障害福祉の現場から生まれたアートが、世界的なデニムブランド「リーバイス®」と融合し、新たなファッション体験として注目を集めています。本記事では、株式会社ヘラルボニーとリーバイス®のパートナーシップによって誕生したカスタマイズデニムの取り組みや、起用された3名の作家による作品背景、そして福祉とビジネスを繋ぐ重要キーワードについて解説します。
この記事で分かること
- ヘラルボニー×リーバイス®のコラボレーション背景とイベント概要
- 個性豊かな3名の契約作家(衣笠泰介氏・fuco:氏・marina氏)と作品の魅力
- 障害福祉の可能性を広げる「IPライセンス」と「ロイヤリティ」仕組みの解説
- カスタマイズデニムのオーダー方法・開催期間・価格などの実用情報
- 障害福祉とアートの共創に関するQ&A
障害福祉とファッションが織りなす「自分らしさ」の提案|ヘラルボニー×リーバイス®の特別コラボとは?
ブランド共通の価値観「自分らしさを表現する」
障害福祉領域において異彩を放つ作品を社会へ届ける「株式会社ヘラルボニー」が、世界初のアパレルジーンズを生み出した「リーバイス®」と初のパートナーシップを結びました。両社に共通する「自分らしさを表現する」という価値観のもと、障害のある作家のアートをあしらった特別なカスタマイズデニムの展開が決定しています。
150年以上の歴史を持つリーバイス®は、デニムを人々の個性や生き方を映し出すキャンバスと捉えており、一着のジーンズをパーソナライズして長く愛用してほしいという想いを持っています。一方でヘラルボニーは、「異彩を、放て。」をミッションに掲げ、障害のイメージ変容と福祉を起点とした新たな文化の創出を目指すクリエイティブカンパニーです。
この二つの想いが重なり合うことで、単なるファッションアイテムにとどまらない、作家の感性と着る人の個性が響き合うアートピースのような服が生み出されています。
ポップアップイベント「Levi’s® meets HERALBONY EXCLUSIVE TAILOR EXPERIENCE」の概要
本コラボレーションによるカスタマイズ商品は、京都の伝統的な蔵を活用したギャラリースペース「(ocue. kyoto(オクキョウト)」にて開催されるポップアップイベントで展開されます。
会場では、リーバイス®のカスタマイズステーション「The Levi’s® Tailor Shop」のテーラーが、ヘラルボニーの契約作家によるテキスタイルとデニムを組み合わせて仕立てを行います。
- 開催期間:2026年10月9日(金)~10月24日(土)
- 営業時間:12:00~19:00(オーダー最終受付18:30)
- 会場:(ocue. kyoto(京都府京都市中京区骨屋之町558)
- 展開アイテム:トラッカージャケット、ローガンシャケット、スカート、ジーンズなど全12型のベース商品
- 価格帯:税込20,900円~(ベース商品およびカスタマイズ費用を含む)
- お届け時期:2027年1月以降順次発送(オーダー受付より約3か月目安、全国配送料無料)
会場2階では作家の原画展示も行われるため、アート作品の質感や世界観を身近に感じながら自分だけの一着を選ぶ体験が可能です。
「異彩」を放つ3名の障害のある作家とアート作品の背景
今回のプロジェクトでは、ヘラルボニー契約作家である3名のアートワークが起用されています。それぞれの作家が歩んできたストーリーと作品の特色をご紹介します。
衣笠泰介氏:光と色彩溢れる独自の世界観
京都府在住の衣笠泰介(Taisuke Kinugasa)氏は、「生きることは描くこと」を体現する作家です。家族と世界各地を旅するなかで出会った景色を、瞬時に選ばれる何百色もの絵の具によって、圧倒的な光と色彩感覚で表現します。
その作品は国内外で高い評価を受けており、京都上御霊神社や京都御所内白雲神社には大作絵馬が奉納されている実績もあります。本イベントでは『祇園祭だ、京都に行こう!』や『清水寺』などの作品が起用され、トラッカージャケットの裏地やスカートのパッチワークなどに彩りを与えています。
fuco:氏:マル・サンカク・シカクがつむぐ表現
佐賀県在住のfuco:氏は、学校に通うことが難しかった時期に、母親から「マルを描いて」と紙とペンを渡されたことをきっかけに創作活動を開始しました。マルというモチーフに没頭してから5年が経ち、現在ではサンカクやシカクといった幾何学的なモチーフも織り交ぜて描き続けています。
言葉のやりとりはわずかですが、頭に浮かぶ言葉を繰り返し呟きながら作品が生まれることもあります。今回のコラボでは『ドチラカラデモ』や『ウゴケ!サンカク』などの作品が採用され、シャケットの裾ドッキングやパンツの裾アートとして仕立てられています。
marina氏:古代碑文のような独自の文字タイポグラフィ
東京都在住のmarina氏は、12歳から創作活動を続けており、ノートへびっしりと描き連ねる独自の「文字のようなもの」に強い情熱を注いでいます。
その流れるような筆跡は、古代の碑文や未来の言語、宇宙の暗号を思わせ、見る人の想像力によって多様な物語を紡ぎ出します。本企画では『colorful brush1-mm2025』などの作品が、マキシドレスのヨーク(切り替え部分)やベルトの付け替え要素として反映されています。
知っておきたい障害福祉とアートビジネスの重要キーワード解説
障害福祉と民間企業の共創を深く理解するために、記事内で押さえておきたい専門用語を解説します。
「IPライセンス」とは?持続可能な福祉ビジネスの仕組み
- 【用語解説:IPライセンス】 「IP(Intellectual Property=知的財産)」の権利を、第三者が一定の条件のもとで使用できるように許諾する仕組みのことです。
株式会社ヘラルボニーでは、障害のある作家が描いた2,000点以上のアート作品をIPライセンスとして管理しています。アートを単なる寄付やボランティアの対象として扱うのではなく、企業製品のデザインや空間装飾などのライセンス事業として運用することで、福祉を起点とした持続可能なビジネスモデルを確立しています。
正当な「ロイヤリティ」還元がもたらす社会的自立とイメージ変容
- 【用語解説:ロイヤリティ】 特許権や著作権などの知的財産権を使用する対価として、使用者が権利者に支払うライセンス料(使用料)のことです。
ヘラルボニーでは、企業とのライセンス契約を通じて得られた対価から、作家に対して正当なロイヤリティを支払っています。これにより、障害のある作家が自身のクリエイティビティによって経済的対価を得る仕組みが構築され、社会的自立や働き方の選択肢拡大につながると期待されています。
また、単なる福祉的支援(支援される側)という固定観念を脱し、社会に価値を提供する「対等なクリエイター」としてのイメージ変容を促す重要なアプローチとなっています。
「セミオーダー」「テキスタイル」の補足解説
- 【用語解説:テキスタイル】 織物や布地、柄模様が施された生地全般を指します。
- 【用語解説:セミオーダー】 ゼロから型紙を作るフルオーダーとは異なり、あらかじめ用意されたベース型やデザイン要素の中から好みの組み合わせを選んで注文する形式です。今回のイベントでも、12型のベースウェアと8種のアートテキスタイルから選ぶスタイルが採用されています。
【Q&A】

読者が抱きやすい疑問について、Q&A形式で整理しました。
Q1:ヘラルボニーの取り組みは、従来の障害福祉サービスと何が違うのですか?
A1:従来の障害福祉における作業所製品などは、バザーや支援目的で購入されるケースが多く見られました。ヘラルボニーは「福祉」という枠組みにとらわれず、アートの価値そのものを軸としたクリエイティブカンパニーとして活動しています。作家のアートをIPライセンス化し、グローバルブランドとの共創などを通じて正当な対価を循環させることで、商業的にも評価される新しい福祉の姿を提示しています。
Q2:今回のカスタマイズデニムは、ヘラルボニーの店舗や通販でも購入できますか?
A2:いいえ、今回のイベント開催および商品の受付・販売はすべてリーバイス®が実施します。ヘラルボニーの常設店舗や公式オンラインストアでの販売は行われないため、京都の(ocue. kyotoで開催されるポップアップ会場にてオーダーする必要があります。
Q3:消費者がこのようなコラボ商品を購入することは、障害福祉にどう寄与しますか?
A3:商品の購入やイベントへの参加を通じてIPライセンス事業が循環することで、作家へ正当なロイヤリティが支払われる仕組みを支えることになります。また、アートを着て街を歩くこと自体が「障害に対する社会の認知やイメージの変容」を促し、多様性を認め合う社会づくりへの参画につながると考えられています。
まとめ|障害福祉の新しい可能性を身にまとう体験から

ヘラルボニーとリーバイス®によるパートナーシップは、単なる衣料品のカスタマイズにとどまらず、障害のある作家の個性や「異彩」を社会へ発信する象徴的な取り組みです。
150年以上の歴史を持つデニムブランドと、福祉を起点に新たな文化を創出するクリエイティブカンパニーが融合することで、「自分らしさを表現する」という普遍的な価値が形作られています。
「障害福祉」というテーマに対して難しさや距離感を感じていた方も、アートやファッションという日常の選択肢を通じて触れ合うことで、意識や見方が変わるきっかけになるかもしれません。

