2025年デフリンピック銀メダリストの東海林香那選手・酒井藍莉選手が「大阪スポーツ大賞 優秀選手特別賞」を受賞しました。本記事では、両選手の実績や所属企業であるケイアイスター不動産株式会社のデフアスリート支援事例をはじめ、企業が障害者アスリート雇用やDE&I推進を成功させるための具体策や課題解決のステップを解説します。
この記事で分かること
- 大阪スポーツ大賞 優秀選手特別賞の概要と受賞選手(東海林選手・酒井選手)の実績
- デフリンピックとパラスポーツの違いおよび関連専門用語の基礎知識
- ケイアイスター不動産株式会社におけるDE&I推進とデフアスリート支援の先進事例
- 企業が障害者アスリート採用・デュアルキャリア支援を導入するための3つのステップ
- 一般障害者雇用と障害者アスリート雇用の比較および期待される経営効果
企業における障害者雇用とDE&I推進の課題
法的雇用率の引き上げやサステナビリティ経営の強化に伴い、多くの企業において障害者雇用の促進やDE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)の推進が重要な経営課題となっています。しかし、「単に雇用枠を満たすだけでなく、いかに社内の多様性理解やエンゲージメント向上につなげるか」「どのようなサポート体制を構築すれば持続的な活躍が可能か」といった悩みを抱える人事・サステナビリティ担当者は少なくありません。
本記事では、2025年夏季デフリンピックで銀メダルを獲得し「大阪スポーツ大賞 優秀選手特別賞」を受賞したデフアスリートの活躍と、支援企業であるケイアイスター不動産株式会社の取り組み事例をもとに、企業がパラスポーツ支援や障害者雇用を活用して組織活性化を図る手法を客観的に紐解きます。
デフリンピック銀メダリストの東海林香那選手・酒井藍莉選手が「大阪スポーツ大賞」を受賞
令和8年度「大阪スポーツ大賞 優秀選手特別賞」の概要と選出理由
ケイアイスター不動産株式会社に所属するデフアスリートの東海林(旧姓:中井)香那選手および酒井藍莉選手が、令和8年度大阪スポーツ賞表彰式において「大阪スポーツ大賞 優秀選手特別賞」を受賞しました。
両選手は大阪府にゆかりのあるデフアスリートであり、2025年に開催された「第25回夏季デフリンピック競技大会(東京)」のデフサッカー種目において準優勝(銀メダル獲得)を果たした実績をはじめ、国際大会での顕著な活躍が高く評価され受賞に至りました。
東海林選手・酒井選手の主な大会実績と代表コメント
両選手が残した主な国際大会の実績は以下の通りです。
| 開催年 | 大会名称 | 競技種目 / 開催国 | 成績 |
|---|---|---|---|
| 2023年 | 第5回女子デフフットサル世界大会 | デフフットサル(ブラジル) | 初優勝 |
| 2024年 | 第20回冬季デフリンピック競技大会 | デフフットサル(トルコ) | 5位 |
| 2025年 | 第6回女子デフフットサル世界大会 | デフフットサル(イタリア) | 7位 |
| 2025年 | 第25回夏季デフリンピック競技大会 | デフサッカー(東京) | 準優勝(銀メダル) |
受賞に際し、東海林選手は「大阪出身として大変光栄に感じており、応援への感謝とともにデフスポーツの魅力を伝えていきたい」旨を述べています。また、酒井選手は「周囲のサポートがあってこそ到達できた賞であり、今後も周囲に感動や勇気を届けられるよう努力を重ねたい」旨のコメントを発表しています。
ケイアイスター不動産における障害アスリート支援とDE&I推進の取り組み
ケイアイチャレンジドアスリートチームの理念と構成
受賞選手が所属するケイアイスター不動産株式会社は、経営課題として「ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)」の推進を掲げています。その一環として2019年4月に発足したのが「ケイアイチャレンジドアスリートチーム」です。
「日本一挑戦するアスリートチーム」を理念に掲げ、デフフットサル、デフサッカー、ろう者柔道などの競技に取り組むパラアスリートが在籍しています。
デュアルキャリア確立と社会貢献活動
同社におけるアスリート支援の特徴は、単なる競技資金の援助にとどまらない「デュアルキャリア(競技と業務の両立)」の確立にあります。
- 社内業務での活躍: アスリートとしてトレーニングを行いながら、社内研修の講師や商品開発などの業務に従事しています。
- 地域・社会への貢献: 従業員の健康増進を目指す「プロジェクトACE」のほか、自治体や教育機関と連携した「子ども向け障がい理解体験会」やパラスポーツ大会を開催しており、延べ5,000名以上への普及啓発活動を実施しています。
障害福祉・パラスポーツ・企業雇用の重要専門用語
記事の理解を深めるため、関連する主要な専門用語を身近な例えを用いて解説します。
デフリンピックとパラスポーツの違い
- デフリンピック(Deaflympics): 耳が聞こえない・聞こえにくい「ろう者(デフ)」のための国際総合スポーツ競技大会です。
- 例えで理解: パラリンピックが「さまざまな身体的障がいを持つ選手の大会」であるのに対し、デフリンピックは「手話や視覚的合図(ライトなど)を用いて競い合う、音のない世界のアスリートのオリンピック」といえます。
- デフサッカー / デフフットサル: 補聴器を外し、完全に音が聞こえない状態でプレイするサッカー・フットサルです。審判の笛の代わりにフラッグや光で合図が出されます。
DE&Iとデュアルキャリアの基本概念
- DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン):
- Diversity(多様性)、Equity(公平性)、Inclusion(包摂性)の頭文字をとった概念です。
- 例えで理解: 「多様な人々を一つの部屋に招く(多様性)」だけでなく、「背の高さに合わせた踏み台を用意し(公平性)」、「全員がパーティを楽しめる役割を与える(包摂性)」という一連の環境整備を指します。
- デュアルキャリア: アスリートとしての競技生活と、社会人としての職業キャリアを並行して築く生き方・働き方です。
企業が障害者アスリート雇用・パラスポーツ支援を導入する3ステップ

企業が障害者アスリートの採用や支援を開始し、組織の活性化につなげるための標準的なプロセスは以下の通りです。
【ステップ1:方針の明確化】
・自社の法的雇用枠とDE&I目標の確認
・アスリート雇用の目的(社内一体感、CSR、広報効果)の決定
▼
【ステップ2:採用・支援パートナーの選定】
・障害者アスリート専門の人材紹介会社やコンサルティング機関の活用
・業務内容およびトレーニング環境の調整
▼
【ステップ3:社内環境整備とデュアルキャリア設計】
・手話講習や障がい理解研修の実施
・競技活動と社内業務(広報・CSR・一般事務等)のバランス調整
ステップ1:自社の雇用課題とDE&I方針の明確化
企業経営における障害者雇用の目的を単なる「法定雇用の充足」から「組織価値の向上」へと再定義します。アスリートの挑戦する姿が社内にどのような影響を与えるかを定義することが重要です。
ステップ2:アスリート採用・支援パートナーの選定
アスリート専門の紹介機関や専門コンサルティング会社を活用し、選手の希望する競技環境と自社が提供できる業務内容とのマッチングを行います。
ステップ3:社内理解の促進と環境整備
コミュニケーションツールの導入(筆談アプリ、手話通訳ソフトの活用など)や、全社的なバリアフリー意識の醸成を図ります。ケイアイスター不動産のように体験会や講演活動を社内イベントとして組み込む手法が有効です。
Q&A(よくある質問)

Q1. デフアスリートを採用する際、社内コミュニケーションで配慮すべき点は何ですか?
A1. デフアスリート(ろう者)とのコミュニケーションでは、口の動きを読む「口話(こうわ)」、手話、筆談、チャットツールや音声認識アプリの活用が有効です。重要な伝達事項は視覚情報としてテキスト化する配慮が求められます。
Q2. 障害者アスリート雇用は中小企業でも実施可能ですか?
A2. 可能です。短時間勤務制度の活用や、専門人材紹介会社の助成金サポート・コンサルティングを利用することで、リソースが限られる企業であっても段階的に導入することができます。
Q3. アスリート雇用による定量的な企業メリットは何ですか?
A3. 法定雇用率の達成にとどまらず、インナーブランディング(社員のモチベーション向上・離職率低下)、CSR/ESG投資面での評価向上、メディア露出による広報効果などが挙げられます。
一般障害者雇用と障害者アスリート雇用の比較表
| 比較項目 | 一般障害者雇用 | 障害者アスリート雇用(デフアスリート等) |
|---|---|---|
| 主な業務内容 | 一般事務、データ入力、軽作業など | 社内業務(広報・CSR等)+競技活動 |
| 社内への波及効果 | 定常的な業務支援、多様性理解 | 応援を通じた一体感醸成、モチベーション向上 |
| 外部へのアピール | サステナビリティ報告書等への記載 | メディア露出、地域貢献・体験会によるブランド向上 |
| 必要な配慮・体制 | 職場環境のバリアフリー、業務調整 | 遠征・遠征費用の配慮、練習時間の確保 |
まとめ

令和8年度「大阪スポーツ大賞 優秀選手特別賞」を受賞した東海林香那選手・酒井藍莉選手の実績は、アスリート個人の努力のみならず、ケイアイスター不動産株式会社による適切なデュアルキャリア支援とDE&I推進の結実といえます。
障害者雇用やパラスポーツ支援は、企業の社会的責任(CSR)を果たすだけでなく、社員の一体感醸成や企業ブランド価値の向上をもたらす有効な施策です。自社の状況に応じた支援パートナーやコンサルティングサービスの導入を検討し、持続可能な障害者雇用体制の構築を進めることが推奨されます。

