困難を抱える学生を「つながり」で支えるパルシステム給付型奨学金

パルシステム連合会とグループ10生協が設立した一般財団法人パルシステム若者応援基金は、経済的な困難やさまざまな背景を抱える学生たちをサポートする「パルシステム給付型奨学金」を運営しています。この奨学金制度の最大の特徴は、単なる金銭的支援にとどまらず、地域と連携した「伴走支援」を通じて、学生一人ひとりの成長と自立を多角的に見守る点にあります。

2026年3月24日には、オンラインで伴走支援団体の活動報告会が開催されました。この報告会では、2025年度に卒業を迎える奨学生に寄り添ってきた3団体が、その活動内容と学生たちの成長について報告。多様な大人たちとの「つながり」が、若者の未来をどのように拓いてきたかが共有されました。

具体的な伴走支援事例:学生の課題に寄り添う個別サポート

パルシステム給付型奨学金は、全国19の伴走支援団体と連携し、学生の個別課題に応じたきめ細やかなサポートを提供しています。

一般社団法人学生助けたいんじゃー(静岡市)

HIROSHI TSUTOMI氏がオンライン会議でPowerPointを操作中の画面。静岡市を拠点とする「一般社団法人 学生助けたいんじゃー」の活動内容を紹介するプレゼン資料が表示されている。

静岡市を拠点とする一般社団法人学生助けたいんじゃーは、2021年にコロナ禍で困窮する学生への食料配付をきっかけに設立されました。この団体からは、2人の奨学生が卒業しました。

一例として、看護師国家試験直前に金銭的困窮と家庭内の精神的ストレスで体調を崩しかけていた学生が、奨学金に推薦されました。精神保健福祉士の資格を持つ伴走者によるカウンセリング機能が、学生が抱える悩みを相談できる大きな助けとなりました。また、スクールカウンセリングを通じて発達障害が判明し、医療につながった学生もいます。多額の医療費がかかる中で奨学金を活用し、居住福祉に携わる卒業生の伴走支援を受けながら、孤立することなく学生生活を送り、就職にも成功しました。

認定NPO法人居場所サポートクラブロべ(茨城県つくば市)

NPO法人居場所サポートクラブロベがパルシステム組合員向けに行った成果報告のプレゼンテーション画面です。背景には桜の画像が使われ、2026年3月24日の日付が記されています。

茨城県つくば市の認定NPO法人居場所サポートクラブロべからは、1人の奨学生が卒業しました。この団体は、東日本大震災後に学童として始まり、現在は無料学習支援や子ども食堂など、地域の多様な課題に対応する居場所を提供しています。

9年前に市役所のケースワーカーの紹介で相談に来た学生は、家庭内の問題を抱えながらも無料学習塾を居場所として乗り越えました。高校進学後、プログラミングに興味を持ち大学進学を希望しましたが、父親との間で就職を巡る意見の相違がありました。団体と家族との面談を経て、本人の意思と成績が確認され、情報系学部への推薦合格を勝ち取ります。4年間、団体への報告を欠かさず、希望するソフトウェア開発企業への就職を決めました。理事長の森氏は、「支援によって、本当に挫折しそうな子ども達が救われている」と報告を締めくくりました。

認定NPO法人ブリッジフォースマイル(東京都港区)

2026年3月24日に開催された「パルシステム伴走支援団体報告会」のプレゼンテーションスライド。賑やかな街並みのイラストと「Bridge for Smile」のロゴが特徴的で、人々の交流が描かれている。

東京都港区の認定NPO法人ブリッジフォースマイルからは、2人の奨学生が卒業しました。この団体は、2004年から親を頼れない若者の支援を目的として活動し、主に社会的養護下にあった若者の自立支援を行っています。

社会人を経験してから専門学校に入学した奨学生は、実習がうまくいかず、自身の特性と職業が合わないことを認識しました。障害者手帳を持っていたことから、障害者就労相談支援センターでの面談を通じて、就労を支援する「ジョブコーチ」が付く行政事務職への内定を獲得。学んだ専門知識とは異なる職業ではあったものの、団体の伴走支援により自身の適性に合った就職につながりました。

学びと成長を促す社会体験プログラムと利用者からの温かい支援

パルシステム給付型奨学金は、毎月の奨学金給付に加え、奨学生が多様な経験を積める社会体験プログラムも提供しています。学業やアルバイトで忙しい学生が多い中でも、年間を通して社会とつながる貴重な機会が設けられています。

産地・生産者との交流で広がる視野

奨学生たちは、産直産地での農業体験や生活困窮者支援活動など、様々なプログラムに参加しています。2025年度は、11の企画に延べ81人が参加し、意欲ある7人は複数の企画に参加しました。

屋内会場で開催されている食品関連の展示会の様子。美勢商事や共生食品などの企業ブースが並び、スタッフが来場者と交流している。テーブルには肉や加工食品が展示され、活気ある商談が行われている。

会員生協が実施する商品展示会では、メーカーや取引先とともにパルシステム商品をアピールする経験を通じて、普段は触れ合うことのない立場の人たちと交流しました。また、愛媛県の柑橘産地「無茶々園」では、急斜面の畑での収穫体験も実施。自然に触れる機会が少ない学生たちにとって、農産物が育てられ、人々の手に渡る流通の過程を学ぶ貴重な経験となりました。参加した看護師を目指す学生は、「日頃の勉強ではできない体験が、私たちを大きく成長させてくれました」と感想を寄せています。

ビニールハウス内で2人の人物が緑色のトマトを収穫している様子。オレンジ色のコンテナが置かれ、手袋を着用して作業に励む農業の現場を捉えた一枚です。

みかん畑で二人の人物がたわわに実ったみかんを収穫しています。オレンジ色のバケツを使って丁寧に摘み取っており、豊かな自然の中で農作業をしている様子が伺えます。

支援の輪を広げる募金活動とサポーターの存在

この奨学金制度は、パルシステム利用者の募金によって支えられています。奨学生には毎月4万円が給付され、募金の一部は伴走支援をする19団体の活動費にも活用されます。2025年度の寄付は5,875万329円に上り、延べ募金額は2億6,075万7,626円となりました。法人サポーター13団体からの寄付も運営費として活用されています。

毎月一定額を寄付する「奨学生応援サポーター」は1万2,302人に達し、サポーターからは奨学生への温かいメッセージも多数寄せられています。多くの大人や団体に支えられているという実感は、学生たちの生活における安心感につながっているのです。

「見守りの仕組み」が高く評価!グッドデザイン賞受賞の背景

パルシステム給付型奨学金は、その独自の「見守りの仕組み」が評価され、2025年度グッドデザイン賞(主催:公益財団法人日本デザイン振興会)を受賞しました。

審査員からは、「社会経済の不安定化により給付型奨学金の需要が高まる中で、パルシステムが持つ顧客とのネットワークは、資金の調達力と活動の持続性に適合している」と評価されています。また、「全国的に事業展開するパルシステムが、各地域の団体と連携することで、学生の心身のサポートや進路相談に寄り添う細やかな対応ができていること、貧困家庭では社会との接点が少ないという課題に対して体験を行う支援は、利用者が抱える課題を深く掘り下げて生まれた解決策である」とのコメントが寄せられました。学生が安定して就業を全うすることを目的に構築された明確な取り組みとして、高く評価されたのです。

卒業生からの感謝のメッセージと未来への希望

今年度卒業する奨学生からは、パルシステムの利用者や伴走支援団体への感謝のメッセージが多数寄せられました。学生たちは、様々な経験を経て、自らも社会に貢献したいという意欲を語っています。

  • 「国際ボランティアや語学留学など貴重な体験を積み、充実した大学生活を送れました。今後は経験を糧に社会人として様々なことに挑戦し、失敗を恐れず人として大きく成長できるよう努力します」

  • 「社会人となり、皆様から助けてもらった恩を返す気持ちで、後輩たちの助けをできたら嬉しいです。パルシステムの制度を続けていくために、自分も今後力になりたいです」

  • 「経済的、精神的な負担が大きく軽減され、安心して学業に専念できました。伴走支援では困りごとや不安をいつでも相談でき、解決策を一緒に考えてもらい心強い支えとなりました。今後は社会に貢献できる人材となれるよう、より一層努力します」

学生たちのメッセージは、彼らが「つながり」の中で大きく成長し、未来への希望を抱いていることを示しています。一般社団法人パルシステム若者応援基金のウェブサイトでは、他の学生たちのメッセージも紹介されています。

パルシステム給付型奨学金制度は、2019年度に創設され、2年間のモデル事業を経て2021年度から本格運用を開始。2023年には「一般財団法人パルシステム若者応援基金」が設立され、制度の管理・運営が行われています。

パルシステムはこれからも、利用者や産地、地域の様々な団体と協同し、「つながり」の力で若者の成長を見守り、社会全体で未来を担う人材を育んでいくことでしょう。

 

Written by

菅間 大樹

findgood編集長、株式会社Mind One代表取締役
雑誌制作会社、広告代理店、障害者専門人材サービス会社を経て独立。
ライター・編集者としての活動と並行し、就労移行支援事業所の立ち上げに関わり、管理者も務める。職場適応援助者(ジョブコーチ)養成研修修了。
著書に「経営者・人事担当者のための障害者雇用をはじめる前に読む本」(Amazon Kindle「人事・労務管理」「社会学」部門1位獲得)がある。
https://www.amazon.co.jp/dp/B0773TRZ77