トヨタ・モビリティ基金「Mobility for ALL」2026年度採択プロジェクト発表

一般財団法人トヨタ・モビリティ基金(TMF)は、障害の有無にかかわらず、誰もが移動を楽しみ、その移動によって広がる新たな可能性に挑戦できる未来を目指す「Mobility for ALL」プロジェクトにおいて、2026年度の採択チーム8組を発表しました。

Mobility for ALL 心も動く移動を、すべての人に。

「Mobility for ALL」プロジェクトとは?

「Mobility for ALL」プロジェクトは、モビリティ(移動)を通じてすべての人が豊かになれる社会の実現を目指し、障害のある方の移動に関する様々な課題解決に取り組んでいます。2022年度のプロジェクト開始から5年目となる2026年度は、「日常の移動」と「スポーツ観戦」の2つのテーマでアイデアが公募されました。

採択されたチームには、活動支援金、課題に応じた伴走支援、障害のある方と共に実施する実証機会などが提供されます。さらに、チーム間の交流会や展示会への出展、SNSを通じた活動内容の発信といった社会実装に向けた支援も行われます。

2026年度採択チームの革新的な取り組み

2026年度は、「成長支援コース」から7チーム、「実証機会提供コース」から1チームが採択されました。それぞれのチームがどのような課題に取り組み、どのようなソリューションを目指しているのかをご紹介します。

日常の移動:成長支援コース

日常の移動における課題解決を目指す4チームが採択されました。

  • 特定非営利活動法人: 知的障害や発達に障害のある方が、シンプルアイコンによるコミュニケーション支援アプリを活用し、自立した外出を支援する機器・サービスを開発・実証します。これにより、外出時の不安を軽減し、行動範囲の拡大が期待されます。

  • Human Physical Intelligence: パーキンソン病患者の「すくみ足」解消を目指した歩行リズムを提供する人工筋歩行アシストロボットの開発と実証を行います。「すくみ足」とは、パーキンソン病の症状の一つで、歩行を開始する際や方向転換時に足が地面に張り付いたように動かなくなる現象です。このロボットが、よりスムーズな歩行をサポートすることを目指します。

  • BOVLIFE株式会社: 視覚に障害(夜盲、視野欠損など)のある方に向けて、明るく欠損のない視野を提供するデジタルメガネの開発と実証を進めます。これにより、視覚情報が補完され、より安全で快適な移動が可能になることが期待されます。

  • dotlumen SRL: 視覚に障害のある方が、盲導犬に引かれている感覚で障害物を避けて歩くことができる小型スマートグラスの開発と実証を行います。触覚や聴覚を駆使し、周囲の環境を認識することで、自立した歩行を支援します。

スポーツ観戦:成長支援コース

スポーツ観戦のバリアフリー化を目指す3チームが採択されました。

  • SpoLive Interactive株式会社: 視覚や聴覚に障害のある方のために、独自のAI技術により生成された試合を楽しめる音声やテキストの実況を提供する機器・サービスを開発・実証します。これにより、試合の状況や興奮をリアルタイムで感じられるようになるでしょう。

  • 株式会社ビーライズ: 聴覚に障害のある方が専用のスマートグラスを用いて、試合状況、選手情報、応援熱量など新たな観戦価値を届けるXR観戦システムを開発・実証します。XR(Extended Reality:VR、AR、MRといった先端技術の総称)技術を活用することで、これまでにない没入感のある観戦体験が期待されます。

  • Dot incorporation: 視覚に障害のある方に、点字や図形を凹凸表示する触覚デバイスを通じて、試合経過やチーム・選手などの情報を伝える機器・サービスを開発・実証します。視覚情報に頼らずに、指先で試合の展開を「見る」ことが可能になります。

スポーツ観戦:実証機会提供コース

スポーツ観戦における実証機会を提供する1チームが採択されました。

  • lumivision LLC: 弱視・低視力など視覚に障害のある方のために、スマホ搭載型ヘッドセットを通じて視野を拡大・補正することで見えづらさを解消し、スポーツ観戦の楽しさを届ける実証を行います。これにより、スタジアムやアリーナでの生観戦のハードルが下がり、より多くの人がスポーツの感動を共有できるようになるでしょう。

社会実装に向けたTMFの支援と展望

トヨタ・モビリティ基金は、これらの採択チームに対して多角的な支援を提供し、開発されたソリューションの社会実装を強力に後押ししています。活動支援金、専門家による伴走支援、そして実際の利用者と共に進める実証の機会を通じて、各プロジェクトの成功をサポートします。

TMFは2014年8月に、トヨタ自動車が創業以来目指してきた「自動車を通じた豊かな社会づくり」の公益的な活動をさらに推進するために設立されました。世界中で移動課題への対応をはじめとした幅広いプロジェクトに取り組んでおり、「Mobility for ALL」はその活動の重要な柱の一つです。

誰もが移動を楽しみ、それぞれの可能性を追求できる共生社会の実現に向けて、これらの革新的なプロジェクトが今後どのように発展していくのか、注目が集まります。

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Written by

菅間 大樹

findgood編集長、株式会社Mind One代表取締役
雑誌制作会社、広告代理店、障害者専門人材サービス会社を経て独立。
ライター・編集者としての活動と並行し、就労移行支援事業所の立ち上げに関わり、管理者も務める。職場適応援助者(ジョブコーチ)養成研修修了。
著書に「経営者・人事担当者のための障害者雇用をはじめる前に読む本」(Amazon Kindle「人事・労務管理」「社会学」部門1位獲得)がある。
https://www.amazon.co.jp/dp/B0773TRZ77