視覚障害のある方と晴眼者が光と音を頼りに本気で戦う新しいインクルーシブ格闘技「Low Vision Boxing」。テクノロジーを活用した最新のパラスポーツの仕組みや開発背景、12月に開催される特別試合やクラウドファンディング情報を解説します。
この記事で分かること
- 「Low Vision Boxing(ロービジョンボクシング)」の基本概要と開発の背景
- 弱視(ロービジョン)の特性と、従来のパラスポーツにおける格闘技の課題
- 光や音、振動センサーで「見えない情報」を補うテクノロジーの仕組み
- 2026年12月開催予定の特別試合およびクラウドファンディングの支援方法
- 読者が気になる安全性や公平性に関するQ&A
障害福祉やパラスポーツの分野において、テクノロジーを活用した新たな挑戦が注目を集めています。
株式会社TBWA HAKUHODOは、筑波大学の落合陽一氏、社会起業家の成澤俊輔氏らとともに、視覚障害のある方と晴眼者(視覚に障害のない方)が同じリングで戦えるインクルーシブ格闘技「Low Vision Boxing(ロービジョンボクシング)」の企画・開発を進めています。
「見えないからできない」という従来の先入観を打ち破り、テクノロジーによって「見え方の差」を払拭しようとする本プロジェクトは、障害福祉の未来に大きな示唆を与える取り組みとして期待されています。
本記事では、Low Vision Boxingの基本概念から競技を支える最新技術、12月に予定されている特別試合やクラウドファンディングの概要まで解説します。
障害福祉の新たな選択肢「Low Vision Boxing」とは?
弱視(ロービジョン)とは?視覚障害福祉における現状と課題
日本の視覚障害者のうち、約7割から8割は「視力が十分に得られない」「視野が狭い」「まぶしさを感じる」といった見え方の困難を抱える「弱視(ロービジョン)」と言われています。
障害福祉分野では多様なパラスポーツが考案され、視覚障害のある方が参加できる競技も広がってきました。しかし、晴眼者と同様に「本気で打ち合う」ことが可能な本格的な格闘競技は、これまで存在していませんでした。
なぜ今「インクルーシブ格闘技」なのか?開発背景と企画者たちの想い
本プロジェクトは、自身も弱視である成澤俊輔氏と落合陽一氏が持つ「誰もが戦う本能を持っている」という考えから発案されました。
- インクルーシブ格闘技とは:障害の有無にかかわらず、全ての人がフェアなルールのもとで共に参加し、競い合うことができる新しい格闘技の形態を指します。
「障害があるから格闘技は無理だ」と諦めるのではなく、テクノロジーの力で対等に向き合える環境をつくることで、当事者の可能性とスポーツ文化そのものを広げることを目指しています。
光と音で“見えない情報”を補うテクノロジーの仕組み
格闘技で必要な「4つの視覚情報」をデジタルデータへ変換
格闘技において選手が判断材料とする視覚情報は、主に以下の4点に分類されています。
- 対戦相手の位置の認識
- 対戦相手の攻撃の認識
- 自分の攻撃のヒット判定
- 自分の位置の把握
Low Vision Boxingでは、弱視の選手でもこれらの情報を把握できるよう、専用のセンシングデバイスと音響設備を導入しています。
専用ギアと3Dオーディオが実現するフェアな競技空間
グローブやボディプロテクター、リング周囲には以下のデバイスやシステムが組み込まれています。
| 導入デバイス・技術 | 役割と仕組み |
|---|---|
| 専用ギア(LED・各種センサー・振動モジュール) | 加速度センサーや圧力センサーで攻撃やヒットを検知し、光や振動で選手に伝達します。 |
| 3Dオーディオシステム | リング空間に配置された音響設備から、相手との距離や動きを立体的な音情報として発します。 |
これらの技術により、視覚的な見え方の差を技術で補正し、競技性の高さと安全性の確保を同時に追求しています。
観客体験もアップデートする「SPORTS PRESENTATION(SPP)」
暗闇の中でも攻防が伝わる新しいパラスポーツ観戦スタイル
Low Vision Boxingでは、選手だけでなく観客の体験を高める「SPORTS PRESENTATION(SPP)」という演出手法も採り入れられています。
- SPORTS PRESENTATION(SPP)とは:光や音、リアルタイムデータ表示などのテクノロジーを組み合わせ、スポーツの観戦体験を拡張・深化させる取り組みです。
暗闇のリング上で行われる試合であっても、LEDの光演出や距離感を伝える効果音、リアルタイムのヒット判定が表示されることで、格闘技に詳しい方も初めて観戦する方も、駆け引きの緊張感や興奮をダイレクトに楽しめるよう設計されています。
2026年12月開催!特別試合とクラウドファンディングの概要
初の特別試合:成澤俊輔氏 vs プロキックボクサー小笠原瑛作選手
Low Vision Boxingの初となる競技開催として、2026年12月に福島県にて特別試合が予定されています。
- 開催日程:2026年12月5日(土)開場 12:00/開始 13:00〜
- 大会名:KNOCK OUT REBELS SERIES.16(特別試合として実施予定)
- 対戦カード:成澤俊輔 vs 小笠原瑛作(第2代KNOCK OUT-RED フェザー級王者) ほか
- 会場:福島・KNOCK OUT 常葉アリーナ(福島県田村市常葉町)
現在、安全管理体制やルール、演出方法の検証が進められており、実戦を通したデータ検証をもとに今後の本格普及やトレーニングへの応用が検討されています。
READYFORでのクラウドファンディング支援方法とリターン
プロジェクトの実現および今後の研究開発に向け、クラウドファンディングサイト「READYFOR」にて支援募集が行われています。
- プロジェクト名:【落合陽一×成澤俊輔】光と音で戦う新しい格闘技、初試合を実現したい
- 募集期間:2026年10月1日(木)〜11月15日(日)23:00まで
- 目標金額:400万円(All-in形式)
- 主なリターン:レポート動画(1万円)、体験会参加券(8万円)、落合陽一氏・成澤俊輔氏・小笠原瑛作氏のサイン入りグローブ(13万円)など
集まった資金は、専用機材の開発・設営費、安全管理費、広報活動および将来的な技術応用に活用される予定です。
Low Vision Boxingに関するQ&A

Q1. 弱視(ロービジョン)の方でも安全に格闘技ができるのでしょうか?
A. 安全管理体制の構築と専用プロテクターの開発が進められています。 筑波大学の研究者やトレーナー、視覚障害のある当事者経験者が参画し、圧力センサーや振動モジュールを内蔵したギアの調整、事前の検証実験を重ねることで、安全性の確保と競技性の両立が図られています。
Q2. 晴眼者と視覚障害者が同じルールで戦うことは本当に可能ですか?
A. テクノロジーによって見え方の差を埋めるアプローチが取られています。 リング上の空間位置や攻撃の気配を光や3Dオーディオにリアルタイム変換することで、両者がフェアな状態で向き合えるルール設計が試みられています。
Q3. この技術は格闘技以外の障害福祉やパラスポーツにも応用されますか?
A. 「DESIGNED FOR ONE, SCALED FOR EVERYONE.」の理念のもと、他分野への応用が期待されています。 特定の個人の課題を解決する技術が、結果として多くの人の可能性を広げるという考え方に基づき、ゲーム開発者の野澤幸男氏らとともに、スポーツ以外の日常生活や各種トレーニング分野への技術展開も見据えられています。
まとめ:障害福祉とテクノロジーがつくる、誰もが挑戦できる社会へ

Low Vision Boxingは、単なる新しいスポーツの誕生にとどまらず、障害福祉における「個人の挑戦の可能性」や「テクノロジーによる社会課題解決」の好例と言えます。
- 弱視者と晴眼者が対等に本気で戦えるインクルーシブな環境の創出
- センサーと音響技術による「見えない情報」の感覚変換
- 2026年12月5日の初試合開催とクラウドファンディングによる社会巻き込み
「見えないから」と諦めるのではなく、工夫と技術によって新しい選択肢をつくり出すこの取り組みは、障害福祉に関心を持つ私たちに多くの気づきを与えてくれます。
プロジェクトの今後の展開や最新情報については、クラウドファンディングページなどを通じて確認することができます。

