東大医学部がD&Iを必修科目に!医療現場の新しい潮流とは?
2021年4月、東京大学医学部は「医学のダイバーシティ教育研究センター」を設立し、医学生全員に必修のダイバーシティ&インクルージョン教育を導入しました。これは、専門職となる前に当事者や多様な市民と出会い、共に医療を「共同創造」していく経験を積むことで、医療文化そのものを変革しようという強い意思の表れです。
ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)とは?
ダイバーシティ(Diversity)は多様性、インクルージョン(Inclusion)は包摂性を意味します。D&Iは、性別、年齢、国籍、障害の有無、性的指向など、様々な違いを持つ人々が、それぞれの個性や能力を活かし、尊重され、組織や社会に参加できる状態を目指す考え方です。
医療現場においてD&Iの視点を持つことは、患者一人ひとりの背景や価値観を深く理解し、より質の高い、個別化されたケアを提供する上で不可欠とされています。
『東大医学部生が受けているダイバーシティ&インクルージョンの授業』書籍の魅力
株式会社医学書院から2026年7月13日に刊行された『東大医学部生が受けているダイバーシティ&インクルージョンの授業 「建前」から「納得」へ【11人の講義動画付き】』は、この必修授業で実際に教鞭を執る12名の経験専門家たちの講義を収録しています。研究者、教育者、そして当事者たちが、それぞれの立場からダイバーシティとインクルージョンを深く掘り下げています。

本書の大きな特徴は、QRコードから講義動画を視聴できる点です。これにより、文章だけでなく、講師陣の熱意やニュアンスを直接感じながら学ぶことができます。医学、看護学、心理学、社会福祉学など、様々な援助職の教育課程における授業やコミュニケーション実習の導入としても活用が期待されます。
書籍情報
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書名:東大医学部生が受けているダイバーシティ&インクルージョンの授業
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編:笠井清登 / 熊谷晋一郎
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発行月:2026年7月
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判型:四六
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頁数:144
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定価:2,750円 (本体2,500円+税10%)
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ISBN:978-4-260-06687-7
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発行元:医学書院
書籍の詳細や本文サンプルはこちらからご覧いただけます。
講義内容に見る「共同創造」と「当事者研究」の重要性
本書の講義は、以下のような多岐にわたるテーマを扱っています。
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第1講:「なぜ医療者・支援者にD&Iが必要なのか」がわかる講義動画
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依存、依存症から見るDEI
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「優生思想」と「生産性重視」に我々はどう対抗できるか
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第2講:「D&Iを実装するための基礎」がわかる講義動画
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共同創造(コ・プロダクション)が必要な理由──精神障害に関するスティグマを事例として
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共同創造(コ・プロダクション)の実践的説明
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共同創造(コ・プロダクション)とピアサポート
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学校精神保健の観点から学校でのDEIを考える
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トラウマインフォームドケア
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第3講:「当事者のナラティブ」を通してD&Iを考える講義動画
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自閉症者の立場からジェンダーを考える
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ダルク女性ハウス(依存症の自助グループ)と回復のナラティブ
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長崎ダルク(依存症の自助グループ)と回復のナラティブ
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女性にとっての自助グループとは
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ディスカッション──「誰が社会的に排除されているか」「専門家との付き合い方について」
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第4講:「D&Iをすでに実装している現場」がわかる講義動画
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Nothing about Us Without Us──共同創造、当事者研究、ユーザーリサーチャー
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科学の多様性について──障害のある研究者の参加
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特に注目されるのは、「共同創造(コ・プロダクション)」と「当事者研究」という概念です。
共同創造(コ・プロダクション)とは?
専門家が一方的にサービスを提供するのではなく、サービスを受ける当事者(患者や利用者など)と専門家が対等な立場で協力し、共に問題解決や価値創造に取り組むアプローチです。
当事者研究とは?
病気や障害、生きづらさを抱える当事者自身が、その経験や課題を自らの言葉で語り、分析し、解決策を探る研究活動です。専門家による研究とは異なる、当事者ならではの視点や知見が重視されます。
これらのアプローチは、精神障害に関するスティグマ(偏見や差別)への対抗や、医療・福祉サービスの質の向上に大きく貢献すると考えられています。
トラウマインフォームドケアとは?
トラウマ(心的外傷)の経験が、人々の行動や健康に与える影響を理解し、その影響を考慮した上でケアや支援を提供するアプローチです。支援を受ける人が安心してサービスを受けられる環境を整えることを目指します。
なぜ今、医療者に「人間の脆弱性」とD&Iの視点が必要なのか?
本書は、人間の「脆弱性」を前提とした社会のあり方に思いをめぐらすことの重要性を強調しています。私たちは多くの人やモノに依存しなくては生きていけない存在であり、医療者もまた人間です。現代社会では、過度な能力主義や優生思想が広がる傾向が見られますが、こうした風潮の中で、私たち自身が自分と患者の命を守るために必要なことは何でしょうか。
D&Iの視点を持つことは、人間の本質的な依存的な性質を無視せず、多様な背景を持つ人々が安心して暮らせる社会を築くための第一歩です。医療者や支援者が、患者や利用者の「弱さ」を理解し、それを支えることの重要性を再認識するきっかけとなるでしょう。
障害福祉分野にも広がるD&I教育の可能性
この書籍で紹介される講義内容は、医学分野に留まらず、看護学、心理学、社会福祉学など、幅広い援助職の教育課程で活用されることが期待されます。障害福祉の現場においても、D&Iの概念や共同創造のアプローチは、利用者中心の支援を実現し、よりインクルーシブな社会を構築するために不可欠な要素です。
本書を通じて、障害当事者のナラティブ(語り)に触れることで、専門家は自身の知識や経験を再構築し、より実践的な支援へと繋げることができるかもしれません。また、グループワークの提案も含まれており、体験的にD&Iを学ぶ機会を提供しています。これは、障害福祉分野の専門職を目指す学生や、現役の支援者にとっても、きっと貴重な学びの機会となるでしょう。
まとめ
『東大医学部生が受けているダイバーシティ&インクルージョンの授業』は、これからの医療・福祉のあり方を考える上で、非常に重要な一冊です。人間の脆弱性を認め、多様な人々が共に生きる社会を目指すD&Iの精神は、障害福祉分野においても深く根差すべき理念と言えるでしょう。この書籍から、新たな知見を得て、日々の支援や活動に活かしてみてはいかがでしょうか。
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