障がい福祉の大きな課題:「18歳の壁」と「親亡き後」の不安

障がいのある子どもたちは、学校を卒業すると、それまでの支援体制が大きく変化する時期を迎えます。日中の居場所、働く場、そして暮らす場所を改めて探す必要が生じるこの変化は、「18歳の壁」と呼ばれ、制度と暮らしの切り替わりにおける大きな節目となります。

親御さんからは、「このまま今の生活が続けられるのか」「親が動けなくなった後、誰に相談すればいいのか見えない」といった将来への不安の声が聞かれます。こうした不安は、制度やサービスの説明だけでは解消しきれない根深い問題です。

『100年PLAZA』は、18歳を迎えてから慌てて支援を探すのではなく、学生期から「働く」「暮らす」を見据えて準備できる地域の仕組みを構築することを目指しています。

会議室で笑顔を見せる人々

CORRINの実績が示す「切れ目のない支援」の必要性

愛生館グループは、これまでに0歳から100歳まで多世代が交流する複合施設「CORRIN(コリン)」を2022年に開設しています。保育、児童発達支援、放課後等デイサービス、高齢者デイサービス、地域交流の場を一体的に提供し、「ごちゃまぜ」の交流を推進してきました。

「CORRIN」では年間延べ約45,000人の利用・来場者があり、地域交流サロン「ハーモニーホール」の年間利用者数は約2,800人、夏祭りなどのイベント参加人数は約1,500人に上るなど、地域を巻き込んだ活発な交流が生まれています。また、児童発達支援・放課後等デイサービスの利用率が95~99%と高いことから、地域における発達支援や放課後支援へのニーズの高さが明らかになりました。

CORRINの外観

こうした実績を通じて、「通う場所」だけでなく、その先の「暮らす場所」「働く出口」「地域とのつながり」を一体で支えることの重要性が明確になったといいます。『100年PLAZA』は、「CORRIN」で見えてきたこの課題に応える次の拠点として構想されました。

多世代が交流するイベントの様子

『100年PLAZA』が提供する一体型支援:住まい・働く・地域とのつながり

『100年PLAZA』では、障がいのある方が地域の中で自分らしく暮らし続けるために、「住まい」「働く場」「地域とのつながり」を一体で支える拠点づくりを進めます。具体的には、以下のような支援が計画されています。

  • 住まい: 親元から離れて自立した暮らしを見据えた生活の場を提供。

  • 働く場: 就労に向けた準備や経験の機会を創出。

  • 地域とのつながり: 本人や家族が孤立しないための相談支援や地域交流の場を整備。

『100年PLAZA』は、障がい福祉と高齢者支援を分けて考えるのではなく、世代や制度の枠を超えて、地域の中で支え合う新たな場を目指しています。

『100年PLAZA』の完成イメージパース

愛生館グループの挑戦と現場の声

事業発表会では、愛生館グループ代表の小林清彦氏が、1945年の創業以来、地域の医療・介護・福祉を担ってきた同グループの歩みを振り返りながら、『100年PLAZA』に込めた想いを語りました。

愛生館グループは、戦後の医療再建、高齢化社会への対応、地域包括ケアの推進など、時代ごとの地域課題に向き合い、その役割を果たしてきました。小林氏は、『100年PLAZA』について、「施設をつくることが目的ではなく、障がいのある子どもたちと家族が抱える将来への不安に、地域で向き合う仕組みをつくる挑戦である」と説明しました。

小林清彦代表によるプレゼンテーション

また、開設後に現場を担う職員も同席し、日々の支援の中で感じている課題や、本事業に込める想いを語りました。現場では、学校卒業後の進路や暮らしについて、保護者が早い段階から不安を抱えている場面が多く見られます。慣れた場所や支援者との関係が途切れることへの不安、将来的に親が支えられなくなった時の生活への不安は、制度やサービスの説明だけでは解消しきれない課題だといいます。

『100年PLAZA』では、こうした声を受け止め、本人の得意なことやできることを活かし、支援を受けるだけでなく、誰かの役に立つ場面や社会とのつながりをつくることを大切にしていくとのことです。

現場で働く従業員

今後の展開と地域共生社会への期待

『100年PLAZA』は、今後、開設に向けて建設、人材採用、利用者・家族の声を反映した準備など、複数の節目を迎える予定です。愛生館グループは、今回の事業発表会を第一歩と位置づけ、今後も進捗を継続的に発信していくとしています。

施設完成だけでなく、地域の中で新たな支え合いの仕組みを構築していく過程そのものが、障がいのある方とその家族、そして地域全体にとって大きな希望となるでしょう。

愛生館グループは、愛知県碧南市・安城市を中心に、医療・介護・福祉事業を展開する地域密着型のグループです。1945年の小林医院開設以来、80年にわたり地域の暮らしと健康を支えてきました。現在は、病院、介護施設、在宅サービス、障がい福祉、保育などを展開し、医療・介護・福祉の枠を超えて、誰もがその人らしく暮らし続けられる地域づくりに取り組んでいます。

愛生館グループの詳細については、以下のウェブサイトをご覧ください。

『100年PLAZA』の取り組みは、障がい福祉分野における「18歳の壁」や「親亡き後」の問題に対し、地域全体で向き合い、具体的な解決策を提示する新たなモデルとなることが期待されます。この複合施設が、障がいのある方々が安心して自分らしく生活できる地域共生社会の実現に貢献していくことでしょう。

Written by

菅間 大樹

findgood編集長、株式会社Mind One代表取締役
雑誌制作会社、広告代理店、障害者専門人材サービス会社を経て独立。
ライター・編集者としての活動と並行し、就労移行支援事業所の立ち上げに関わり、管理者も務める。職場適応援助者(ジョブコーチ)養成研修修了。
著書に「経営者・人事担当者のための障害者雇用をはじめる前に読む本」(Amazon Kindle「人事・労務管理」「社会学」部門1位獲得)がある。
https://www.amazon.co.jp/dp/B0773TRZ77