盲ろう者支援の新たな一歩!大学連携による通訳・介助者養成プログラムが始動

視覚と聴覚の両方に障害を持つ「盲ろう者」の社会参加を支える通訳・介助者の存在は不可欠です。しかし、近年、この重要な役割を担う若年層の人材不足が深刻化しています。こうした状況を受け、日本社会事業大学と認定NPO法人東京盲ろう者友の会が連携し、2026年4月より盲ろう者向け通訳・介助者養成プログラムを共同で実施しています。

盲ろう者支援の現状と深刻な通訳・介助者不足の課題

盲ろう者の生活を支える通訳・介助者は、コミュニケーションだけでなく、移動や情報アクセスの面でも重要な役割を担っています。しかし、その担い手、特に若年層の不足は深刻な課題となっています。

東京都の通訳・介助者派遣事業のデータを見ると、30歳以下の若年登録者は、2014年度には全体の11%(431人中49人)を占めていましたが、2024年度にはわずか3%(475人中15人)にまで大幅に減少しています。盲ろう者の多様なニーズやコミュニケーション方法に対応するには、気力、体力、知力を兼ね備えた若年人材の確保が急務とされています。

日本社会事業大学と東京盲ろう者友の会の共同プログラムとは?

この深刻な人材不足を解消するため、認定NPO法人東京盲ろう者友の会は、日本社会事業大学の協力を得て、大学の講義を入り口とした実践的な養成プログラムを構築しました。

日本社会事業大学と東京盲ろう者友の会の面談風景

このプログラムは、大学の講義「人間の知性と感性の認識ⅩⅨ(盲ろうコミュニケーション支援論)」と、東京盲ろう者友の会が主催する演習・実習を組み合わせた構成です。2026年5月20日には、日本社会事業大学の横山学長と東京盲ろう者友の会の藤鹿理事長が面談を行い、本プログラムへの期待が語られました。

実践力を重視したカリキュラム内容

養成プログラムは、理論と実践の両面から通訳・介助に必要なスキルを習得できるよう設計されています。

  • 大学授業部分(講義): 90分×15コマ=22時間30分

  • 東京盲ろう者友の会事業部分(演習・実習): 90分×14コマ=21時間

  • 合計: 43時間30分(東京都・八王子市の通訳・介助者養成講習会の42時間と同等の内容)

特に演習・実習では、移動介助演習(平地、階段、電車乗降など)、盲ろう者との通訳・介助実習(買い物や移動支援などの実地体験)、通訳・介助技術の振り返りなど、実践的な内容が提供されます。

教室での指導風景

講演中の様子

修了後のキャリアパスと社会貢献

所定の修了条件(講義の単位取得、演習・実習の全出席、通訳・介助技術の習得など)を満たした学生は、東京盲ろう者友の会から東京都・八王子市に登録通訳・介助者として推薦されます。これにより、学生たちは学んだ知識とスキルを活かし、すぐにでも社会貢献の道へ進むことが可能となります。

学長と理事長が語る、盲ろう者支援への熱い想い

日本社会事業大学の横山学長は、「盲ろう者と社会や多様な人びととを繋ぐ役割を担う福祉の実践的リーダーを育てることに大変な意義がある」と、プログラムへの大きな期待を寄せています。

また、東京盲ろう者友の会の藤鹿理事長は、自身の経験を交えながら、通訳・介助者の重要性を次のように語っています。

「私自身、20代の半ばで、全く見えなく、全く聞こえない全盲ろうの盲ろう者になってしまいました。視力と聴力だけでなく、夢も希望も全て失い心の中が空洞になってしまい、生きていく意欲すらなくなってしまいました。数年後、東京盲ろう者友の会と繋がり、指点字というコミュニケーション手段を身に着けることができたのは、私に指点字で話しかけてくださった通訳・介助者の皆さんのお陰です。その中には若い方が多かったです。盲ろう者にとって、通訳・介助者は盲ろう者と社会との懸け橋になり、盲ろう者の明るい未来を導くことのできる必要不可欠な存在です。ここ数年、若年層の通訳・介助者が減ってきています。若い方たちの力が必要です。盲ろう者の通訳・介助にチャレンジしていただけたら嬉しいです」

この言葉からは、通訳・介助者が盲ろう者の人生にどれほど大きな影響を与えるか、そして若年層の支援者がいかに求められているかが強く伝わってきます。

認定NPO法人東京盲ろう者友の会とは

1991年に設立された認定NPO法人東京盲ろう者友の会は、視覚と聴覚の両方に障害がある「盲ろう者」の自立と社会参加を促進することを目的としています。東京都盲ろう者支援センターを運営し、通訳・介助者の派遣・養成、相談支援、個別訓練など、幅広い支援を提供しています。

まとめ:未来を担う通訳・介助者育成が拓く共生社会

日本社会事業大学と東京盲ろう者友の会による共同プログラムは、盲ろう者支援における若年層の担い手不足という喫緊の課題に対し、具体的な解決策を提示する画期的な取り組みです。実践的なカリキュラムを通じて、次世代の通訳・介助者が育成されることで、盲ろう者の社会参加がさらに促進され、より豊かな共生社会の実現に貢献することでしょう。

このプログラムから多くの若者が学び、盲ろう者支援の現場で活躍してくれることを期待せずにはいられません。福祉分野に興味を持つ方、社会貢献を志す方にとって、この養成プログラムは新たな一歩を踏み出す素晴らしい機会となるはずです。

Written by

菅間 大樹

findgood編集長、株式会社Mind One代表取締役
雑誌制作会社、広告代理店、障害者専門人材サービス会社を経て独立。
ライター・編集者としての活動と並行し、就労移行支援事業所の立ち上げに関わり、管理者も務める。職場適応援助者(ジョブコーチ)養成研修修了。
著書に「経営者・人事担当者のための障害者雇用をはじめる前に読む本」(Amazon Kindle「人事・労務管理」「社会学」部門1位獲得)がある。
https://www.amazon.co.jp/dp/B0773TRZ77