認定NPO法人AYA、設立3周年記念イベントで「体験格差」のない社会へ新たな一歩

病気や障がいのある子どもたち、そして医療的ケア児とその家族が直面する「体験格差」という課題。この解消を目指し活動する認定NPO法人AYAが、2026年6月29日に設立3周年を迎えました。これを記念し、6月28日には多くの子どもたちやその家族、支援者を招いた記念イベントが開催され、スタッフを含め117名が参加しました。

イベントでは、映画・スポーツ・自治体の各界の専門家によるパネルディスカッションや、AYAの活動に参加した家族による体験談が語られ、笑顔あふれる「ワクワクするひととき」が共有されました。さらに、2027年5月には全国47都道府県での「AYAインクルーシブ映画上映会」同時開催を目指す「インクルーシブ映画Day」の設立という、今後の壮大な目標も発表されています。

認定NPO法人AYAの3周年記念イベントでの集合写真

3周年記念イベントの開催と「体験格差」への取り組み

認定NPO法人AYAは、病気や障がいを持つ子どもたちとその家族が、さまざまな体験を諦めることなく楽しめる社会の実現を目指しています。彼らは、医療的ケア児や障がい児が安心できる環境で、スポーツや芸術、文化に触れる機会を提供することで、世界観が広がることをミッションとして掲げています。

今回の3周年記念イベントは、東京都千代田区の3×3Lab Futureとオンラインで同時開催されました。このイベントは、AYAがこれまで支えられてきた人々への感謝を示すとともに、今後の活動への期待を高める場となりました。

各界の専門家が語る「AYAのVision」と共生の未来

イベントの第1部では、AYAの活動を支援する映画、スポーツ、自治体の各界から、以下の皆さんが登壇し、パネルディスカッションが行われました。

  • 菅野信三氏(全国興行生活衛生同業組合連合会 会長)

  • 植田哲也氏(株式会社横浜ビー・コルセアーズ 取締役)

  • 田中剛氏(世田谷区障害福祉部障害保健福祉課担当 係長)

モデレーターはAYA代表理事の中川悠樹氏が務め、「Vision」をテーマに、AYAを支援する意義や、活動を通じて起こった変化、今後の期待について意見が交わされました。

 

菅野信三氏は、AYAが主催する「インクルーシブ映画上映会」の現場での体験について、「お客様の目が輝いている。ボランティアスタッフも心から楽しんでいる姿に感動する」と述べ、映画館が感動を届ける場所として、これまで困難だった人々にも感動を届けようとするAYAの活動に、エンターテインメント業界との共通点を見出しました。

  • インクルーシブとは: 「誰も排除しない」という考え方に基づき、多様な人々が共に参加し、共生できる社会を目指すことを指します。特に障害福祉分野では、障がいのある人もない人も、互いの違いを認め合い、支え合いながら共に生きる社会の実現を目指す概念です。

株式会社横浜ビー・コルセアーズの植田哲也氏は、AYAを通じて子どもたちが試合前のオープニングイベントに出演した際のたくさんの笑顔が印象的だったと語り、今後もボランティア活動などで連携を深め、他のプロスポーツ団体にもAYAの活動を広めていきたいとの意向を示しました。

世田谷区障害福祉部の田中剛氏は、公共施設ではなく映画館を貸し切って「本物」の体験を提供するAYAの映画上映会の特長を挙げました。また、医療的ケア児とその家族の現状がまだ広く知られていない中で、AYAの発信力に期待し、より多くの人々が支援の輪に加わることへの希望を述べました。

  • 医療的ケア児とは: 日常的にたんの吸引や経管栄養、人工呼吸器などの医療的なケアを必要とする子どものことを指します。在宅での生活を支えるため、家族や医療従事者、福祉関係者による継続的な支援が不可欠です。

中川悠樹代表理事は、AYAインクルーシブ映画上映会を対象者に知ってもらうためには自治体の協力が不可欠であるとし、映画・スポーツ・自治体の各業界が連携するサイクルを構築することの重要性を強調しました。

参加者の声から見出す「AYAでのExperience」が拓く可能性

イベントの第2部では、AYAの活動に参加した病気や障がいのある子どもたち、親御さん、きょうだい児が、自身の体験を語りました。

親御さんからは、「AYAのイベントを通じて、さまざまなことへの挑戦を楽しめるようになった」という声が聞かれました。また、車いすユーザーで海外渡航プログラムに参加した子どもからは、「これまで目標などはなかったけれど、アメリカでNBAを観戦して、バスケ留学をしたいという夢ができた」といった、素晴らしいエピソードが共有されました。これらの体験談は、AYAが提供する「ワクワクするひととき」が、子どもたちとその家族の可能性を大きく広げていることを示しています。

  • 体験格差とは: 病気や障がい、経済的な理由などにより、特定の個人やグループが他の人々と比べて、社会的な活動、文化体験、教育機会などにアクセスしにくい状況を指します。特に子どもたちにとっては、成長に必要な多様な経験の機会が失われることにつながる場合があります。

認定NPO法人AYAの3年間の歩みと今後の展望

認定NPO法人AYAは、2022年1月に任意団体として設立され、2023年に法人化、2026年2月には認定NPO法人となりました。この3年間で、これまでに229回のイベントを開催し、延べ32,552名が参加しています(2026年7月3日現在)。

AYAの活動の大きな特長は、医師や看護師などの医療従事者がすべてのイベントに帯同することです。これにより、「子どもが声を出したり、じっとしていられなくてもOK」「点滴・栄養剤の投与や、人工呼吸器などの医療機器を使用してもOK」という、当事者と受け入れ側の双方が安心して参加できる環境が実現されています。この安心感が、家族みんなで体験を分かち合える場を提供し続けている要因の一つです。

2027年「インクルーシブ映画Day」全国同時開催を目指す新たな挑戦

AYAの次なる目標は、2027年5月の「インクルーシブ映画Day」の設立です。これは、AYAインクルーシブ映画上映会を全国47都道府県で同時開催し、「体験」の価値を全国の子どもたちやその家族と共有するという、壮大な挑戦です。

病気や障がいがあることを理由に諦めていた「ワクワクするひととき」を、誰もが享受できる社会の実現に向け、認定NPO法人AYAの活動は今後も注目されるでしょう。

子どもたちが様々な活動を楽しむ様子

認定NPO法人AYAに関する情報

認定NPO法人AYAの活動や、今後の「インクルーシブ映画Day」に関する詳細情報は、以下の公式サイトやSNSで確認できます。

誰もが「ワクワクするひととき」を享受できる社会の実現に向けて、認定NPO法人AYAの今後の活動に期待が高まります。彼らの取り組みが、障害福祉の未来に明るい光を灯すことでしょう。

Written by

菅間 大樹

findgood編集長、株式会社Mind One代表取締役
雑誌制作会社、広告代理店、障害者専門人材サービス会社を経て独立。
ライター・編集者としての活動と並行し、就労移行支援事業所の立ち上げに関わり、管理者も務める。職場適応援助者(ジョブコーチ)養成研修修了。
著書に「経営者・人事担当者のための障害者雇用をはじめる前に読む本」(Amazon Kindle「人事・労務管理」「社会学」部門1位獲得)がある。
https://www.amazon.co.jp/dp/B0773TRZ77