障害福祉や教育現場、ご家庭において、不登校や友だちとのトラブル、授業妨害といった子どもの「困った行動」に悩まれる保護者や支援者の方は少なくありません。行動の理由を子どもの内側だけに求めるのではなく、周囲の「環境」や「関わり方」に着目して望ましい行動を育むアプローチが「ポジティブ行動支援(PBS)」です。
本記事では、障害福祉や発達障害支援の領域でも注目を集めるPBSの基礎知識や、行動の理由を整理する「ABCフレームシート」の活用法について解説します。さらに、株式会社Gakkenより発売された書籍『マンガと図解でわかる はじめてのPBS』の内容を交えながら、学校や家庭で今日から取り入れられる具体的な支援のアプローチをご紹介します。
この記事で分かること
- ポジティブ行動支援(PBS)の基本概念と障害福祉・発達障害支援における意義
- 子どもの「困った行動」を個人の責任にせず「環境」から理解する捉え方
- 「ABCフレームシート」を用いた行動の整理・分析手法と具体的アイデア
- 書籍『マンガと図解でわかる はじめてのPBS』の章構成とダウンロード特典の活用法
- PBS導入や対応方法に関する読者向けQ&A
障害福祉や学校現場で注目される「ポジティブ行動支援(PBS)」とは?
PBS(Positive Behavior Support)の基本定義と障害福祉における重要性
「ポジティブ行動支援(PBS)」とは、英語の「Positive Behavior Support」の略称であり、日本語ではポジティブ行動支援と訳されるアプローチ手法です。障害福祉や発達障害(ASDやADHDなど)のある子どもへの支援、通級指導、特別支援教育、ご家庭での子育てなど、幅広い場面で活用が期待されています。
福祉や教育の現場では、不登校や教室からの飛び出し、友だちとのトラブルといった不適応行動に対して、大人が強い指導や叱責で対応してしまうケースが見られることがあります。しかしPBSでは、適切な行動をポジティブに支援・増加させることを目指し、子ども自身も「こんな自分になりたい」と希望を持って楽しく過ごせる環境づくりを重視しています。
なぜ「子どもの内側」ではなく「環境」に目を向ける必要があるのか?
子どもがやるべきことをやらなかったり、周りとトラブルを起こしたりした際、つい「本人のやる気や性格」「障害の特性」といった子どもの内側に原因を探してしまいがちです。
しかしPBSの考え方では、「行動には必ず理由が存在し、その理由は行動が起こっている周囲の『環境』や『関わり方』の中にある」と捉えます。行動そのものを責めるのではなく、光を当てるべきは周囲の環境です。環境や大人の対応を変えることによって、子どもが望ましい行動を取りやすくなるようサポートしていきます。
発達障害や学校のお悩み解決に役立つPBSの具体的アプローチ
行動の理由を整理する「ABCフレームシート」の仕組みと解説
PBSを実践する上で中心的な役割を果たすツールのひとつが**「ABCフレームシート」**です。
専門用語である「ABC」とは、行動を以下の3つの要素に分解して観察・分析するフレームワークを指します。
- A(Antecedent:先行事象):行動が起こる直前の状況や環境
- B(Behavior:行動):実際に生じた子どもの具体的内容
- C(Consequence:結果):行動の直後に起きた環境の変化や大人の反応
この「ABCフレームシート」を用いて状況を見直すことで、子どもがなぜその行動をとったのかという「行動の理由(機能)」を客観的に把握しやすくなります。感覚や経験則だけに頼らず、シート上で要因を整理することによって、前向きで具体的な対応策を導き出しやすくなるとされています。
学校や家庭で生じやすい困った行動(不登校・暴言・教室飛び出し等)への対応アイデア
学校生活や家庭内では、季節や学期の変わり目における不調をはじめ、さまざまな「困った行動」やトラブルが発生します。
『マンガと図解でわかる はじめてのPBS』では、以下のような具体事例に対する捉え方や対応のアイデアが紹介されています。
- 「先生、見て!」が止まらない・過度なアピール
- 「いいよ」としか言えず自分の気持ちを表現できない場面
- 暴言を吐いてしまう問題行動へのアプローチ
- 授業中の教室からの飛び出しや不登校への支援
- 友だちとのトラブルが絶えない場合の調整
- 特定の子に支援が集中し学級経営が困難になるケース
- 大人同士(支援チーム)の連携がうまくいかない課題
これらの事例に対して、大人が力づくで抑え込むのではなく、大人の行動や関わり方自体をPBSの観点で見直す重要性が示されています。
マンガと図解で学べる入門書『マンガと図解でわかる はじめてのPBS』の特徴と活用法
第1章〜第4章の構成と学校・家庭での実践ポイント
株式会社Gakkenより発売された書籍『マンガと図解でわかる はじめてのPBS』(著:大対香奈子/漫画:川口真目)は、事例マンガと図解を用いてPBSの基本から実践までを分かりやすく解説した入門書です。
本誌の主な章構成は以下の通りです。
- 第1章:PBSってなんなんだ? 学校や家庭で、どんな役に立つの?
- 「苦手意識」がつくられるプロセスや、「できたら楽しい!」を育むアプローチ方法を解説。
- 従来の「ほめる」ことに対する誤解の整理や、大人の行動見直しについて提示。
- 第2章:ABCで「行動を理解する」ところから支援はスタート!
- 行動の理由を正しく把握するためのミニ事例を多数掲載。
- 子どもの行動を「先生からのSOS」と捉える視点などを紹介。
- 第3章:ABCで「こんなときどうする?」のアイデアどんどん!
- 暴言、教室飛び出し、友だちとのトラブル、学級運営やチーム連携の課題に対する具体的な解決アイデアを解説。
- 第4章:PBS体験談
- 実際にPBSを取り入れた現場の実践体験談を収録。
保護者・教員・福祉支援者が得られる具体的なベネフィットと特典データ
本書は保護者や学校の教員、障害福祉の支援者はもちろんのこと、子ども自身が楽しく過ごすためのヒントを見つけるうえでも役立つ一冊とされています。
さらに付録として、行動の理由と対策を整理するための「ABCフレームシート」および「行動の記録シート」の書き方が掲載されています。これらのシートデータはPDFやPowerPoint形式で取得可能な仕組みとなっており、学校や福祉現場、家庭での実践にすぐ活用できる点が大きな魅力です。
【書籍概要】
- タイトル:『マンガと図解でわかる はじめてのPBS 子どもと学校のお悩みはポジティブ行動支援で解決!』
- 著者:大対香奈子(著)/ 川口真目(漫画)
- 出版社:株式会社Gakken(株式会社学研ホールディングスのグループ会社)
- 発売日:2026年9月24日
- 定価:2,310円(税込)
- 仕様:A5判/176ページ/ISBN 978-4-05-802798-1(電子版あり)
障害福祉・子どもの行動支援に関するよくある質問(Q&A)
Q1: ポジティブ行動支援(PBS)は発達障害のある子どもだけに有効ですか?
A1: 発達障害(ASDやADHDなど)のあるお子様への支援として注目されることが多いPBSですが、特定の診断の有無にかかわらず有効とされています。学校や家庭、地域社会などで行動面のお悩み(やるべきことをやらない、周囲との摩擦など)を抱えるあらゆる子どもや大人との人間関係・環境調整に応用可能です。
Q2: 「ほめる」こととPBSにおけるポジティブ支援の違いは何ですか?
A2: PBSでは単に闇雲に子どもを「ほめる」ことだけを目的としているわけではありません。本書の第1章でも「ほめる」ことに対する誤解が取り上げられているように、なぜその行動が起きているのかという「ABC(環境と結果)」の文脈を理解したうえで、子どもが「できたら楽しい!」と感じられるような環境設定や具体的な関わり方を組み立てていく点が特徴です。
Q3: 「ABCフレームシート」などの実践ツールはどのように入手できますか?
A3: 書籍『マンガと図解でわかる はじめてのPBS』の付録にて、シートの書き方の解説とともに「ABCフレームシート」や「行動の記録シート」のデータ(PDF・PowerPoint形式)の取得方法が提供されています。ダウンロードしたデータを活用することで、パソコン上で編集したり印刷して現場で共有したりすることが可能です。
まとめ:環境へのアプローチで子どもと支援者の双方に安心を
子どもの「困った行動」に直面した際、本人の性格や精神論だけに原因を求めるのではなく、周囲の「環境」や「大人の関わり方」に目を向けるポジティブ行動支援(PBS)は、障害福祉や教育の現場に新たな視点をもたらします。
「ABCフレームシート」を活用して行動の理由を客観的に整理することで、子どもを責めずに済む具体的な対応策や支援アイデアが見えてきます。子ども自身が楽しく過ごせるようになると同時に、関わる保護者や教員、支援者にとっても環境やチームワークを円滑に整えられるメリットが期待されます。
『マンガと図解でわかる はじめてのPBS』などの書籍や実践シートを参考に、ご家庭や福祉・教育の現場で一歩ずつ環境づくりに取り組んでみてはいかがでしょうか。

