「生きる本大賞」とは?多様な「生きる」に寄り添う書籍の選出
「生きる本大賞」は、複数書店の書店員が選んだ“「生きる」に寄り添う本”に贈られる文学賞です。様々な環境で暮らす人々の「生きる」助けとなるような書籍を届けることを目的としています。1年間に発売された広義のノンフィクション・エッセイの中から、有志書店員が候補作を選出し、選考会を経て「一番良かった、伝えたい本」を大賞として選定しています。
2023年12月に創設された『第1回生きる本大賞』では、土門蘭 著「死ぬまで生きる日記」(生きのびるブックス 刊)が大賞に選ばれました。書店の垣根を越えた取り組みが始まった『第2回生きる本大賞』では、小山さんノートワークショップ 編「小山さんノート」(エトセトラブックス 刊)と、奈倉有里 著「文化の脱走兵」(講談社 刊)の2作品がダブル受賞しています。この賞は、これまでにも多くの読者に新たな出会いを提供してきました。


第3回大賞は「オープンダイアローグ」に関する書籍が受賞!注目の作品群
2026年8月28日(金)に発表された『第3回 生きる本大賞』の大賞には、「専門家なしでやってみよう! オープンダイアローグ――安全な対話のための実践ガイド」が選ばれました。この書籍は、現代社会における対話のあり方や心のケアに新たな視点を提供するものです。
【大賞】
書名:専門家なしでやってみよう! オープンダイアローグ――安全な対話のための実践ガイド
著者:石田月美、頭木弘樹、鈴木大介、樋口直美 出版社:晶文社

【ノミネート作】
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書名:遺骨と祈り 著者:安田菜津紀 出版社:産業編集センター
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書名:悲しき虎(新潮クレスト・ブックス) 著者:ネージュ・シンノ 訳者:飛幡祐規 出版社:新潮社
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書名:言葉のトランジット 著者:グレゴリー・ケズナジャット 出版社:講談社
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書名:みえないもの 著者:イリナ・グリゴレ 出版社:柏書房
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書名:ロッコク・キッチン 著者:川内有緒 出版社:講談社
専門家なしで実践!障害福祉分野にも通じる「オープンダイアローグ」とは?
大賞を受賞した「専門家なしでやってみよう! オープンダイアローグ――安全な対話のための実践ガイド」は、精神医療やメンタルケアの世界で注目される「オープンダイアローグ」という手法を、病気や困りごとを抱えた当事者だけで安全に行うための実践ガイドブックです。
オープンダイアローグとは
フィンランドで発展した精神医療の手法で、精神的な危機にある本人とその家族、支援者が対等な立場で対話を行うことを重視します。専門家が一方的に診断や治療方針を示すのではなく、対話を通じて本人の声に耳を傾け、共同で解決策を探るプロセスです。これにより、本人の主体性を尊重し、回復を促す効果が期待されています。
本書は、全員が素人でありながら病気や障害を抱える4人の物書きが、オンラインで対話を行った記録をもとに作成されました。問題を解決することだけが目的ではなく、ただ繰り返し対話する中で救いが訪れるという、心のケアの新しい可能性を示しています。選考者からは、「この本自体が見事なポリフォニーを体現していて、『ならば私は、どんな声を発してみる?』と世界に向かって小声でつぶやきたくなる。対話を信じる入り口に」といったコメントが寄せられています。
ポリフォニーとは
複数の独立した声部が同時に進行し、それぞれが独自の旋律を持ちながらも全体として調和する音楽形式を指します。本書では、対話において多様な意見や視点が共存し、それぞれが尊重される状態を表現する言葉として使われています。
選考者コメントからは、「危険な会話は日常のなかに溢れていることにはっとした。本書は『安全な対話』のための実践の記録であると同時に、生きるための道具としての本であった」という言葉もあり、障害福祉の現場や、多様な人々が共生する社会において、安全で開かれた対話の場を築くことの重要性が改めて示唆されています。
編集者・著者からのメッセージと書籍に込められた「対話」への想い
本書を大賞に選んだことに対し、編集者は心からの感謝を述べ、「この本は、著者の四人が試行錯誤をしながら、〈対話〉の場を実際につくってみた記録です。説得したり忠告したりすることなく、たがいの言葉に耳を澄ませ、ただ対話そのものを続けていく。その営みが、人が生きるうえでの支えになりうることを、本書は身をもって示してくれました」と語っています。また、この受賞をきっかけに、対話のテーブルがさらに多くの場へと広がっていくことを願う言葉も寄せられました。
【著者プロフィール】
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石田月美氏:物書き。自身の婚活経験や精神疾患との向き合い方を綴った作品でデビュー。様々な困難を抱えながら生きる姿を文章で表現しています。
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頭木弘樹氏:文学紹介者。難病との闘病経験からカフカの言葉に救われ、『絶望名人カフカの人生論』などを編訳。NHK「ラジオ深夜便」の『絶望名言』コーナーにも出演中です。
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鈴木大介氏:文筆業・ルポライター。子どもや女性、若者の貧困問題を取材していましたが、脳梗塞を発症し高次脳機能障害当事者に。当事者としての経験を基にした闘病記や支援ガイドも執筆しています。
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樋口直美氏:文筆家・レビー小体病当事者。50歳でレビー小体型認知症と診断されながらも、多様な脳機能障害と向き合いながら執筆活動を続けています。
それぞれの著者が持つ多様な背景や経験が、本書の「専門家なしでやってみよう! オープンダイアローグ」というテーマに深みを与え、読者にとってより身近で実践的な内容となっていることがうかがえます。
全国で開催される「生きる本大賞」フェア情報と参加書店
『第3回 生きる本大賞』の発表を受け、全国の書店でフェアが随時開催されます。この機会に、大賞受賞作やノミネート作品に触れてみてはいかがでしょうか。
【実施店舗】
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未来屋書店 全国194店舗(フェア開催店舗:96店舗、大賞のみ展開店舗:98店舗)
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青山ブックセンター本店(東京都渋谷区)
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TOUTEN BOOKSTORE(愛知県名古屋市)
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ほんの入り口(奈良県奈良市)
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本屋イトマイ(東京都板橋区)
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もくめ書店(山梨県南都留郡道志村)

お近くの書店で、ぜひ「生きる」に寄り添う一冊を見つけてみてください。未来屋書店の公式ホームページでも詳細が確認できる場合があります。
https://www.miraiyashoten.co.jp
書店・図書館・学校図書館関係者の方へ:フェア開催のススメ
「生きる本大賞」では、本フェアの開催書店を募集しています。選書リスト、大賞受賞作品特典ペーパー、小冊子データ、販促POPデータ一式など、フェア展開に必要なデータが無償で提供されます。
書店、図書館、学校図書館など、開催を希望される場合は、「生きる本大賞」公式SNSのDMより問い合わせが可能です。
まとめ:多様な「生きる」を支える書籍の力と障害福祉への示唆
『第3回 生きる本大賞』の発表は、現代社会において「生きる」ことの多様性を認め、支え合うことの重要性を改めて教えてくれます。特に、大賞を受賞した「専門家なしでやってみよう! オープンダイアローグ」は、障害の有無に関わらず、誰もが安心して対話できる環境を築くことの価値を示唆しています。これは、障害福祉の現場における支援のあり方や、当事者主体のケアを考える上でも非常に重要な視点となり得るでしょう。
本大賞を通じて選ばれた書籍が、多くの人々の心に寄り添い、それぞれの「生きる」を豊かにするきっかけとなることを期待します。この機会に、あなたにとっての「生きる本」を探してみてはいかがでしょうか。

