「障害福祉」や「DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)」という言葉を耳にする機会が増えた一方で、「具体的にどのような取り組みが行われているのか」「自分たちの組織や暮らしにどう関係するのか」と疑問を感じている方も多いのではないでしょうか。
本記事では、株式会社ヘラルボニーが展開する体験型DE&I研修プログラム『HERALBONY ACADEMY』が、厚生労働省後援の「HRアワード2026」プロフェッショナル人材開発・育成部門で最優秀賞を受賞したプレスリリースをもとに、障害福祉の新しい可能性について解説します。
📌 この記事で分かること
- HERALBONY ACADEMY受賞の背景:厚生労働省後援「HRアワード2026」最優秀賞を受賞した評価のポイント
- 体験型DE&I研修の特徴:謎解きゲームや当事者講師との対話を通じて知識を「行動変容」へとつなげる仕組み
- 障害福祉の新たな価値観:障害のある人が「支援される対象」から「学びを創り・届ける主体」へ転換する意味
- 実務と意識への変化:受講者満足度99%以上・行動変容実感89%を記録する実績と導入企業の反響
障害福祉の新しい視点:「支援される対象」から「社会を動かす主体」へ
専門用語をわかりやすく解説:DE&Iと障害福祉の基礎知識
障害福祉や組織づくりを考える際に出てくる基本的な専門用語について解説します。
- DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン): 多様性(Diversity)、公平性(Equity)、包摂(Inclusion)の頭文字をとった概念です。単に多様な人が集まるだけでなく、一人ひとりの置かれた状況に応じた配慮(エクイティ)を行い、誰もが能力を発揮して認め合える環境(インクルージョン)をつくる取り組みを指します。
- 障害福祉(しょうがいふくし): 障害のある方が自分らしい日常生活や社会生活を送れるよう、権利擁護、就労支援、生活サポート、バリアフリー化などの制度や活動全般のことです。
- 当事者(とうじしゃ): 障害や特定の困難を経験しているご本人を指します。福祉の領域では長年「ケアや支援を受ける側」として捉えられがちでしたが、近年では「経験や視点を社会に還元する主体」としての役割に注目が集まっています。
障害を「欠損」ではなく「異彩」として捉え直す視点
岩手県盛岡市に本社を置く株式会社ヘラルボニーは、「異彩を、放て。」をミッションに掲げ、障害のある作家が描く2,000点以上のアート作品をライセンス管理するなど、福祉を起点とした新たな文化創出に取り組む企業です。
これまで障害福祉の分野では、障害を「社会的にカバーすべき課題」と捉える傾向がありました。しかし、ヘラルボニーは障害のある方が持つ独自の感性や視点を「異彩」と定義し、社会に新たな価値を生み出す力として提案しています。この思想は、企業の従業員育成やダイバーシティ推進の現場にも大きな変化をもたらしています。
「HRアワード2026」最優秀賞を受賞した『HERALBONY ACADEMY』とは?
知識で終わらせない「体験型DE&I研修」のプログラム内容
日本の人事部が主催し、厚生労働省が後援する「HRアワード」は、人・組織の成長を促す取り組みを表彰する国内最大級の表彰制度です。2026年は377件の応募の中から一次選考を通過した18件が入賞し、全国41万人のHRパーソンによる投票と選考委員会の最終選考を経て、企業向けDE&I研修事業『HERALBONY ACADEMY』がプロフェッショナル人材開発・育成部門の最優秀賞に選出されました。
『HERALBONY ACADEMY』は、「80億人がちがいを面白がれるほうの世界へ。」というビジョンを掲げています。従来の座学中心の研修とは異なり、以下のような多角的な体験を通じて学びを提供しています。
- 謎解きゲーム型ワークショップ・カードゲーム:体験を通じて無意識の思い込みに気づく
- 福祉施設訪問・アート創作:多様な表現や環境に直接触れ、前提を問い直す
- 障害のある当事者講師との対話:実際の生活や社会との関わりの中で培われた視点を共有する
当事者の実践知とアカデミックな知見を掛け合わせることで、概念の理解にとどまらず日常の行動変化へとつなげる設計が高く評価されました。
満足度99%・行動変容実感89%を支える実績
『HERALBONY ACADEMY』は、これまでに約60団体・5,500名以上に提供されています。受講者アンケートでは、満足度99%以上、89%が行動変容を実感したという高い数値が報告されています。
講義を聞くだけでは得られにくい「自分の中にある固定観念への気づき」や「自分ごととしての発見」を重視している点が、受講者や企業からの厚い信頼につながっていると考えられます。
当事者が「届ける側」に立つ組織づくりと導入企業の反響
ろう者のコンテンツ開発者・菊永ふみ氏らが込めた想い
本プログラムの背景には、当事者自身が研修の開発や発信に深く携わっているという大きな特徴があります。
『HERALBONY ACADEMY』でコンテンツ開発を担う菊永ふみ氏は、ろう者であり、特別支援教育専攻科を修了後、児童指導員や「異言語Lab.」代表理事として活躍してきた経歴を持ちます。菊永氏は受賞にあたり、次のように述べています。
「障害のある人が人材開発・育成において『支援される対象』ではなく、『つくる側・届ける側』としてメインストリームに立っています。障害のある人には、一人ひとり異なる身体や感覚があり、社会や環境との間で試行錯誤してきた経験があります。その経験の中には、これからの組織や社会を考えるうえで突きつけられる深い問いがあります。」
また、ヘラルボニー代表取締役Co-CEOの松田文登氏も、「違いは、克服されるものではなく、未来をつくる力になり得る」と語り、人間の眼差しそのものを変革していく重要性を指摘しています。
導入企業や専門家から寄せられた声
研修を導入した企業や専門家からも、具体的な成果や視点の変化について評価が寄せられています。
- 株式会社グロービス マンジング・ディレクター 南和宏氏: 「違いを受け入れるだけでなく、異彩を可能性として捉え、組織や社会の力に変えていこうとする思想に共感している」。
- 一般社団法人UNIVA理事 野口晃菜氏: 「『誰かのためのDE&I』ではなく『自分を含むみんなのためのDE&I』を学べる。受けた後には全く異なる眼鏡で自分や組織を見ているはず」。
- dentsu Japan CDO 口羽敦子氏: 「自分の中にある『普通』が揺さぶられる体験を通じて感じた発見や違和感が、ものの見方や行動を変えていく」。
- ヤマハ発動機株式会社 安藤桃子氏: 「課題にはそれぞれ個性があり、アプローチも個別に設計する必要があるという視点を得られた」。
Q&A

読者の皆様からよく寄せられる疑問について、Q&A形式でまとめました。
Q1. なぜ今、企業や社会で障害福祉やDE&Iの理解が必要なのですか?
A. 多様化した現代社会において、一律の価値観や環境だけでは捉えきれない課題が増えているためです。障害福祉やDE&Iの視点を取り入れることで、従来の「当たり前」を問い直し、環境や環境との相互作用を見直す契機となります。これにより、組織の柔軟性や新たなアイデア創出(イノベーション)につながると期待されています。
Q2. HERALBONY ACADEMYの研修は一般の研修と何が違うのですか?
A. 最大の違いは「講義を聞くスタイル」ではなく「自ら体験し当事者と対話するスタイル」である点です。カードゲームやワークショップ、当事者講師との対話を通じて、自分の中にある無意識の思い込みに直面し、腹落ちした深い気づきと行動変容を得られる点が特徴です。
Q3. 個人や小さな組織でも障害福祉への関心を高めるためにできることはありますか?
A. まずは自分の周囲にある「当たり前」や「違い」に目を向け、多様な立場の人々の言葉や作品、体験イベントに触れてみることが第一歩です。例えば、地域で開催されるイベントやアート展示(下北沢で開催された「FUNclusion Week」のような試みなど)に参加することでも、新しい視点を得ることができます。
まとめ:ちがいを面白がる視点が創る、これからの障害福祉と共生社会

「HRアワード2026」で最優秀賞を受賞した『HERALBONY ACADEMY』の取り組みは、障害福祉が持つ大きな可能性を社会に示しました。
障害を単に「克服すべき対象」や「支援を必要とする課題」として見るのではなく、社会の見方を広げ、一人ひとりの個性を強みとして活かす「未来をつくる力」へと捉え直すことが求められています。
一人ひとりが日常生活や職場の中で「ちがい」を排除せず、面白がり、対話していく姿勢を持つことが、真のバリアフリーや共生社会の実現に向けた確かな一歩となるでしょう。

