この記事で分かること

  • ワーク・ダイバーシティ(包摂的就労)の基本概念と障害福祉における重要性
  • 「就労困難者」の定義と、ひきこもり・難病者など多様な働きづらさを巡る現状
  • 岐阜地域18社とNPOが手動した施策検討会から国(野田聖子衆議院議員)への提言内容
  • 企業が直面する雇用の現実的課題と、社会全体で受け止めるための具体的アプローチ
  • 読者から寄せられるワーク・ダイバーシティに関するよくある質問(Q&A)

近年、従来の障害者雇用の枠組みを超えて、多様な事情で働きづらさを抱える人々を社会全体で受け入れる「ワーク・ダイバーシティ(包摂的就労)」の取り組みが大きな注目を集めています。

本記事では、一般社団法人サステイナブル・サポートと岐阜の地域企業が主導し、国へと届けられた最新の「雇用施策提言書」の動向を軸に、ワーク・ダイバーシティの基礎知識や現場のリアルな課題、今後の展望を解説します。


ワーク・ダイバーシティ(包摂的就労)とは?障害福祉で注目の理由と基礎知識

現在、障害福祉や労働政策の分野において「ワーク・ダイバーシティ」や「包摂的就労(ほうせつてきしゅうろう)」という言葉が急速に浸透しつつあります。

「就労困難者」とは誰を指す?制度における定義と対象者

従来の雇用施策では、主に身体・知的・精神の「障害者手帳」を所持している方が雇用の主な支援対象となっていました。しかし、現実の社会には手帳の有無にかかわらず、働くうえで様々な課題や制約を抱えている人々が存在します。

ワーク・ダイバーシティの文脈では、以下のような多種多様な背景を持つ方々を含めて「働きづらさを抱える人(就労困難者)」として捉える動きが進んでいます。

  • 障害のある方(身体障害・知的障害・精神障害・発達障害・高次脳機能障害など)
  • ひきこもり状態にある方・経験者
  • がんサバイバー・治療と仕事の両立を目指す方
  • 難病を抱えている方
  • 刑余者(刑務所出所者等)
  • その他、育児や介護、貧困などにより就労に困難を抱える方

このように、制度の隙間になりやすい人々を含め、個々の事情に応じた多様な働き方を認め、就労機会を確保しようとする考え方が基盤となっています。

障害者雇用とワーク・ダイバーシティの違い・専門用語解説

読者の方々から多く寄せられる専門用語について、分かりやすく整理・解説します。

  • ダイバーシティ(Diversity) 本来は「多様性」を意味する言葉です。性別、年齢、国籍、障害の有無、価値観などの違いを尊重し、活かしていく考え方を指します。
  • インクルージョン / 包摂(Inclusion) 「包み込むこと」「一体性」を意味します。特定の個性を排除せず、社会や組織の構成員として互いに認め合い、受け入れる状態を示します。
  • ワーク・ダイバーシティ(包摂的就労) 多様な働きづらさを抱える人々を排除せず、それぞれの能力や事情に応じた働く場や環境を提供し、共に社会に参加できる構造をつくる取り組みのことです。

従来の障害者雇用が主に「法定雇用率の達成」や「手帳に基づく枠組み」を中心に発展してきたのに対し、ワーク・ダイバーシティは「事情や手帳の有無を問わず、多様な人々が共に活躍できる労働環境の創出」を目指す、より包括的な概念と言えます。


岐阜から国へ!超党派議員連盟への提言書提出と障害福祉施策の動向

制度の変革や先進的なモデルケースは、自治体や地域の現場から生まれる事例が増加しています。ここでは、岐阜県で展開されている具体的なプロジェクトと、それが国政へ波及した最新動向を紹介します。

一般社団法人サステイナブル・サポートと地域企業18社の取り組み

岐阜県で就労支援や伴走型支援を行う一般社団法人サステイナブル・サポートは、2026年9月27日(日)に岐阜市にて「第4回 雇用施策検討会」を開催しました。

この会議は、2024年11月にスタートした「岐阜市WORK! DIVERSITY実証化モデル事業」の一環として実施されたものです。地域の上場企業を含む18社の経営者層や担当者が参加し、現場の課題や実効性のある雇用施策についての議論が重ねられてきました。

【雇用施策検討会に参画した地域企業(一部・順不同)】

  • サンメッセ株式会社
  • 株式会社リーピー
  • カンダまちおこし株式会社
  • 株式会社OKB総研
  • セイノーホールディングス株式会社
  • 太平洋工業株式会社 ほか(全18社)

地域に根ざした企業とNPO(支援団体)が対話を重ね、単なる理念論にとどまらない現実的な施策を模索してきた点が大きな特徴です。

野田聖子衆議院議員へ手交された提言書の内容と国政の動き

第4回雇用施策検討会では、これまでの企業の議論や現場の声を「提言書」として取りまとめ、超党派包摂的就労(ワーク・ダイバーシティ)促進議員連盟の代表を務める野田聖子衆議院議員へ手交されました。

この「超党派包摂的就労促進議員連盟」は、2025年3月に日本財団から出された提言を受け、同年11月に発足した議員連盟です。多様な事情で働きづらさを抱える人々の就労支援に向け、政策のあり方が国会レベルでも議論されています。

提言書の手交後に行われた意見交換において、参加企業(株式会社リーピー代表・川口聡氏等)からの「企業が地域でできることは何か」という問いかけに対し、野田聖子議員からは「岐阜からの積極的な発信に対する感謝」とともに、次のような期待が語られました。

「『就労困難者』という言葉に代わる、一般の人々にも受け入れられやすい、より親しみやすい呼称についても、ぜひ地域の現場からご提案いただきたい」

国政と地域現場が直接連携し、呼称や制度設計を含めた検討が進められていることは、今後の障害福祉・雇用施策における注目すべき動きと考えられます。


企業が直面する障害福祉・就労支援の現実的課題と解決へのアプローチ

地域企業が積み重ねてきた議論の中からは、雇用の現場における厳しくもリアルな課題が浮かび上がっています。

「誰かが支える」から「ともに働く仲間」への意識改革

就労支援や障害者雇用においては、ともすれば「福祉的観点から支援する」「誰かが支えてあげる」という一方的な構図になりがちでした。

しかし、今回の検討会で共有されたのは、「支援する・される」の関係を超え、働きづらさのある人を「社会で受け止め、ともに働く仲間となる」という視点の重要性です。そのためには、きれいごとや理想論だけではなく、以下のような具体的・現実的な仕組みづくりが必要不可欠であると指摘されています。

  1. 業務の再切り出しと環境調整 個人の得意・不得意や体調の波に応じた短時間勤務、リモートワーク、明確なマニュアル化などの工夫。
  2. 相談・支援体制の継続(伴走支援) 医療・福祉機関と企業が連携し、入社後も本人と企業の双方をサポートする仕組み。
  3. 社内理解と文化の醸成 「特別扱い」ではなく、「お互いの違いを認識した上で協力する」職場環境の整備。

行政、企業、医療・福祉機関、そして地域社会が一体となって連携することが、持続可能な雇用を実現する鍵となります。


よくある質問(Q&A)

読者の皆様からよく寄せられる疑問について、Q&A形式でお答えします。

Q1: ワーク・ダイバーシティと従来の障害者雇用の違いは何ですか?

A1: 従来の障害者雇用は、主に障害者手帳を所持している方を対象とし、法定雇用率の達成等を目指す制度的枠組みが中心でした。一方、ワーク・ダイバーシティ(包摂的就労)は、手帳の有無を問わず、難病、ひきこもり、がんサバイバーなど「様々な理由で働くことに困難を感じているすべての人」を対象とし、多様な働き方を社会全体で認めていこうとする広義の取り組みです。

Q2: 企業がワーク・ダイバーシティに取り組むメリットは何ですか?

A2: 人手不足が深刻化する中、従来の採用基準では出会えなかった優秀な人材や意欲ある働き手を確保できる点が挙げられます。また、多様な背景を持つ人材を受け入れる過程で、業務の効率化やマニュアル化が進み、結果として既存社員にとっても働きやすい職場環境が整う(エンゲージメント向上やダイバーシティ推進につながる)という副次的な効果も期待できます。

Q3: 地域の企業や福祉事業所がまず取り組める第一歩は何ですか?

A3: 地域の支援機関(就労移行支援事業所やサポステ等)や行政、近隣企業との情報交換・対話の場に参加することをお勧めします。岐阜の事例のように、一社単独で悩むのではなく、地域全体で課題を共有し、小さなトライアル雇用や業務切り出しから始めることが効果的です。


まとめ:障害福祉とワーク・ダイバーシティがひらく誰もが働きやすい社会の未来

本記事では、岐阜県で取り組まれている「WORK! DIVERSITY実証化モデル事業」と、超党派議員連盟への提言書提出の動きを中心に、ワーク・ダイバーシティ(包摂的就労)の最新動向を解説しました。

  • ワーク・ダイバーシティは、障害者手帳の有無を超えて、多様な働きづらさを抱える人を包括的に支える仕組みである。
  • 岐阜の地域企業18社とNPO(サステイナブル・サポート)が提言書をまとめ、野田聖子衆議院議員を通じて国政へリアルな現場の声を届けた。
  • 「支える」という福祉的発想から「ともに働く仲間」として社会で受け止めるための現実的な環境整備が求められている。

人口減少や社会構造の変化が進む日本において、誰もが「働く」ことを通じて自分らしい生活を築ける社会の実現は、喫緊の課題と言えます。障害福祉に関わる方々や企業の採用・人事担当者様にとっても、ワーク・ダイバーシティの視点を取り入れた新たな取り組みへの関心と実践が今後より一層期待されます。


Written by

菅間 大樹

findgood編集長、株式会社Mind One代表取締役
雑誌制作会社、広告代理店、障害者専門人材サービス会社を経て独立。
ライター・編集者としての活動と並行し、就労移行支援事業所の立ち上げに関わり、管理者も務める。職場適応援助者(ジョブコーチ)養成研修修了。
著書に「経営者・人事担当者のための障害者雇用をはじめる前に読む本」(Amazon Kindle「人事・労務管理」「社会学」部門1位獲得)がある。
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