【障害福祉】松戸の就労継続支援B型事業所がネパールで「そば試食授業」を実施

特定非営利活動法人なかよし学園プロジェクトは、ネパール・ルンビニ州の学校で、松戸市の就労継続支援B型事業所「ハッピーワーク松戸」と連携した日本文化体験授業を実施しました。この授業では、ハッピーワーク松戸が取り組む「そば」が日本文化の教材として活用され、現地の児童生徒は箸の使い方を学びながら、そばを試食する貴重な体験をしました。

黄色の制服を着た少年たちが、青いテーブルで箸を使った学習アクティビティに取り組んでいます。笑顔で互いに教え合い、楽しんでいる様子が伺えます。

子どもたちは初めて触れる日本の食文化に笑顔を見せ、教室には国や文化を越えた交流の時間が生まれました。ハッピーワーク松戸は、障害のある方々がそば店スタッフ、農業スタッフ、そば製品スタッフとして技術を習得しながら働く就労継続支援B型事業所です。同事業所が展開する「戸定そば幸」は、松戸市の推奨品にもなっています。

今回の取り組みは、単なる日本文化の紹介にとどまりません。松戸で働く人たちの技術、商品、そして日々の仕事が、海を越えてネパールの子どもたちの学びを支える教材となった、実践的な国際協力の形と言えるでしょう。

【国際教育】地域福祉と融合した「世界とつながる学び」の実現

なかよし学園プロジェクトは、「日本のいいもので世界を応援する」をテーマに、世界10か国で教育支援活動を展開しています。地元・松戸をはじめとする日本各地の学校、自治体、企業、福祉事業所と連携し、「世界とつながる学び」を推進しています。

明るい教室で、一人の男性が生徒たちに向かって話している様子。多くの子供たちが制服を着て机に座り、男性の話を熱心に聞いている。プロジェクターや天井扇風機も見える、活気ある学習風景です。

黄色の制服を着た多くの生徒が青い机に座り、男性講師から指導を受けている教室の様子。生徒たちは皆、棒状の物を持って熱心に授業に参加しています。

今回のネパールでの活動では、日本語のあいさつ、箸の使い方、そばの試食を通じて、日本文化を体験的に学ぶ授業が行われました。現地の児童生徒にとって、そばを食べることは初めての経験であり、箸を使うことにも挑戦しました。最初は戸惑いながらも、友達同士で笑い合い、教え合いながら食文化を体験する姿が見られました。

なかよし学園プロジェクトが重視しているのは、「モノを届ける」ことだけではありません。日本の地域で生まれた仕事や学びを世界の教室で教材化し、その反応を日本に還すことで、地域の人たち自身が「自分たちの仕事が世界の誰かを支えている」と実感できる循環をつくることを目指しています。

教室で男性が子どもたちに何かを教えている風景。男性は小さな物体と棒を持ち、制服姿の生徒たちは熱心に彼の話に耳を傾け、中には棒を持っている子もいる。

教室で、一人の男性が多数の生徒たちに箸と食べ物を使って何かを教えている様子。生徒たちは黄色や青の制服を着て、興味津々に男性のデモンストレーションを見ている。楽しそうな学習風景がうかがえる。

ハッピーワーク松戸となかよし学園プロジェクトの出会いから、ネパールでの「そば試食授業」の実現までには、継続的な交流がありました。なかよし学園プロジェクトはハッピーワーク松戸を複数回訪問し、利用者が働く姿やそば作りに関わる仕事の様子を見学。その中で、「皆さんの仕事が、いつか世界の子どもたちの学びにつながる」というメッセージを伝え続けてきたといいます。

この言葉が、今回ネパールの教室で現実のものとなりました。障害のある方々が地域の中で積み重ねてきた仕事が、国際協力の現場で教材となり、子どもたちの笑顔と学びを生み出したのです。これは、福祉事業所の活動を地域内に限定するのではなく、世界とつなぐことで新しい社会的価値を生み出す試みとして注目されます。

飲食店らしき厨房で、黒いバンダナを巻いた料理人が揚げ物をしており、その隣には別のスタッフも作業している様子が写っています。

揚げたての海老天ぷらが数尾、長方形の皿に盛り付けられています。衣はサクサクとした黄金色で、一部の海老には頭も付いており、新鮮さが伝わってきます。添えられた薬味と共に、美味しそうな和食の様子を捉えた一枚です。

調理用にカットされたかぼちゃ、レンコン、ナス、ピーマンなどの様々な野菜が金属製の容器に並べられています。料理の下準備の段階を示している画像です。

大きな赤と黒のボウルの中で、人が両手を使って粉状の材料を混ぜている様子。蕎麦打ちなどの調理工程の一部と見られる。

【インクルーシブ教育】「支援される側から支援する側へ」リターンループ型モデルの可能性

なかよし学園プロジェクトの取り組みは、ユネスコ関連機関の「Inclusive Education in Action」において、「From being supported to becoming supporters: A return-loop inclusive learning model」として紹介されています。この事例では、障害のある日本の児童生徒が、海外の紛争・貧困地域の子どもたちに向けて教材や平和に関する作品を制作し、それを届け、現地からの反応を受け取り、再び学びを深める循環型の教育モデルとして説明されています。

3人の人々がレストランで楽しそうに食事をしている様子です。テーブルには蕎麦と天ぷらが並び、皆笑顔で和やかな雰囲気です。

このモデルの中心にあるのは、「支援される人」と「支援する人」を固定しない考え方です。「Inclusive Education in Action」の事例紹介でも、障害のある学習者や危機下にある子どもたちを、単に支援の受け手としてだけでなく、互いを支える主体へと転換することが目的として示されています。

広島市立特別支援学校とNPOなかよし学園プロジェクトによるインクルーシブ教育事例を紹介するウェブページです。日本の障害のある学習者が紛争影響国の子どもたちのために教材を作成し、両者が支援者となる「リターンループ」モデルを通じて、尊厳と包摂的な学校文化を育む取り組みが説明されています。

今回のハッピーワーク松戸との連携も、この考え方を福祉と就労の領域に広げたものです。日本の就労継続支援B型事業所で働く人たちの仕事が、ネパールの子どもたちに日本文化を届ける教材となりました。これは、福祉の現場で「支援を受ける側」と見られがちな人たちの仕事が、世界の子どもたちを支える力になったことを示しています。

【障害者雇用】障害者支援とインクルーシブ教育をめぐる現状と課題

世界では、障害のある人々とない人々の間に、教育、雇用、貧困、情報アクセスなど多くの格差が残されています。国連の「Disability and Development Report 2024」では、食料不安、保健、エネルギー、ICTアクセスなどに10ポイント以上の格差があり、多次元貧困や雇用では20ポイント以上の格差が残っていると報告されています。

雇用面でも課題は大きく、同報告では、障害のある人の失業率は10%で、障害のない人の8%より高く、障害のある若者は、障害のない若者と比べて、就労・教育・訓練のいずれにも参加していない状態になりやすいとされています。

日本においても、障害者雇用は前進している一方で、制度上・社会上の課題は残っています。厚生労働省の令和6年障害者雇用状況では、民間企業における雇用障害者数と実雇用率は過去最高を更新し、雇用障害者数は67万7,461.5人、実雇用率は2.41%となりました。一方、法定雇用率達成企業の割合は46.0%にとどまっています。

また、就労継続支援B型は、一般企業で雇用契約に基づいて働くことが困難な人に対して、就労の機会と生産活動の機会を提供する制度です。厚生労働省は、B型事業所を含む就労系障害福祉サービスを、障害のある人の働き方を支える重要な仕組みとして位置づけています。

今回の活動は、こうした障害者就労支援を単なる「福祉サービス」としてだけでなく、「社会に価値を生み出す仕事」として再定義する取り組みです。松戸で働く人たちの技術や商品が、世界の教室で文化体験と学びを生み出したことは、共生社会の実現に向けた具体的な一歩といえるでしょう。

【共生社会】誰もが誰かを支える「共創社会」の実現へ

UNICEFは、障害のある子どもたちが多くの国で、障害のない子どもたちよりも学校に通えていない割合が高いと指摘しています。また、学校参加を妨げる要因として、障害への理解不足、訓練を受けた教員の不足、教室内支援やアクセシブルな施設の不足などを挙げています。

この課題に対して必要なのは、障害のある人を「保護される存在」として囲い込むことではなく、社会参加の機会を広げ、その人の力が誰かの学びや暮らしを支える経験をつくることです。

教室で、笑顔の子供たちが女性と交流し、箸を使ったアクティビティを楽しんでいる様子。黄色い制服を着た子供たちの楽しそうな表情が印象的で、和やかな学習の場がうかがえます。

黄色い制服を着た女子学生たちが部屋に集まり、笑顔を見せています。一人の女子学生が箸で食事をしており、別の人物が彼女たちと交流している様子がうかがえます。学校や集会所のような場所で、和やかな雰囲気が感じられます。

今回、ネパールの子どもたちが体験したそばの授業は、日本文化を知る時間であると同時に、松戸で働く人たちの仕事が世界とつながる時間でもありました。そこには、「誰もが誰かを支えることができる」というインクルーシブ教育の本質があると言えるでしょう。

教室のような場所で、多くの男子生徒と数人の大人が集まっている様子。生徒たちは黄色と赤の制服を着ており、青い机を囲んで、一人の生徒が箸とコップを使って何かを実演している。他の生徒や大人が興味深く見つめており、活気のある学習活動の場面が捉えられている。

黄色い制服を着た少年が、透明なカップと棒を使って何かを混ぜている様子です。隣には別の少年もおり、学校の教室のような場所で実験か学習活動に取り組んでいるように見えます。少年は笑顔で、楽しんでいる様子が伺えます。

なかよし学園プロジェクトが目指すのは、誰もが自分の好きなこと、得意なこと、日々の仕事を通じて、誰かを支えることができる社会です。そばを作る人がいる。それを届ける人がいる。初めて箸を持ち、初めてそばを食べる子どもたちがいる。その笑顔が、また日本の地域に戻ってくる。この循環こそ、なかよし学園プロジェクトが取り組む「世界とつながる学び」です。

日本の飲食店前で、様々な背景を持つ人々が笑顔で拳を上げ、喜びと希望に満ちたポーズをとっています。一体感とポジティブな雰囲気が伝わる一枚です。

支援は、一方通行ではありません。日本の地域が世界を支え、世界の子どもたちの笑顔が日本の地域を励ます。なかよし学園プロジェクトは、教育、福祉、地域産業、国際協力をつなぎながら、共創社会の実現に向けた実践を続けています。

なかよし学園プロジェクトの中村雄一代表は、「障害のある人たちは、社会の中で『支援される側』と見られることが少なくありません。しかし、なかよし学園が大切にしているのは、誰もが誰かを支える力を持っているということです。松戸で生まれた仕事が、ネパールの子どもたちに日本文化を伝え、笑顔を生み出した。この事実は、共生社会を考える上でとても大きな意味を持っています」とコメントしています。

SDGsに関する展示イベントで、女性2人が笑顔でポーズをとっています。カラフルなロゴや、貧困、教育、ジェンダー平等、気候変動など、世界各地からのメッセージが書かれたパネルが設置されています。国際協力や社会貢献への意識を高めるための催しです。

世界平和は、特別な人だけがつくるものではありません。そばを作ること、働くこと、誰かに届けること。その一つひとつが、世界とつながり、平和をつくる力になる可能性があるでしょう。これからも、地域の中にある素晴らしい仕事や学びを世界につなぎ、誰もが「自分も世界をよくする一人なんだ」と感じられる社会をつくることが期待されます。

【就労支援】連携する団体について

ハッピーワーク松戸の取り組み

ハッピーワーク松戸は、千葉県松戸市にある就労継続支援B型事業所です。障害のある方々が、そば店スタッフ、農業スタッフ、そば製品スタッフとして技術を習得しながら働いています。店舗で経験を積んだスタッフによる技術指導と、福祉スタッフによる個別サポートを通じて、一人ひとりに合った働き方を支援しています。

黒いバンダナとエプロンを着用した人物が、大きなエビの背わたをハサミで丁寧に取り除いている様子。厨房のような場所で料理の下準備をしている場面です。

目隠しをした男性が厨房で調理作業をしている様子。おたまを使って液体を鍋から別の鍋へ移している。

厨房でマスクを着けた料理人が、手打ちの麺(そば)を準備している様子。飲食店の調理風景で、衛生用品も見える。

特定非営利活動法人なかよし学園プロジェクトの活動

なかよし学園プロジェクトは、世界10か国で教育支援活動を行うNPOです。日本国内の学校、自治体、企業、福祉事業所と連携し、日本の子どもたちや地域の人々が学び、作り、考えたものを海外の教育現場へ届ける「世界とつながる学び」プロジェクトを展開しています。

活動の特徴は、支援物資を一方的に届けるのではなく、現地で活用された様子や子どもたちの反応を日本へ還す「Return Loop」にあります。この循環を通じて、日本の子どもたちや地域の人々が、自分たちの学びや仕事が世界につながる実感を得ることを目指しています。

黄色い壁の部屋で、一人の女性が子供たちに折り紙のような紙細工を見せています。多くの子供たちが笑顔で上を見上げ、興味津々でその様子を楽しんでいます。周りの大人たちも携帯電話で撮影しており、和やかで楽しい交流の瞬間を捉えた一枚です。

グレーの背景に、赤、青、黄、オレンジなど様々な色の折り鶴が多数並べられています。日本の伝統的な折り紙アートが美しく表現されています。

なかよし学園プロジェクトの活動に関する詳細は、以下のリンクからご覧いただけます。

まとめ

松戸市の就労継続支援B型事業所ハッピーワーク松戸と特定非営利活動法人なかよし学園プロジェクトによるネパールでの「そば試食授業」は、障害福祉と国際協力、インクルーシブ教育が連携した、まさに「支援される側から支援する側へ」という新しい共生社会のモデルを示しています。障害のある方々の「働く力」が世界の笑顔と学びにつながるこの取り組みは、私たち一人ひとりが社会に貢献できる可能性を改めて教えてくれるでしょう。このような活動がさらに広がり、誰もが互いを支え合える「共創社会」の実現が期待されます。

Written by

菅間 大樹

findgood編集長、株式会社Mind One代表取締役
雑誌制作会社、広告代理店、障害者専門人材サービス会社を経て独立。
ライター・編集者としての活動と並行し、就労移行支援事業所の立ち上げに関わり、管理者も務める。職場適応援助者(ジョブコーチ)養成研修修了。
著書に「経営者・人事担当者のための障害者雇用をはじめる前に読む本」(Amazon Kindle「人事・労務管理」「社会学」部門1位獲得)がある。
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