Last Updated on 2023年4月26日 by 菅間 大樹

自然の恵み、どんぐりを生かした食品をつくる、バリアフリーな町の福祉やさん。

株式会社まちふくは2012年に設立された福祉サービス事業所(就労継続支援B型)です。

取材に伺ったのは、新築の真新しい香りが清々しい移転したばかりの建物。

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1Fは別の会社が運営する放課後デイサービスの事業所、建物に面したグラウンドには人工芝が敷き詰められ、共有の場所になっています。

フットサルが出来そうな広さのグラウンドは、身体を動かしたり、遊んだり、寝転んだり、ご飯を食べたりするのが楽しみになる気持ちの良い場所。

この新しい場所には現在21名のメンバーが在籍しています。

代表の田中 博士(ひろし)さんは、現役のダンサーでもあるという異色の経歴の持ち主です。

その特技を生かし、まちふくではどんぐりの加工食品の製造、販売の他、清掃等の活動に加え、自身のダンサーとしてのキャリアを生かしたダンスイベントやチャリティーイベントなどを行っています。 事業所のスタートから80名ほどのメンバーと関わり、時には新しい場所へと彼らを送り出してきた田中さんは「とにかく彼らの事が大好きで、それが全て」と最高の笑顔で語りま す。

そんなシンプルな動機から日々メンバーと一緒に活動している田中さんに、まちふくについてお話を伺いました。

自然の恵みを生かすどんぐりの食品

まちふくの事業で中心になっているのは「どんぐり」を使った食品の製造、販売。 「どんぐり」の食品と聞くと日本では珍しいかもしれませんが、韓国ではどんぐり茶やどんぐり粉を使ったお餅のような食品が、栄養価やダイエット効果が高いヘルシーなものとして広く流通しています。

まちふくがどんぐり食品の製造をはじめたきっかけは、縄文時代の生活や文化に造詣の深い「どんぐり源さん」こと平賀 国雄さんとの出会いです。

1929年8月生まれ、今年90歳を迎えるどんぐり博士の源さん。

仙人の修行をしたこともあるほど自分で創意工夫し取り組むことが大好きな方で、有機農法や竹炭、ケナフなどの研究を経て、縄文人が主食にしていた栄養価の高いどんぐりに辿りついたそうです。

現代ではほとんど廃棄されてしまうどんぐりを生かしたいと、どんぐりの食品や加工技術の研究を始め、今でもその研究心は衰えることがないそうです。

まちふくの職業訓練士でもある「どんぐり源さん」については、まちふくのHPでも紹介されていて、どんぐりを研究するに至った経緯や、自然と共生する生き方を大切にする想いや人柄が伝わってきます。 

源さんと田中さん
右がどんぐり源さんこと平賀国雄さん。代表の田中さんと一緒に。

「どんぐり源さん」との出会いから、まちふくでのどんぐり食品の製造がスタートすることになりますが、自然と共生する謙虚な姿勢はまちふくのどんぐり食品作りに深く根付いています。

まず、どんぐり食品作りの工程はどんぐりを集めに行くところから始まります。

まちふくでは、栄養価が高く、粒の大きめなマテバシイという種類のどんぐりのみを使用。 山よりも公園など街中に多くあるそうで、田中さんは今や車で走っていても遠目にマテバシイの樹を見分けられるそうです。

どんぐり
まちふくで使用されているマテバシイ。

どんぐりが製品になるまでの工程は驚くほど手の込んだ手作業で、 マテバシイの実を収穫→洗って→天日干し→フライパンで炒って熱殺菌→割って→中身を取り出します。

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どんぐりを一つ一つ割って中身を取り出す、根気のいる作業。

取り出した身は、製粉機で粉にしたあと、ふるってクッキーやドーナツを作るパウダーとお茶にするものに分けられます。 どんぐり粉は工場に送られてクッキーやドーナッツ、ワッフル、煎餅、麺などに加工され、お茶はまちふくで丁寧に焙煎され、製品となります。

どんぐり製品
ワッフルは小麦粉を使わないグルテンフリー食品。
どんぐり茶は香ばしく、麦茶よりも甘みがあってまろやかな味。

まちふくで扱うどんぐりは年間1トンになるそうで、その自然の恵み、どんぐりが丁寧な手作業を経て、地産地消、自然の恵みを存分に生かした食品として生まれ変わります。

マテバシイは渋みが少なく、甘みがあり、カルシウム、マグネシウム、リンがバランスよく含まれています。またポリフェノールをブルーベリーより多く含み、抗酸化作用、解毒作用(デトックス効果)があり、コレステロールや中性脂肪が高めの人に良い不飽和脂肪酸を多く含む、健康食品でもあるそうです。

どんぐりがもたらす自然への感謝

どんぐりを集めるところからはじまる食品作りを続けていると、心から自然に対する感謝の気持ちが湧くと田中さんは言います。

毎年、どんぐりの収穫が終わると、どんぐりの樹に向かって、今年も本当にありがとうございますと自然に手を合わせてしまうそう。

どんぐりを通じて感じる、「人は自然の営みの中に生かされている」という、シンプルであたりまえのこと。自然と湧き上がる感謝の気持ち。

田中さんのお話からは、それがまちふくの活動の原点であることが伝わってきます。

「彼らの事が大好きだから」スタートから変わらないシンプルな動機

田中さんがまちふくをはじめることになったきっかけは、ダンサーとして参加したあるイベントでの出会いだったそうです。

チャリティーイベントして開催された、障害のある人もない人も踊りたい人は誰でも参加できるダンスパーティーで、初めて障害のある人たちと出会い、全身で楽しむ彼らにすっかり魅了され、大好きになってしまったといいます。

その出会いがまちふくのスタートにつながっていきました。 今でも年に数回、ダンスイベントは開催されていて、誰もが分け隔てなく自由に踊り楽しむ機会を提供し続けています。

ダンスパーティー
DJも入った本格的なダンスイベント。田中さんも参加者と一緒に楽しんで踊る。

なぜまちふくをスタートしたのか?という問いに

「彼らの事が大好きだから」と答える田中さんにとって、障害の特性はその人の個性の一つにすぎません。

どのような障害であっても、「ただでさえ自分の責任じゃない責任を背負って生きている、それだけですごいこと。」

「支援しているなんておこがましい、自分が助けられている、ありがとうという気持ちしかない」

「彼らと一緒にいるだけで毎日が楽しくてしかたない。本当に感謝している。」

という田中さんの言葉には、どんぐりにまつわる話と共通する、人としてのシンプルでナチュラルな生き方が現れています。

大好きなメンバーと接する田中さんは、メンバーに対しての向き合い方もとてもストレート。

皆が明るく元気なわけでなく、時には後ろ向きになったり、マイナスな思考や行動が強くなったり、いろんなメンバーと向き合うことがあります。

そういう時には、真摯に向き合って、原因や想いを探ることで、一歩ずつでも前に進めるのだと言います。

一人一人に寄り添う、というよりも向き合うという言葉が、田中さんの人に対する尊敬の念や想いを表しているように感じます。

「バリアフリー」な人、田中さん

田中さんは街で困っている人がいればすぐ声をかけてしまうそうで、

白杖で歩いている人がいれば自然に声をかける。

かけられた人が嫌だと思えば断るので、それでよいのだと言います。

駅のホームで何本も電車を見送っていたダウン症の男の子を見かけた時、 「なぜ電車に乗らないの?」と聞くと、「僕が乗るとみんなが迷惑だから」と言うのを聞いて、「そんなことがあるわけない、一緒に乗ろうよ」と彼の手をひいて電車に乗ったそうです。

障害あるなしにかかわらず、日本では知らない人に声をかけることは多くありません。また、声をかけようとしてもためらってしまう人も多いのではないでしょうか。

誰もが田中さんのように自然体で出来ないかもしれません。しかし、田中さんのような「バリアフリー」な人が増えれば、「障害」はなくなっていくのかもしれません。

取材の中で、わたしたちができることはいくらでもあるのだと、気づかされることがたくさんありました。

田中さん
現役のダンサーだけあってすらっとスタイルの良い、代表の田中さん。どんぐりのマスコットとどんぐり茶を持っておちゃめにポーズをとってくれました。

田中さんは、まちふくでやりたいことが、まだまだたくさんあると言います。

建物の窓から広がる景色を見ながら、いろんな人が活躍できる場を広げるために一つ一つやっていきたいと、話してくれました。 気持ちの良いグランドと、見晴らしのよい景色が広がる新しい場所で、まちふくの新しい日々が始まっています。

【まちふく】について

障害者就労継続支援B型事業所
どんぐり粉及びどんぐり製品の製造
チャリティーイベントの企画
障害者自立支援事業所の立ち上げサポートなど様々な活動を行っている

神奈川県横浜市瀬谷区阿久和南3-39-9-2階

website  http://www.machifuku.jp

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