指定難病「重症筋無力症」とは?その症状と患者が直面する課題
「重症筋無力症(Myasthenia Gravis:MG)」は、国の指定難病の一つです。
指定難病とは?
国が定めた特定の疾患で、治療法が確立されておらず、長期的な療養が必要な病気のことを指します。医療費助成の対象となる場合があります。
この病気は、免疫の異常により脳からの命令が筋肉へうまく伝わらなくなることで、全身の筋力低下や筋肉の疲れやすさを引き起こします。症状は多岐にわたり、患者の日常生活に大きな影響を与えます。
具体的には、以下のような症状が見られます。
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まぶたが下がる(眼瞼下垂)
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物が二重に見える(複視)
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手足が上がらない
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声が出しづらい、呂律が回らない(構音障害)
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飲み込みにくい
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呼吸が苦しい
眼瞼下垂(がんけんかすい)とは?
まぶたが十分に上がらず、瞳孔の一部または全体が隠れてしまう状態です。
複視(ふくし)とは?
一つの物が二つに見える症状です。
構音障害(こうおんしょうがい)とは?
言葉を話す際に、発音や滑舌が悪くなる症状です。
MGの症状は、時間帯や日によって変動し、個人差も大きいという特徴があります。外見からはその困難が見えにくいため、診断までに長い時間を要したり、周囲から理解されにくいといった課題も抱えています。
患者の「リアルな声」を医療・研究へ:「かけはし基金」設立の背景
近年、重症筋無力症の治療は目覚ましい進歩を遂げています。しかし、その一方で、診断に至るまでの過程や、症状の変動が日常生活、就労、社会参加に与える影響については、十分に可視化されているとは言えない現状があります。
特に、診断までに長い期間を要した患者や、一般的な検査では異常が見つかりにくい「抗体陰性例」などは、医療や社会制度の中で見落とされやすい傾向にあります。患者は身体的な苦痛に加え、「理解されにくさ」という二重の困難に直面することが少なくありません。
「一般財団法人重症筋無力症かけはし基金」の理事を務める上里由希子氏は、内科医として医療に携わる傍ら、自身も長期間MGの症状を抱え、診断や治療の遅れ、症状の変動に伴う生活上の困難を経験してきました。医師でありながら、自身の症状が既存の検査や医学的な枠組みだけでは十分に説明できないという経験を通じて、患者の困難がいかに医療や社会の中で見落とされうるかを当事者として深く実感したといいます。
このような当事者としての経験と、医療・研究・支援に関わる人々の問題意識が、「重症筋無力症かけはし基金」設立の原点となっています。
財団の活動は、法務・会計分野の専門家からのプロボノ(専門家による無償支援)によるサポートに加え、脳神経内科学、看護学、理学療法学、患者学など、各分野の第一線で活躍する専門家が評議員として参画しており、多様な専門的視点に支えられています。
患者報告アウトカム(PRO)と患者・市民参画(PPI)の重要性
近年、医療や研究の分野では、患者自身の声や経験を重視する動きが広がっています。
患者報告アウトカム(PRO:Patient-Reported Outcome)とは?
検査データや医療者による評価だけでなく、患者自身が感じている症状、日常生活への影響、治療による変化や実感など、患者本人からの報告を通じて得られる健康状態や生活の質に関する情報のことです。治療効果や患者にとって価値のある変化を理解するための重要な指標として活用されています。
例えば、「薬により頭や首が軽くなった」「以前は歩けなかった距離を休まず歩くことができるようになった」といった変化は、患者本人が日々の生活の中で気づく情報であり、PROとして非常に価値があります。
患者・市民参画(PPI:Patient and Public Involvement)とは?
患者や市民が、研究の計画、実施、発信の過程に積極的に関わる取り組みです。患者は単なる「研究される対象」としてではなく、研究者や医療者とともに、どのような研究を行うべきか、どのように進めるか、その成果をどのように社会へ届けるかを共に考える役割を担います。
症状の波の中で日常生活をどのように工夫しているのか、治療の効果をどのような場面で実感しているのかといった患者の経験は、研究者だけでは気づきにくい新たな視点をもたらすことがあります。患者が研究の初期段階から関わることで、研究が当事者にとってより身近で役立つものになることが期待されています。
「重症筋無力症かけはし基金」は、これらの考え方を大切にしながら、患者の経験を医療者や研究者と共有し、患者の声や経験から得られる知見を社会に広く発信し、医療や研究へとつなげていくことを目指しています。
「かけはし基金」が取り組む主な事業内容
「重症筋無力症かけはし基金」は、患者の経験を可視化し、次世代の医療者・研究者を支援し、疾患啓発を行うことで、重症筋無力症を取り巻く課題の解決を目指しています。
1. 患者の経験を記録し、可視化する「ペイシェントジャーニー」

MG患者が、発症から診断に至るまでの経緯、治療の経験、日常生活における就労・学業への影響、家族との関わりや社会参加について、どのような経験を重ねてきたのかを記録し、整理する取り組みです。財団は、アンケートやインタビューを通じて一人ひとりの歩みを“ペイシェントジャーニー”としてまとめ上げていきます。
ペイシェントジャーニーとは?
患者が病気を発症してから診断、治療、そしてその後の生活に至るまでの道のりや経験を時間軸に沿って可視化したものです。患者がどのような感情を抱き、どのような困難に直面し、どのようなサポートを必要としているかを理解するために用いられます。
特に、診断までに長い時間を要したケースや抗体陰性例、難治例など、これまで十分に語られる機会が少なく、孤立を感じやすい経験にも耳を傾ける方針です。患者の語りや生活上の課題については、ウェブサイトでの公開や書籍化、研究への活用などを通じて、広く社会へ発信していく予定です。
2. 次世代の担い手への支援「重症筋無力症かけはし賞」
医学的には「疲労」と表現される症状であっても、患者が実際に経験する症状の表れ方は「体が重い」「集中力が続かない」「常に眠気がある」「動き出すのが億劫」「何もする気が起こらない」など、実に多様です。
財団は、こうした多彩で複雑な症状を実際に経験している患者の視点から、MGの症状に深い理解をもって診療や研究に取り組んでいるキャリア初期の医療者・研究者を顕彰します。未解明な部分が多いMGにおいて、患者が言葉にしづらい症状や、既存の指標だけでは捉えきれない経験を理解しようとする姿勢にも敬意を表したいと考えています。
患者からの感謝を込めて、MGの診療や研究を担う次世代の医療者・研究者を応援するこの賞は、医療の未来を担う人材の育成にも貢献するでしょう。
3. 疾患啓発・情報発信
MGを取り巻く課題について、患者や家族だけでなく、医療者、研究者、そして広く社会に知ってもらうため、財団は啓発活動や情報発信に力を入れます。設立の第一歩として実施したクラウドファンディングでは、多くの方々からの支援とともに、MGという疾患や患者を取り巻く課題への関心の広がりを実感する機会となりました。
今後も、患者の経験や重症筋無力症に関する情報をわかりやすく発信し、患者・医療者・研究者・社会をつなぐ架け橋となることを目指しています。
難病患者の声を社会へ届ける「かけはし基金」への期待と連携

「一般財団法人重症筋無力症かけはし基金」は、その活動にご賛同いただける患者当事者やご家族をはじめ、医療従事者、研究者、企業・団体など、多様な方々との連携を積極的に進めていく方針です。
重症筋無力症の患者の声を社会へ届け、医療や研究、啓発活動へとつなげる財団の活動に関心をお持ちの方は、ぜひお問い合わせしてみてはいかがでしょうか。
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公式サイト: https://mgkikin.jp
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お問い合わせ先: info@mgkikin.jp
「かけはし基金」の本格始動は、指定難病の患者が直面する課題に対し、当事者の視点から具体的な解決策を模索し、社会全体で支え合うための重要な一歩となるでしょう。このような取り組みが、他の難病や障害を持つ方々の支援にも広がり、よりインクルーシブな社会の実現につながることが期待されます。
