不登校児童生徒は過去最多を更新:支援が届かない「構造的なズレ」とは?
不登校児童生徒数の増加は、現代社会が抱える大きな課題の一つです。多くの大人が「頑張れば乗り越えられる」といった価値観を持つ一方で、不登校の当事者やその保護者からは共感の声が多く寄せられることがあります。この意見の相違は、社会に根強く残る「価値観のズレ」の表れとも考えられます。
鰐渕遊太氏は、この「ズレ」こそが、社会の善意が子どもたちに届かない理由であると分析しています。支援が届かない原因は一つではなく、複数の要因が連鎖的に作用し、誰も悪意を持っていないにもかかわらず、子どもたちを追い詰める構造が生まれていると指摘しています。

不登校支援に潜む4つの「ズレ」を公認心理師が解説
鰐渕氏は、支援が届かない構造的な理由として、以下の4つの「ズレ」を挙げています。
ズレ1:子どものニーズと運営の論理が食い違っている
フリースクールなどの「居場所」は、子どもの多様なニーズに応えることを目指しますが、運営側は保護者のニーズや経済的な側面も考慮しなければなりません。この三者のニーズを同時に満たす設計が十分に確立されていないため、子どものための居場所が、結果的に子どもから遠ざかってしまうことがあります。
ズレ2:「せめてこれくらいは」という言葉が家庭を安心できない場所に変える
不登校の子どもを持つ保護者の約5人に1人が離職・休職を経験しており、その70.1%が「子どものサポートのため」という調査結果があります(NPO法人キーデザイン、2024年調査)。親の愛情から出る「せめてこれくらいは」という言葉や期待が、家庭という最後の安全地帯を、子どもにとって安心できない場所に変えてしまう可能性があると指摘しています。

ズレ3:経済格差が「居場所」へのアクセスを阻害する
フリースクールの月額費用は平均約45,000円とされ、保護者の約6割が「家計への負担感がある」と感じています(東京都教育委員会、2024年調査)。これにより、居場所へのアクセスが家庭の経済力や居住地によって左右される状況が生まれており、不登校による親の離職がさらにこの格差を広げる要因となっています。
ズレ4:「集団でなければ社会性は育たない」という思い込みが子どもを追い詰める
社会性を育むのは、集団の規模だけではありません。「この人といると安心だ」という感覚の積み重ねが重要であり、安心感が社会性の基盤となると考えられます。集団での経験はその後に続くものであり、この順番を誤ることが子どもたちを追い詰める原因となることがあります。

これらの4つのズレの根底には、「子どもを変えようとすること」という共通の考え方があると鰐渕氏は分析します。子どもを変えるのではなく、大人が見方を変えることで、子どもたちの状況も変化する可能性があると提言しています。

「アンペアの足りない世界」シリーズ:不登校の新しい理解と親子の関わり方
鰐渕遊太氏の「アンペアの足りない世界」シリーズは、不登校の子どもたちとその家族、そして支援に関わる大人たちに新たな視点を提供します。
第1弾:心のブレーカーが落ちた状態としての不登校
2026年1月23日に発売された第1弾『アンペアの足りない世界で生きている子どもたち』では、不登校を心のブレーカーが落ちた状態として捉え、何が起きているのかを分析します。読者からは「子どもへの申し訳なさと、これからへの希望が同時にやってきた」といった声が寄せられています。

第2弾:子どもの変化を促す大人の関わり方
2026年3月20日に発売された第2弾『アンペアの足りない世界で生きてきた元子どもたち』では、子どもの問題が子ども自身の中にあるのではなく、大人との関係性の中にあると解説。信州大学医学部教授で児童精神科医の本田秀夫氏からは、「子どもに関わるすべての大人に気づいてほしい大事な視点! 心のブレイクダウンを防ぐための必読書です」と推薦されています。

第3弾:安心が先、勉強は後というメッセージ
そして、2026年6月1日に発売された第3弾『アンペアの足りない世界 ―ボタンの掛け違いを科学する―』では、「安心が先。勉強は後。」というメッセージを伝えています。子どものために一生懸命関わっているにもかかわらず、距離が遠ざかってしまうと感じる親や大人に向けて、本来知っていたはずの「順番」を思い出すための一冊です。精神科医さわ氏(医療法人霜月之会 理事長)も、「子育てはこれに尽きる!勉強はいつからでもやり直せる。遊びは取り返しがつかない。 すべての親に知っておいてほしいことが書かれている一冊です」と推薦しています。
これらの書籍は、Amazon Kindleにて購入が可能です。興味のある方はぜひ手に取ってみてください。
著者プロフィール:鰐渕遊太氏の多角的な視点
著者である鰐渕遊太氏は、公認心理師、特別支援教育士S.E.N.S.として、多岐にわたる現場で活動しています。公立小学校での10年間の教員経験に加え、不登校特例校や特別支援学級での経験も持ちます。現在は東京都内で約180名の子どもたちの居場所を運営する傍ら、教育相談スーパーバイザー、行政との協働、大学での教育心理学・教育相談の講義など、学校の内側と外側の両方から教育現場に関わっています。この20年間の幅広い経験が、今回の書籍シリーズの根拠となっています。
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公認心理師:心理に関する支援を要する者に対し、その心理状態を観察・分析し、相談に応じ、助言、指導、その他の援助を行う専門職。
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特別支援教育士S.E.N.S:特別支援教育に関する専門的な知識と技能を持つことを認定された専門職。
不登校支援を考えるシンポジウム開催:専門家が語る「あなたのせいじゃない。」
不登校問題の理解を深めるため、関連イベントとしてシンポジウム「それ、あなたのせいじゃない。」が2026年6月27日(土)に開催されます。このシンポジウムには、本田秀夫氏、精神科医さわ氏、森村美和子氏、そして鰐渕遊太氏の4名が登壇し、不登校に悩む子どもや保護者、支援者に向けて、多角的な視点から問題提起と解決策を議論する予定です。
不登校支援に関する情報発信と相談窓口
特定非営利活動法人アソビノマドでは、不登校支援に関する情報発信や相談を受け付けています。不登校で悩むご家族や支援者の方は、以下のウェブサイトから詳細を確認し、問い合わせを検討されてはいかがでしょうか。
不登校の子どもたちが増加する現代において、彼らが抱える困難や、支援が届かない背景にある構造的な問題への理解を深めることは、社会全体で取り組むべき課題です。鰐渕遊太氏の書籍シリーズや関連イベントは、この課題に対する新たな視点と具体的なヒントを提供してくれるでしょう。

