オンライン診療・オンライン療育とは?地域格差と専門職不足の現状

近年、障害福祉分野において「オンライン診療」と「オンライン療育」が注目を集めています。オンライン診療とは、情報通信機器を用いて医師が患者の診察を行うことを指し、オンライン療育は、発達支援やリハビリテーションなどをオンラインで提供するものです。これらのオンライン支援は、特に専門職の不足や地域による支援の格差という長年の課題に対する解決策として期待されています。

現在の日本では、発達支援を必要とする多くの子どもたちが、十分な支援を受けられていない現状があります。ある調査によると、専門的な発達支援や療育に通っていない家庭が約7割に上り、そのうち約半数は「支援を希望しているにもかかわらず受けられていない」という「療育難民」の状態にあることが報告されています。療育難民とは、発達支援や療育を必要としているにもかかわらず、地理的・経済的・情報的などの理由で適切な支援を受けられない状態にある子どもやその家族を指す言葉です。

また、言語聴覚士(ST)と呼ばれる専門職の不足も深刻です。言語聴覚士は、ことばや聞こえ、飲み込みなどに課題を持つ人々の支援を行う専門家ですが、全国に存在する言語聴覚士のうち、子どもの療育に携わるのは約1割程度にとどまっています。このため、「近くに専門施設がない」「遠方まで通う必要がある」「海外在住のため日本語での支援が見つからない」といった声が多く聞かれ、専門的な支援を受けにくい状況が続いています。

専門家が語る!オンライン支援の「いま」と「未来」

このような状況を打破するため、一般社団法人ことばサポートネットは、オンライン診療およびオンライン療育の最新動向を学ぶオンラインセミナー「【専門家と考える】オンライン診療・オンライン療育の制度と実践例 〜医療保険・公費助成の今とこれから〜」を開催します。本セミナーは、日本言語聴覚士協会の後援を受けて行われ、医療・福祉・教育・行政の連携を通じて、地域に関係なく必要な支援を届けるための方策を考える機会となるでしょう。

海外では、オンライン診療や遠隔リハビリテーションの活用が進んでおり、言語聴覚療法、作業療法(OT)、理学療法(PT)、心理支援などがオンラインで提供される取り組みが広がっています。特に国土が広い国や専門職が都市部に集中する国では、「住んでいる場所によって受けられる支援に差があってはいけない」という考えのもと、オンラインを活用した支援体制の整備が進められています。

オンライン診療・オンライン療育の制度と実践例に関するセミナー告知

開催概要と申し込み方法

  • タイトル: 【専門家と考える】オンライン診療・オンライン療育の制度と実践例 〜医療保険・公費助成の今とこれから〜

  • 開催日時: 2026年10月4日(日) 10:00〜11:45

  • お申し込み: Peatix

登壇者紹介:医療・福祉の第一線で活躍する専門家

本トークセッションには、医療・福祉の第一線で活躍する2名の専門家が登壇します。

  • 石川 雅俊 様(医師・東京医療保健大学特任教授)
    1979年静岡県湖西市生まれ。筑波大学医学専門学群卒業後、KPMGヘルスケアジャパン株式会社に参画。国際医療福祉大学MBA准教授、厚生労働省医政局総務課課長補佐、ハーバード大学武見フェローなどを経て現職。まめクリニックグループ代表も務めるなど、多岐にわたる分野で活躍されています。

  • 橋本 咲子 様(発達支援テクノロジー推進協議会 主幹事 / PAPAMO株式会社 代表取締役)
    運動×テクノロジーによる発達支援サービス「へやすぽアシスト」を提供し、15万件以上の支援実績を誇ります。理学療法士・作業療法士のコーチが150名以上在籍し、オンラインでのマンツーマン支援を展開しています。

イベントプログラム:具体的なテーマと内容

トークセッションでは、オンライン療育とオンライン診療について、多角的な視点から議論が展開されます。プログラムの詳細は以下の通りです。

セミナープログラムの表

  • オンライン療育について(橋本様):オンライン療育のエビデンス、現状と課題など

  • オンラインリハビリテーション実践例の紹介

    • 言語聴覚士 池田あかね様:理学療法士と言語聴覚士、行政の連携による離島支援の実践例(成人)

    • 言語聴覚士 坂崎弘幸様:オンラインでの言語療法 吃音支援の実践例(小児)

    • 言語聴覚士 埜藤奈美:オンラインでの言語療法 構音障害支援の実践例(小児)

  • オンライン診療について(石川様):オンライン診療の現状、海外との比較、今後の課題など

  • まとめ、質疑応答、意見交換(石川様・橋本様):フロアからの質問や意見交換を含みます。

自治体独自の助成制度が拓くオンライン療育の可能性

オンライン療育は、住んでいる地域に関係なく専門的な支援につながる新たな道を開きます。しかし、現在のところオンライン療育の多くは自費で提供されており、経済的な理由から支援を継続できない家庭も少なくありません。

このような課題に対し、日本国内の一部自治体では、オンライン療育を独自の助成制度の対象とする取り組みが始まっています。公費助成(こうひじょせい)とは、国や地方公共団体が特定の目的のために費用の一部または全部を負担する制度のことです。これにより、地域や家庭の経済状況に左右されずに必要な支援を受けられる社会の実現に向けた新たな一歩として注目されています。

ことばサポートネットも、一部の自治体の助成制度を活用し、対象地域の方々へオンラインでの構音訓練を提供しており、制度活用の可能性を実感しているとのことです。

参加をおすすめする方々:課題解決へのヒントを見つける

本トークセッションは、以下のような方々に特におすすめです。

  • オンライン療育に興味がある医療従事者の方:制度面の不安を解消し、自施設での具体的な活用イメージを明確にできます。

  • 医療機関等の管理職の立場にあるPT/OT/STなどの方:他施設の運営モデルから、スタッフの働き方改革やサービス拡大のヒントが得られます。

  • PT/OT/STとの連携に関心がある医師・歯科医師・医療関係者の方:多職種連携による質の高いアプローチ方法を知り、患者満足度の向上につなげられます。

  • 都道府県士会等で療育の制度について考えていく立場にある方:政策立案や制度運用に不可欠な「公費負担」の先進事例を、今後の提言活動に活かせます。

  • 自治体の福祉・医療・子ども家庭部門の担当者の方:専門家不足への現実的な解決策を把握し、地域住民への新たな支援策として検討材料にできます。

まとめ:地域や経済状況に左右されない支援を目指して

地域格差や専門職不足といった課題が山積する障害福祉分野において、オンライン診療・オンライン療育は、これまで支援を受けることが難しかった子どもたちやその家族に新たな可能性を広げるでしょう。本トークセッションは、多様な立場の人々が一堂に会し、オンライン支援の「いま」と「未来」を共に考える貴重な機会です。

ご興味のある方は、ぜひこの機会にご参加いただき、子どもたちが住んでいる地域や経済状況に関係なく、必要な支援を受けられる社会の実現に向けて一緒に考えてみてはいかがでしょうか。

主催団体情報

一般社団法人ことばサポートネットは、ことばや発音に悩む子どもや家族が、地域や年齢にかかわらず言語聴覚士などの専門家につながることのできる社会を目指し、相談支援、啓発資料の制作、講座・イベントの開催などを行っています。

一般社団法人ことばサポートネットのロゴ

Written by

菅間 大樹

findgood編集長、株式会社Mind One代表取締役
雑誌制作会社、広告代理店、障害者専門人材サービス会社を経て独立。
ライター・編集者としての活動と並行し、就労移行支援事業所の立ち上げに関わり、管理者も務める。職場適応援助者(ジョブコーチ)養成研修修了。
著書に「経営者・人事担当者のための障害者雇用をはじめる前に読む本」(Amazon Kindle「人事・労務管理」「社会学」部門1位獲得)がある。
https://www.amazon.co.jp/dp/B0773TRZ77