ADHD当事者の生活をサポートする「KABAG for ADHD」が世界認知行動療法学会に出展

ADHD(注意欠如・多動症)の特性を持つ方々が日常生活で抱える「物をなくす」「持ち物を忘れる」「整理整頓が困難」といった困りごとに着目し、認知行動科学の知見を組み込んで開発された機能性バッグ「KABAG for ADHD」が、2026年6月25日から28日まで米国サンフランシスコで開催される第11回世界認知行動療法学会(WCCBT 2026)に出展されます。

このバッグは、ADHD当事者677名の声と3名の専門家との共同開発によって誕生しました。国際的な学会での発表は、ADHD当事者の生活課題に対する物理プロダクトによる支援の可能性を世界に発信する機会となります。

KABAG for ADHDの紹介

ADHD当事者の声から生まれた「KABAG for ADHD」の機能性

ADHD(注意欠如・多動症)とは、不注意、多動性、衝動性といった特性が見られる発達障害の一種です。これらの特性は、日常生活において「物が見つけにくい」「忘れ物が多い」といった具体的な困りごとにつながることがあります。

株式会社コーエイが2024年9月に実施したADHD当事者・関係者アンケート(有効回答677名、うちADHD該当665名)では、以下のような実態が明らかになりました。

  • 「物が見つけにくい」と感じている:71.3%

  • 「家の鍵をなくした経験がある」:57.0%

  • 「家を出てから持ち物を取りに戻った経験がある」:63.5%

  • 「物を紛失したエピソードを持つ」:95.7%

「KABAG for ADHD」は、これらの当事者の声をもとに設計されています。収納場所を視覚的に固定する透明ポケット、ラベリングしやすい構造、二階建てフォーカス収納など、ADHDの認知特性に寄り添った工夫が凝らされています。これにより、物の定位置化を促し、探し物をする時間や忘れ物のリスクを軽減することを目指しています。

バッグに荷物を詰める様子

なぜ世界認知行動療法学会(WCCBT)に出展?認知行動科学に基づく設計思想

「KABAG for ADHD」が世界認知行動療法学会に出展する背景には、その設計が認知行動科学の知見に基づいているという理由があります。

認知行動療法(CBT)とは

認知行動療法(CBT: Cognitive Behavioural Therapy)は、思考パターン(認知)と行動の関連性を理解し、それらを調整することで心理的な問題の解決を目指す心理療法です。ADHDに対しては、世界的に最もエビデンスが蓄積された介入アプローチの一つとして知られています。

WCCBT 2026のテーマ「Health for All: Affirming, Equitable, and Sustainable CBT」が示す通り、認知行動療法の知見をいかに日常生活の支援に応用するかが、学会の中核的な関心領域です。

「KABAG for ADHD」と認知行動療法の連携

「KABAG for ADHD」が提唱する「見える化」「定位置化」「モノの住所」というコンセプトは、認知行動療法の主要概念である以下の要素と整合しています。

  • 行動の構造化(behavioural structuring): 日常の行動を計画的かつ体系的に整理すること。

  • 環境調整(stimulus control): 特定の行動を引き起こす環境要因をコントロールすること。

  • 補助手段による認知負荷の軽減(cognitive offloading): 記憶や注意といった認知的な負担を、外部のツールや環境に委ねて軽減すること。

このバッグは単なる便利なグッズではなく、ADHD当事者の認知特性と臨床知見を橋渡しする補助具として設計されています。この設計思想を、世界の臨床心理士や研究者と直接対話する場としてWCCBT 2026が選ばれました。

過去の出展者の多くが書籍や学術出版社である中で、当事者の生活課題に物理プロダクトで応えるブランドが出展することは、新しい試みと言えるでしょう。当事者の声から生まれた製品を医療・臨床現場の専門家へ届け、現実の臨床ケアと製品開発の循環を強化することを目指しています。

3名の専門家による共同開発体制

「KABAG for ADHD」は、ADHD支援に多角的に取り組む3名の専門家との共同開発によって生まれました。これにより、心理臨床、当事者、行動科学の3つの視点が統合された設計思想が実現しています。

  • 南 和行 氏(臨床心理士/カウンセリングルームすのわ 代表)
    ADHD・トラウマ改善を専門とする臨床心理士。本プロジェクトの最初の相談先として参画し、心理臨床の視点から支援。

  • 西原 三葉 氏(ADHD整理収納アドバイザー/片づけコンサルティングAUBE 代表)
    自身もADHD当事者であり、発達障害に特化した片付けサポートを1,500件以上実施。当事者リサーチを牽引し、収納構造や色彩設計に当事者視点を反映。

  • 中島 美鈴 氏(臨床心理士・公認心理師/株式会社Time Design Lab 代表取締役)
    成人ADHDに対する認知行動療法を専門とする心理学博士。WCCBT 2026ではシンポジウム発表・ポスター発表で登壇予定であり、現地で「KABAG for ADHD」ブースとの連携も行われます。

会期中の6月28日(日)には、紀伊國屋書店サンフランシスコ店において、中島氏による商品説明・トークイベントも実施される予定です。

「KABAG for ADHD」の製品情報と購入方法

ADHD当事者の日々の困りごとをサポートするために開発された「KABAG for ADHD」は、以下のラインナップで提供されています。

  • 「KABAG for ADHD」レギュラー:17,000円(税込18,700円)

  • 「KABAG for ADHD」ラージ:18,000円(税込19,800円)

これらの製品は、自社ECサイトおよび紀伊國屋書店サンフランシスコ店にて販売されています。

製品の詳細はこちらで確認できます。
KABAG for ADHD 公式サイト

まとめ:障害福祉分野におけるプロダクトの可能性

「KABAG for ADHD」の取り組みは、ADHD当事者の具体的な生活課題に対し、認知行動科学に基づいた物理プロダクトでアプローチする新しい可能性を示しています。専門家との協働や当事者の声を反映した製品開発は、障害福祉分野において、より実践的で効果的な支援策を生み出す重要な一歩と言えるでしょう。

このような製品が国際的な学会で発表されることは、障害福祉関連のニュースとして注目に値します。今後も、当事者のニーズに応える革新的なサービスやプロダクトが生まれることが期待されます。

株式会社コーエイについて

株式会社コーエイは、バッグ・かばんの企画・製造・販売、EC事業を展開する企業です。ADHD当事者・家族向けバッグブランド「KABAG for ADHD」のほか、「KABAG」「Uniqute」「ZAZA」「TRIDEAL」といったブランドも手掛けています。

株式会社コーエイ 公式サイト

Written by

菅間 大樹

findgood編集長、株式会社Mind One代表取締役
雑誌制作会社、広告代理店、障害者専門人材サービス会社を経て独立。
ライター・編集者としての活動と並行し、就労移行支援事業所の立ち上げに関わり、管理者も務める。職場適応援助者(ジョブコーチ)養成研修修了。
著書に「経営者・人事担当者のための障害者雇用をはじめる前に読む本」(Amazon Kindle「人事・労務管理」「社会学」部門1位獲得)がある。
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