西村佑美医師が沖縄の研修・講演会で伝え、共感を呼んだ支援の本質
  4. 日常で役立つQ&A:子育てや現場指導におけるよくある悩みの解消法

発達特性のある子どもへの関わり方で大切なポイントとは?

子どもに行動の偏りやコミュニケーションの難しさが見られると、周囲の大人は「どう指導すれば正しい行動ができるか」「なぜ他の子と同じようにできないのか」と悩んでしまいがちです。しかし、支援の第一歩は「子どもの行動を矯正すること」ではなく、「見方を変えること」にあると言われています。

「診断」よりも「特性の理解」を優先する

子どもの発達に関して、医療機関での受診や診断の有無を気にされる保護者は多くいらっしゃいます。しかし、一般社団法人 日本小児発達子育て支援協会代表理事の西村佑美医師は、「診断よりも特性の理解が優先」であると伝えています。

診断名はあくまで一つの指標に過ぎず、同じ診断名であっても子どもの得意・不得意や感覚の過敏さ、得意な学び方は一人ひとり異なります。診断名にとらわれすぎず、「目の前のその子がどんな世界を見ているのか」「何に困っているのか」を観察し、理解しようとする姿勢が大切とされています。

「治す時代」から「活かす時代」への転換

これまでの発達支援では、周りに合わせられない行動や苦手な部分を「治す」「克服させる」ことに焦点が当てられがちでした。しかし、近年では個々の特性を理解した上で、その子が持つ強みや個性として「活かす時代」へとシフトしています。

個性を尊重しながら、本人が生きづらさを感じている部分に適切な環境調整やサポートを行うことが、子ども自身の自己肯定感を育む鍵となります。

専門用語解説:発達特性と発達障害の違い

  • 発達障害(神経発達症): 脳機能の発達における偏りにより、社会生活や日常のコミュニケーションに支障をきたす状態を指す医学的な診断名です(ASD、ADHD、SLDなど)。
  • 発達特性(発達凸凹): 診断の有無にかかわらず、行動や感覚、得意・不得意のバランスに生じる個々のグラデーション(傾向)を指します。グレーゾーンと呼ばれる範囲も含め、より一人ひとりの個性に着目した表現として用いられます。

現場や家庭で今すぐ使える!西村佑美医師が提唱する支援技法

教育現場や家庭で子どもとのコミュニケーションに悩む際、具体的かつ実践しやすい方法として注目されているのが、西村医師が研修や講演で伝えている支援技法です。

良い行動を増やす「肯定的注目(実況中継)」とは?

多くの参加者から「すぐに真似できる」「変化を感じられた」と反響を呼んでいるのが、「肯定的注目(実況中継)」です。

これは、子どもの適切な行動や望ましい姿に対して、大人が評価や褒め言葉を挟まずに、見えたままの事実を言葉にして伝える方法です。

  • 従来の褒め方例: 「えらいね!すごいね!」(評価・判断が入る)
  • 実況中継の例: 「靴を揃えて履いたね」「椅子に座れたね」「自分で鉛筆を持ったね」(事実のみを伝える)

大人が「すごい」「偉い」と評価しようとすると、時に子ども側がプレッシャーを感じたり、評価されるための行動になってしまったりすることがあります。事実をそのまま実況中継されることで、子どもは「自分の行動を見てもらえている」「肯定されている」と感じ、自然と望ましい行動が増えていく効果が期待されています。

専門用語解説:ペアレント・トレーニングとは

保護者が子どもの特性を正しく理解し、適切な関わり方や行動制御の技法(肯定的注目や環境調整など)を学ぶための心理教育的プログラムです。保護者自身のストレス軽減と、子どもの行動改善の双方に効果があることが実証されています。

実際に体感する:5歳児の着替えのロールプレイ事例

沖縄で実施された研修では、朝の着替えが進まない5歳児の事例を用いてロールプレイが行われました。

イライラしながら手伝う場面で言葉かけだけを「実況中継」に変えたところ、子ども役を務めた受講者から「実況中継の方が自分でやった気になれる」「叱られるようなプレッシャーを感じなかった」といった感想が寄せられました。頭での理解にとどまらず、子どもの立場を体験することで関わり方の本質が捉えやすくなります。

困った行動への対処法「計画的無視」と指示出し

関わり方においては、「肯定的注目」と合わせて「計画的無視」や「わかりやすい指示出し(リーダーシップ型の指導)」を組み合わせることが効果的とされています。

専門用語解説:計画的無視とは

危険な行動や他者を傷つける行動以外の「関心を引くための不適切な行動(大声を出す、ぐずる等)」に対して、意図的に注目を与えない(反応しない)技法です。不適切な行動に注意を向けるのをやめ、望ましい行動に切り替わった瞬間に「肯定的注目」を与えることで、望ましい行動を定着させていきます。


なぜ西村佑美医師の言葉は届くのか?当事者家族としての背景

西村佑美医師の研修や講演が「従来の専門家研修と違う」と高く評価される理由には、専門医としての知見だけでなく、西村医師自身が歩んできた背景があります。

専門性と豊富な診療実績

西村医師は、小児科専門医・子どものこころ専門医・小児心身医学会認定医などの資格を持ち、大学病院や地方病院で発達専門外来を立ち上げ、これまでのべ1万組以上の親子を診療してきた実績があります。著書『発達特性に悩んだらはじめに読む本』(Gakken)も多くの方に読まれています。

専門用語解説:子どものこころ専門医とは

子どもの心身の発達、不登校、発達障害、心理的課題などに対して、高度な専門知識と診療技術を持つ医師に与えられる専門医資格です。小児科や精神科の領域をまたぎ、子どもの健全な育ちを総合的にサポートします。

「きょうだい児」であり「3児の母」としての当事者視点

西村医師は、最重度の自閉症を持つ姉と育った「きょうだい児」であり、自身が育てる3人の子どものうち長男にも多動傾向などの発達特性が見られた経験を持っています。

「医師」としての立場だけでなく、「悩み試行錯誤する家族の一員」としての葛藤を身をもって知っているからこそ発せられる温かい言葉が、保護者や教員の心に深く響く理由となっています。

専門用語解説:きょうだい児(きょうだい)とは

障害や病気を持つ兄弟姉妹がいる立場の人を指す言葉です。幼少期から特有の葛藤や負担を抱えやすいため、近年の障害福祉分野では「本人」や「保護者」に加えた重要な支援対象・理解の対象として注目されています。


沖縄での研修・講演会で見られた参加者の変化と反響

2026年7月31日と8月1日の2日間、沖縄県にて教育関係者および保護者・支援者を対象とした研修・講演会が開催されました。

教員向け研修(沖縄県立総合教育センター)での気づき

沖縄県立総合教育センター主催の研修講座「発達障害がある幼児・児童の理解と支援」には、幼稚園から高校までの教員や支援員約60名が参加しました。対面形式で実施された今回の研修では、知識の伝授にとどまらず、ロールプレイなどを交えた体験型のプログラムが展開されました。

受講した教員からは、「当事者の世界や気持ちを感じることが一番大事だと実感した」「これまでの思い込みを見直すきっかけになった」といった声があがり、教育現場における実践へのモチベーションが高まった様子がうかがえます。

保護者・支援者向け「こどもまんなかラボ in 沖縄」での安心感

翌日に開催された市民向けイベント「こどもまんなかラボ in 沖縄」には、未就学児や小学生の保護者、保育士や療育関係者、さらには夫婦や祖母など多様な立場の方々が集まりました。

参加者からは、以下のような前向きな感想が寄せられています。

  • 保護者の声: 「面談で『こだわりが強い』と言われてから悩み続けていたが、たくさんのヒントを得られた。コツコツコミュニケーションを積み重ねていきたい」
  • 支援者・保護者の声: 「支援者としての学びに加え、これまで試行錯誤してきた日々は間違いじゃなかったと救われた」

子育ての悩みや孤立感を孤立させず、家庭・教育・地域の支援者が一体となって理解を深める大切さが再確認された場となりました。


【Q&A】発達障害・発達特性に関するよくある悩みと疑問

発達障害や発達特性のある子どもとの関わりにおいて、多くの方が抱きやすい疑問や悩みについて回答します。

Q1. 子どもの気になる行動に対し、ついつい叱ってばかりになります。どのように見直せばよいですか?

A. 毎日忙しい中で感情的になってしまうのは、決して保護者や指導者個人の努力不足ではありません。まずは「叱らないようにする」のではなく、日常の小さな「できていること(靴を履いた、座ったなど)」に目を向け、ただ事実を口に出す「肯定的注目(実況中継)」を1日1回から試してみることが推奨されます。大人が見方や声かけを少し変えるだけで、子どもの反応や雰囲気が柔らかく変化していくことが期待できます。

Q2. 「肯定的注目(実況中継)」はどのような子ども・年齢に効果がありますか?

A. 幼児期から小・中学生、さらには高校生まで幅広く有効とされています。特に「認められている」「自分の行動を見てもらえている」という安心感(心理的安全性)を育む効果があるため、発達特性のある子に限らず、あらゆる子どもの自己肯定感を支えるコミュニケーション技法として活用できます。

Q3. 発達障害の診断を受けるかどうか迷っています。受診のタイミングは?

A. 診断を受けるかどうか以上に大切なのは、「今、子どもや周りが何に困っているか」を見つめることです。日常生活や園・学校生活で強い生きづらさや困難が見られる場合は、専門機関や医療機関に相談することで、環境調整のアドバイスや適切なサポート(療育や合理的配慮)につながるきっかけになります。まずは地域の発達支援センターや子育て相談窓口などを活用することも一つの選択肢です。


まとめ:子どもの見方を変え、前向きな関わり方を積み重ねよう

発達特性のある子どもへの支援は、苦手な部分を力ずくで矯正することではなく、「診断より特性理解」「治す時代から活かす時代へ」という視点に立つことから始まります。

  • 評価しない声かけ「肯定的注目(実況中継)」を取り入れることで、子どものできた体験を無理なく増やしていくことができます。
  • 一人で悩みを抱え込まず、家庭・学校・専門機関が連携することで、子どもも周囲の大人の心も守られる環境が作られます。

西村佑美医師が伝える当事者視点に立った関わりのコツを参考に、日々のコミュニケーションの中で「できた!」の瞬間を少しずつ見つけてみてはいかがでしょうか。


※本記事は、一般社団法人 日本小児発達子育て支援協会のプレスリリース情報(2026年9月発信)をもとに、発達支援・子育ての視点から解説・作成したものです。


Written by

菅間 大樹

findgood編集長、株式会社Mind One代表取締役
雑誌制作会社、広告代理店、障害者専門人材サービス会社を経て独立。
ライター・編集者としての活動と並行し、就労移行支援事業所の立ち上げに関わり、管理者も務める。職場適応援助者(ジョブコーチ)養成研修修了。
著書に「経営者・人事担当者のための障害者雇用をはじめる前に読む本」(Amazon Kindle「人事・労務管理」「社会学」部門1位獲得)がある。
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