不登校の子どもを地域で支える新たな動き:山口県美祢市とキズキの連携

全国的に不登校の子どもの数が増加し、その孤立が社会的な課題となる中、山口県美祢市で希望の光となる調査結果が発表されました。不登校傾向にある子どもたちを対象とした実態調査で、なんと10人に1人(10%)が「地域の人」を信頼できる相談相手として挙げていることが明らかになったのです。このデータは、美祢市が長年培ってきた地域共助の力が、子どもたちのセーフティーネットとして機能していることを示しています。

この貴重な調査結果を「調査して終わり」にせず、具体的な支援へと繋げるため、不登校支援を行う株式会社キズキが美祢市の「まち・ひと・しごと創生推進事業」に企業版ふるさと納税として300万円を寄付しました。これは、エビデンスに基づき現場を動かす官民連携の新たなモデルとして、全国の自治体や支援機関から注目を集めています。

不登校の子どもを支える「地域の絆」:山口県美祢市が示す新たな可能性

一般的に、不登校傾向の子どもたちは学校や家庭の外に相談相手を見つけにくいとされています。孤立が長期化するほど社会復帰への道は遠のき、その傾向は全国的に深刻です。しかし、美祢市の調査結果は、この一般的な傾向とは異なる実態を浮き彫りにしました。

美祢市の子どもたちの10%が「地域の人」を頼れる存在として挙げたことは、地域住民が子どもたちの困難を受け止める「見えない支援インフラ」として機能していることを示唆しています。これは、美祢市が地域で育んできた地縁や人と人との結びつきが、いかに子どもたちの心の支えになっているかを数値で証明するものです。

株式会社キズキの代表である安田祐輔氏は、「美祢の先生方や地域の方々が子どもたちを支えていることは、データで見ても本当にすごいこと。この温かさを、もっと多くの子どもに届けられる仕組みにしたい」と語っています。

調査で終わりではない、現場へ還元するキズキの「企業版ふるさと納税」

キズキは2025年度に美祢市から委託を受け、不登校の実態調査を実施しました。その結果を政策提言としてまとめるだけでなく、自社の資金を寄付として拠出し、支援の現場へ直接還元するという画期的な判断を下しました。この寄付金は、市が運営する公設塾「mineto(みねと)」での学習支援や、子どもたちの居場所づくりに充当される予定です。

2026年3月13日に美祢市役所で行われた贈呈式では、キズキ代表の安田氏と篠田洋司市長が対談。行政と民間それぞれの「限界と可能性」について率直な意見交換が行われました。

官民連携が拓く不登校支援の未来:美祢市とキズキが語る「限界と可能性」

篠田洋司市長は、「公共は公平性を重んじるあまり、一歩踏み込んだ支援が難しい局面がある。キズキさんのような専門的な知見と熱意を持つ民間と連携することで、子どもたちの可能性をさらに広げていきたい」と、官民連携の重要性を強調しました。

一方、株式会社キズキ代表の安田祐輔氏は、「私たちは、他の誰かが解決できる課題には向かいません。誰もが敬遠するが、社会にとって不可欠な根深い課題にこそ、私たちのノウハウをぶつけたい。誰もが学び直し、再び社会の支え手になれる循環を、美祢市と共に作っていきたい」と、同社のビジョンと連携への意欲を語りました。

今回の取り組みは、「調査で実態を可視化する→データに基づき課題を特定する→民間が専門性を持ち込み、行政と共に現場を動かす」という明確な構造を示しています。自治体単独では踏み込めない領域に民間が伴走者として加わるこの枠組みは、教育や福祉の課題に直面する全国の自治体に応用可能なモデルとして期待されます。



「何度でもやり直せる社会をつくる」株式会社キズキの多角的な支援活動

株式会社キズキは「何度でもやり直せる社会をつくる」をビジョンに掲げ、学習・就労・公民連携の三軸で事業を展開しています。その支援対象は、不登校やひきこもり、生活困窮、うつ、発達障害といった困難を抱える人々にとどまりません。少年院出院者や刑務所出所者、外国にルーツを持つ人々まで、社会の中で「やり直しの機会」を必要とするすべての人々に対し、多岐にわたる支援を提供しています。

  • 公民連携事業:全国の自治体や国と連携し、貧困家庭やひとり親家庭の子どもへの学習・生活支援、少年院出院者への学習支援、若者やひきこもり状態にある方の相談支援など、官民協働事業を幅広く実施しています。
  • 学習支援事業:不登校やうつなどを経験した方の学び直しを支援する完全個別指導塾「キズキ共育塾」、家庭教師「キズキプロ家庭教師」、通信制高校サポート校「キズキ高等学院」、ウェブメディア「不登校オンライン」を運営しています。
  • 就労支援事業:うつや発達障害などによって離職した方の再就職・自立をサポートする就労移行支援事業所「キズキビジネスカレッジ」、障害者人材紹介サービス「キズキキャリア」を運営し、働くことへの再挑戦を支援しています。




全国の自治体へ広がるか?美祢市とキズキが描く社会課題解決モデル

美祢市とキズキの連携は、不登校支援にとどまらず、社会全体の教育・福祉課題解決に向けた新たな一歩となるでしょう。地域の温かさをデータで可視化し、そこに民間の専門性と資金を投入することで、より効果的で具体的な支援が実現します。このモデルが全国に広がることで、地域社会全体で子どもたちや困難を抱える人々を支え、誰もが「何度でもやり直せる」社会が実現するかもしれません。

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2026年4月7日



Written by

菅間 大樹

findgood編集長、株式会社Mind One代表取締役
雑誌制作会社、広告代理店、障害者専門人材サービス会社を経て独立。
ライター・編集者としての活動と並行し、就労移行支援事業所の立ち上げに関わり、管理者も務める。職場適応援助者(ジョブコーチ)養成研修修了。
著書に「経営者・人事担当者のための障害者雇用をはじめる前に読む本」(Amazon Kindle「人事・労務管理」「社会学」部門1位獲得)がある。
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