【この記事で分かること】

  • 視覚障害のある方の視点が製品・サービス開発や障害福祉にもたらす新しい価値
  • インクルーシブデザインにおける「PLAYWORKS認定リードユーザー」の役割と主な実績
  • 2027年から始まる「PLAYWORKSリードユーザー・ネットワーク」の概要と登録方法
  • 「サイトワールド2026」で開催される登壇イベントおよび体験ワークの詳細

障害福祉や多様性(ダイバーシティ)の推進に関心があるものの、「当事者の視点をどのように企業の製品やサービス開発へ活かせばよいのか分からない」と感じていませんか?

近年、障害のある方を開発の初期段階から巻き込む「インクルーシブデザイン」という手法が注目を集めています。中でも、視覚障害者の「見えない・見えにくい」という日常の経験や視点を活かし、企業とともに新たな価値を生み出す「PLAYWORKS認定リードユーザー」の活動が広がっています。

本記事では、認定リードユーザーの具体的な取り組みや大手企業との共創実績、さらには障害当事者が参加できる新たな取り組みについて解説します。


障害福祉における新たな視点「インクルーシブデザイン」と「リードユーザー」とは?

障害福祉やユニバーサルデザインの領域において、近年急速に関高まっているのが「インクルーシブデザイン」と「リードユーザー」という考え方です。まずはこれらの専門用語の概念について整理します。

インクルーシブデザインとは:従来のバリアフリーとの違い

インクルーシブデザイン(Inclusive Design)とは、企画・開発の初期段階から、高齢者や障害者など、従来の製品開発において除外(インクルードの対義語であるエクスクルード)されがちだったユーザー(リードユーザー)を巻き込んで製品やサービスを共創するデザイン手法を指します。

障害者の利便性を確保するために後から修正を加える「バリアフリー」とは異なり、開発の最初から多様な当事者と一緒に考えることで、障害者だけでなくすべての人にとって使いやすいイノベーションを引き出すアプローチとして知られています。

リードユーザーとは:未知の未来へ導く存在

リードユーザーとは、一般的な市場ニーズに先駆けて、最先端の課題や潜在的な問題に直面しているユーザーのことです。

PLAYWORKS株式会社では、リードユーザーを「未知の未来に導いてくれる人」と定義しています。障害による日常の困難や制約から生じる独自の視点は、企業やデザイナーが抱く既存の「あたりまえ」を問い直し、これまで気づかなかった新しい課題や可能性を発見するきっかけをもたらします。

また、単に「障害がある」という事実だけでなく、暮らし・趣味・仕事・勉強など、その人が歩んできた固有の経験と障害による経験が組み合わさることで、その人ならではの固有の視点が生まれるとされています。


視覚障害のある学生が活躍する「PLAYWORKS認定リードユーザー」の取り組みと実績

PLAYWORKS株式会社(東京都目黒区、代表取締役 タキザワケイタ)では、視覚障害のある学生を対象とした育成プログラムを提供しています。

全3回の育成プログラムで磨かれる「当事者の視点と問いかける力」

「PLAYWORKS認定リードユーザー育成プログラム」は、全3回のオンラインプログラムで構成されています。受講生は以下のスキルや知識を習得します。

  • インクルーシブデザインやリードユーザーに関する基礎知識の習得
  • 自身の日常体験や障害経験の言語化
  • 製品やWebサイトのアクセシビリティ検証(使いやすさやアクセスのしやすさの調査)
  • 自身の経験から生まれる「問い」を起点としたアイデア発想

専門用語の解説:アクセシビリティ(Accessibility)とは、障害の有無や年齢に関わらず、すべての人が製品やサービス、情報(Webサイト等)に支障なくアクセスし利用できる状態や度合いのことです。

参画実績25件以上!大手企業(高島屋・Metaなど)との共創事例

育成プログラムを通じて、第1期から第4期までに計12名の視覚障害のある学生が「認定リードユーザー」として認定されました。

認定されたリードユーザーは、企業におけるインクルーシブデザインやアクセシビリティ向上を目指すプロジェクトに参画しており、これまでのプロジェクト参加件数は25件を超えています。

主な参画プロジェクトの企業例:

  • 株式会社高島屋
  • セイコーエプソン株式会社
  • 野村不動産株式会社
  • 株式会社集英社
  • Meta

このように、ファッション・家電・不動産・エンターテインメント・ITなど多様な分野の企業プロジェクトに、視覚障害のある若者の視点が活かされています。


2027年始動!全障害者を対象とする「PLAYWORKSリードユーザー・ネットワーク」

PLAYWORKSでは、学生向けプログラムで培ったノウハウをもとに、対象を拡大した新しい取り組みを予定しています。

学生から多様な障害当事者へ拡大する理由

2027年より、多様な障害のある方が自身の経験や専門性を活かして企業の製品・サービス開発やアクセシビリティ改善に参画できる「PLAYWORKSリードユーザー・ネットワーク」が始動します。

これまでの視覚障害のある学生に限らず、幅広い年代や多様な障害(身体障害・知的障害・精神障害・発達障害など)を持つ当事者へ対象を広げることで、より多角的な視点を社会や企業へ届けることを目指しています。

登録方法と企業プロジェクト参加の流れ

「PLAYWORKSリードユーザー・ネットワーク」は、現在開始に向けた事前登録希望者を募集しています。

  • 主な活動内容:企業の製品・サービス開発、Webアクセシビリティ検証、ワークショップ等への参加
  • 参加形態:登録制。実際の案件への参加は任意であり、活動内容に応じて報酬が支払われます。
  • 応募方法:専用の登録希望フォームより申し込みが可能です。

「サイトワールド2026」にて認定リードユーザーが登壇!イベント概要

視覚障害者向けの総合イベント「サイトワールド2026」において、認定リードユーザーの活動や体験を直接知ることができるイベントが開催されます。

専門用語の解説:サイトワールドとは、視覚障害者向けの最先端の製品や技術、サービスが一堂に会する視覚障害者向け総合イベントです。

認定リードユーザー座談会と体験ワークのプログラム内容

イベント内では、「インクルーシブデザインで活躍するリードユーザーになろう! 視覚障害のある学生が未来を拓く『認定リードユーザー』説明会」と題したプログラムが実施されます。

  • 日時:2026年10月24日(土)13:30〜15:30
  • 会場:すみだ産業会館 会議室5(錦糸町マルイ 9階)
  • 主なプログラム:
    1. PLAYWORKSおよびリードユーザーの紹介
    2. 企業とリードユーザーの共創事例の紹介
    3. 「認定リードユーザー育成プログラム」および「リードユーザー・ネットワーク」の紹介
    4. 認定リードユーザーによる座談会(きっかけや共創体験、活動を通じた想いを語る)
    5. リードユーザー体験ワーク・相談会(「視覚障害者からの問いかけ」「製品アクセシビリティ」「Webアクセシビリティ」などを体験)

登壇する視覚障害学生メンバーの紹介

当日は、実際に現場で活躍している認定リードユーザー1期生の視覚障害学生が登壇します。

  • 末棟 武虎(スエムネ タケトラ)氏
    • 筑波技術大学 保健科学部 保健学科 鍼灸学専攻
    • 全盲(右目にわずかな光覚あり)。あん摩マッサージ指圧師・鍼灸師の国家資格取得を目指して勉学に励む傍ら活動。
  • 川本 一輝(カワモト カズキ)氏
    • 筑波技術大学 / 合同会社WillShine 代表
    • 幼少期からの弱視を経て12歳で全盲に。大学在学中の2024年11月に起業し、「TOKYO SUTEAM DEMO DAY 2025」で賞を受賞するなど幅広く活動。
  • 山宮 叶子(ヤマミヤ カコ)氏
    • 学習院大学 国際文化交流学部
    • 2歳半から全盲。大学で英語・翻訳・教育を学び、カナダ留学も経験。将来は教育や子どもに関わる領域を目指す。

当事者学生・保護者・福祉支援者だけでなく、共創に関心のある企業担当者やメディア関係者も参加可能です。


よくある質問(Q&A)

障害者当事者や企業担当者から寄せられる代表的な質問とその回答をまとめました。

Q1: リードユーザーになるために、特別な開発スキルや専門知識は必要ですか?

A1: 必ずしも開発やデザインの技術的知識が必要なわけではありません。重要視されるのは、日常の「見えにくさ」や生活上の工夫、違和感を言語化し、そこから周囲や企業に対して「問い」を立てる視点です。育成プログラム等を通じて基礎知識や言語化のスキルを学ぶ機会も用意されています。

Q2: 企業はどのような目的で障害当事者を開発に巻き込むのですか?

A2: 主な目的は、障害者権利条約や法令に基づく「合理的配慮」や「アクセシビリティ向上」への対応にとどまらず、新しい視点を取り入れた製品・サービスのイノベーション創出です。従来のマーケティングでは見落とされがちな潜在ニーズの発見につながると評価されています。

専門用語の解説:合理的配慮とは、障害のある人が社会生活を送る上で直面するバリアを取り除くため、個別の状況に応じて企業や事業者が過度な負担にならない範囲で提供する必要な配慮や変更のことです。

Q3: 視覚障害以外の障害がある人でも、企業プロジェクトに参加する機会はありますか?

A3: 2027年より始動する「PLAYWORKSリードユーザー・ネットワーク」では、対象を視覚障害者だけでなく、多様な障害のある方へ広げることが発表されています。関心のある方は事前登録フォームを通じて情報を確認することができます。


まとめ:視覚障害者の経験がもたらす障害福祉と社会の未来

今回は、視覚障害のある方の経験や視点を社会・企業の力へと変える「PLAYWORKS認定リードユーザー」の取り組みについて解説しました。

  • インクルーシブデザインは、障害当事者を「助ける対象」ではなく「未来を一緒に創るパートナー(リードユーザー)」と捉える手法です。
  • これまでに12名の視覚障害学生が認定され、25件を超える企業プロジェクトで実績を重ねています。
  • 2027年からは「PLAYWORKSリードユーザー・ネットワーク」として、多様な障害のある方へ参加の輪が広がる予定です。

障害のある方が持つ独自の経験や「見えにくさ」から生まれる問いは、これまでの社会の「あたりまえ」をアップデートし、すべての人にとって心地よい未来を創る大きな原動力となります。

福祉に関わる方や企業担当者だけでなく、自身の体験を社会へ活かしたいと考えている当事者の方にとっても、インクルーシブデザインやリードユーザーという選択肢は今後ますます重要な意味を持つと考えられます。


Written by

菅間 大樹

findgood編集長、株式会社Mind One代表取締役
雑誌制作会社、広告代理店、障害者専門人材サービス会社を経て独立。
ライター・編集者としての活動と並行し、就労移行支援事業所の立ち上げに関わり、管理者も務める。職場適応援助者(ジョブコーチ)養成研修修了。
著書に「経営者・人事担当者のための障害者雇用をはじめる前に読む本」(Amazon Kindle「人事・労務管理」「社会学」部門1位獲得)がある。
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