医療的ケア児の学校連携、保護者の77%が「連絡・調整」に負担 – NPO法人おこぷろ調査で浮き彫りになった課題と支援の未来
医療的ケアを必要とするお子さんを持つ保護者にとって、学校との連携は日々の大きな課題の一つです。NPO法人 親子に寄り添う連携支援プロジェクト(通称:おこぷろ)は、こうした保護者の実態を明らかにするため、全国の保護者を対象としたアンケート調査を実施し、その結果を発表しました。
この調査では、保護者が直面する「学校との連絡・調整」の負担が浮き彫りになり、医療・家庭・学校間の情報共有の重要性が改めて認識されています。今回は、この調査結果の詳細と、今後の支援のあり方について深掘りしていきます。
医療的ケア児の学校連携、保護者の声から見えた実態とは?
「医療的ケア児」とは、人工呼吸器や胃ろうなど、日常生活において医療的なケアが常時必要な子どものことを指します。近年、社会全体で医療的ケア児とその家族への支援の重要性が高まっています。
NPO法人 親子に寄り添う連携支援プロジェクト(おこぷろ)は、病気や医療的ケアを必要とする子どもを持つ保護者140名を対象に、学校との連携における困難やICT(情報通信技術)による支援に関するアンケート調査を2025年10月から2026年3月にかけて実施しました。この調査は、保護者が学校連携においてどのような課題を感じているのかを具体的に把握することを目的としています。
医療情報共有の難しさと情報伝達の実感
調査結果によると、「医療情報を学校と共有する難しさ」は10段階評価で平均6.1という結果でした。また、「必要な情報が学校へ伝わっている実感」については平均5.21となっています。これらの数値は、保護者が学校との間で医療情報を共有し、それが適切に伝わっていると感じることに一定の困難があることを示唆しています。

保護者が最も負担を感じる「学校との連絡・調整」
保護者が学校連携において特に負担を感じる場面として、以下の点が挙げられました。
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学校との連絡・調整:77件
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学校行事への対応:62件
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学習や評価に関する調整:58件

この結果から、日常的な連絡だけでなく、学校行事や学習・評価といった多岐にわたる場面で、保護者が大きな負担を抱えていることが明らかになりました。
「伝える」から「活かす」へ:情報共有の課題と新たな視点
おこぷろは今回の調査結果を受けて、課題解決の視点を「保護者の伝え方」だけに求めるのではなく、医療・家庭・学校の間で必要な情報をどのように共有し、子どもの学校生活に必要な配慮や支援につなげていくのかという、情報共有の仕組み自体に焦点を当てています。
医療情報と学校生活に必要な情報の違い
医療機関で必要となる情報と、学校生活の中で必要となる情報は、必ずしも同じ形ではないと指摘されています。例えば、診断名や治療内容だけでなく、「体育にはどのように参加できるのか」「学校行事では何に留意する必要があるのか」「体調が変化したとき、どのように対応するのか」といった、実際の学校生活に結びつく具体的な情報が重要になります。
おこぷろは、医療情報を学校生活で活用できる形にすること、そして進学・進級時にも必要な情報を適切に引き継ぐことを、今後の重要な課題として捉えています。
保護者の努力だけに頼らない支援の仕組みづくり
子どものことを最もよく知る保護者が学校との情報共有に関わることは非常に重要です。しかし、必要な支援につながるための情報共有や調整を、保護者個人の情報収集力や説明力、調整力だけに委ねることは、保護者にとって過度な負担となりかねません。
おこぷろは、「保護者がもっと上手に伝えるにはどうすればよいか」ではなく、「保護者の努力だけに頼らず、必要な情報が必要な人につながる仕組みをどうつくるか」という視点で、課題解決に取り組むことを目指しています。学校連携の課題を個々の家庭の困りごとにとどめず、医療・教育・福祉・家庭の間をどのようにつなぐのかという仕組みの課題として捉え、解決策を検討していく方針です。
保護者・専門職の負担軽減へ:ICT活用と多職種連携の可能性
病気や医療的ケアを必要とする子どもには、医療、教育、福祉、行政など、さまざまな立場の専門職が関わります。それぞれの分野に専門職がいても、異なる領域の「間」で、誰が、どの情報を、どのようにつなぐのかという課題が生じることがあります。
ICTは支援をつなぐための一つの手段
今回の調査では、学校連携における困難とともにICT(情報通信技術)による支援についても調査されました。ただし、ICTの導入自体を目的とするのではなく、以下の点を明確にした上で、ICTをどのように活用できるかを検討していくとしています。
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誰が、何のために情報を共有するのか
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どの情報を、誰と共有する必要があるのか
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医療情報を学校生活に必要な情報へどうつなげるのか
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進級・進学時に必要な情報をどう引き継ぐのか
ICTは、あくまでも連携を円滑にするための一つの手段であり、その活用を通じて、子どもが安心して学校生活を送れること、保護者や関わる専門職が負担を抱え込まない仕組みづくりを目指しています。
多職種連携で「安心」を支える未来
おこぷろは、保護者だけでなく、子どもに関わる専門職も一人で判断や調整を抱え込まず、それぞれの専門性を生かしながら必要な人や情報につながることのできる連携を目指しています。
今回の調査は保護者を対象としたものでしたが、今後は医療者、教員、福祉職など専門職側の視点からの情報共有や支援接続についても検討を進め、誰か一人に調整の負担が集中しないような連携のあり方を研究・実践していく方針です。
第15回日本小児在宅医学会学術集会での発表
今回の調査結果は、2026年8月23日にパシフィコ横浜で開催された「第15回日本小児在宅医学会学術集会」において、「病気を持つ子どもの親が感じる学校連携における困難とICTによる支援に関するアンケート調査」の演題で口頭発表されました。

この発表は、多くの医療・福祉関係者が、病気のある子どもの学校生活や、医療・教育・福祉の連携、多職種・多領域の支援接続について考える貴重な機会となりました。おこぷろは、この学会発表を単なる報告で終わらせず、次の研究と実践につなげていくとしています。
NPO法人 親子に寄り添う連携支援プロジェクト(おこぷろ)について

NPO法人 親子に寄り添う連携支援プロジェクト(おこぷろ)は、病気や障がいのある子どもと家族を中心に、医療・教育・福祉・地域など、分野を越えて必要な支援がつながる仕組みづくりに取り組んでいます。当事者・保護者の声を起点とした調査研究、専門職との学びの場づくり、地域での活動、情報発信などを通じ、「支援と支援の間」に生じる課題を捉え、よりよい支援接続のあり方を研究・実践しています。
- 公式サイト: https://okopuro.jp/
まとめ
今回のNPO法人おこぷろの調査は、医療的ケア児を持つ保護者が学校連携において直面する具体的な困難を浮き彫りにしました。特に「学校との連絡・調整」における負担は、多くの保護者にとって共通の課題であると言えるでしょう。
この結果を踏まえ、おこぷろは、保護者個人の努力に依存するのではなく、医療・家庭・学校間の情報共有の仕組みそのものを改善し、ICTなどのツールを効果的に活用することで、子どもが安心して学校生活を送れる環境、そして保護者や関わる専門職が負担を抱え込まない支援体制の構築を目指しています。
今後、保護者だけでなく、医療、教育、福祉それぞれの立場からの視点を取り入れた多角的な検討が進められることで、より包括的で実効性のある「多職種連携」が実現し、すべての子どもが地域で安心して学び、成長できる社会へとつながっていくことが期待されます。障害福祉に関心のある方は、今後の「おこぷろ」の活動にも注目してみてはいかがでしょうか。

