「空き家発掘チーム」とは?障がい者雇用と地域課題解決の新たな挑戦

TEAMRとARUが発足した「空き家発掘チーム」は、これまでアプローチが難しかった「眠っている空き家」を発掘し、「Re活用」へと繋げることを目的としています。同時に、これらの業務を障がいのある方が担える業務モデルとして構築し、就労機会の創出を目指します。

具体的な業務内容と就労支援の現場での取り組み

「空き家発掘チーム」は、以下の方法で空き家へのアプローチを進めます。

  • Googleストリートビューを活用した空き家の捜索: 地域を広範囲に調査し、管理状態に課題がある住宅候補を抽出します。

  • Web・SNSを活用した所有者への情報発信・接触: 空き家活用に関する情報を、必要とする所有者へ届けます。

  • 空き家管理業務の協業先の開拓: 司法書士、行政書士、解体業者、遺品整理業者など、空き家所有者を顧客とする事業者とのネットワークを構築します。

これらの業務はマニュアル化が進められ、就労継続支援事業所(一般企業への就職が困難な障がいのある方が、働く場や就労に必要な知識・能力を身につけるための支援を行う福祉サービス施設)でも取り組めるモデルとして設計されます。ARUが運営する就労支援の現場が、地域の空き家課題を解決する新たな担い手となることを目指しています。

空き家開拓代行プランの図

なぜ今、空き家と障がい者雇用を結びつけるのか?社会背景を深掘り

このプロジェクトは、日本が直面する二つの大きな社会課題を同時に解決しようとするものです。

深刻化する空き家問題:増加する空き家と減少する新築住宅

総務省が発表した「令和5年住宅・土地統計調査」によると、全国の空き家は約900万戸と過去最多を記録しています。このうち、賃貸・売却用や別荘などを除いた、活用や管理が課題となる空き家は約385万戸にも上るとされています。

空き家増加と新築減少のグラフ

一方で、新設住宅着工戸数は減少傾向にあり、2024年にはリーマン・ショック後の2009年以来15年ぶりに80万戸を下回りました。近年の地価高騰も背景に、新築住宅を建てるのではなく、既存の建物をリノベーションして活用することへの注目が高まっています。TEAMRは、この潮流の中で、眠った空き家を価値ある資産として甦らせることに注力しています。

障害者雇用促進法の改正と就労機会の必要性

2026年7月には障害者雇用促進法の改正が施行され、法定雇用率(障害者雇用促進法に基づき、企業が雇用すべき障がい者の割合)が2.7%へ引き上げられます。これにより、雇用義務の対象が従業員37.5人以上の企業へと拡大し、中小企業を含め、国を挙げて障がい者の就労支援・雇用促進が求められています。

障害者雇用促進法改正と就職割合の図

しかし、障害福祉サービスから一般企業への就職は年間1〜3%にとどまっているのが現状です。ARUのような就労継続支援施設が、障がいのある方に働く場と、就労に必要な能力を身につける機会を提供することには、大きな意義があります。今回の協業は、働く場と能力習得の機会を増やすとともに、増加する空き家の減少という社会課題の解決にも寄与することを目指しています。

「空き家発掘チーム」がもたらすメリット:不動産事業者と空き家所有者への価値

このプロジェクトは、空き家問題に関わる様々なステークホルダーにメリットをもたらします。

不動産関連事業者への新たな営業アプローチ

「空き家発掘チーム」は、TEAMRの空き家検知・新規顧客獲得ツール「TEAMR Finder」の取り組みの一環として、まずは10社限定での先行展開が予定されています。

2026年10月に施行される不動産登記受付帳の仕様変更により、従来の「相続リスト」の活用が困難となる事業者にとって、登記情報に依存しない新たな営業アプローチが提案されます。

空き家の扱いに悩む所有者への情報提供

Web・SNSでの発信や協業先の拡大によって、空き家活用に関する情報が届く範囲が広がります。「空き家の扱いに困っているが、どこに相談したらよいかわからない」という所有者へ情報を届け、所有する空き家に合った活用方法を選択できる知識を提供します。

代表者コメント:プロジェクトへの熱い想い

株式会社TEAMR 代表取締役 関達彦氏

関氏は、空き家問題と障がい者雇用が「地域の中にある可能性が活かされていない」という共通点を持つと考えています。空き家を探し、所有者へ情報を届け、活用へつなげる一連のプロセスそのものを、新しい就労機会として生み出すことに挑戦しています。この取り組みが、誰かの成長や自信につながり、その先で地域課題の解決にもつながる循環を全国に広げていきたいと語っています。また、「行動する人が報われる社会」をつくりたいという強い想いも表明しています。

株式会社ARU 代表取締役 薄田夕侑氏

薄田氏は、「これからは福祉が支援を提供するだけでなく、地域の仕事や住まいを生み出し、まちづくりの中心を担う時代になる」と確信しています。就労支援の現場が長年向き合ってきた課題である「工賃」と「住まい」に対し、TEAMRの「最低限の修繕で空き家を再生する」というアプローチに可能性を感じています。空き家発掘業務が多様な仕事を生み出し、将来的にはグループホームやシェアハウスといった新たな福祉住宅の創出にも繋がる可能性を指摘。この取り組みを持続可能な仕事として確立し、全国の就労支援事業所へ広げていくことを目指しています。

プロジェクト概要と今後の展望:全国展開を目指す実証プロジェクト

「空き家発掘チーム」プロジェクトは、TEAMRとARUの共同による業務モデル構築の実証プロジェクトとして位置付けられています。運用を通じて改善を重ね、将来的には全国のTEAMR加盟店および就労支援事業所への展開を目指しています。

プロジェクト詳細

  • プロジェクト名: 空き家発掘チーム

  • 協業企業: 株式会社TEAMR/株式会社ARU

  • 主な取り組み内容: Googleストリートビューによる空き家捜索、Web・SNSを活用した所有者への情報発信・接触、空き家管理業務の協業先開拓

  • 位置付け: 両社共同による業務モデル構築の実証プロジェクト。運用しながら改善を重ね、将来的には全国のTEAMR加盟店および就労支援事業所への展開を目指す

  • 先行展開: 「TEAMR Finder」の取り組みの一環として、不動産関連事業者10社限定で先行展開を予定

株式会社TEAMRと株式会社ARUについて

株式会社TEAMR

空き家・古家の「Re活用」を通じた地域と所有者の課題を解決する不動産事業を展開しています。茨城県水戸市を中心に70棟以上の空き家再生実績を持ち、そのノウハウを活かして空き家データベースの構築、所有者支援、活用提案、AI営業支援ツール「TEAMR Finder」の開発・提供を行っています。

株式会社ARU

「UPDATE 福祉 〜アイデアで福祉に革命を〜」を経営理念に掲げ、障がい者の就労支援を中心とした福祉事業を全国で展開しています。就労継続支援B型事業や相談支援事業などを手がけ、障がいのある方の「働く」をサポートしています。

まとめ:社会課題解決に向けた新たな一歩

空き家問題の深刻化と障がい者雇用の重要性が増す現代において、TEAMRとARUによる「空き家発掘チーム」は、二つの社会課題を同時に解決する画期的なアプローチと言えるでしょう。この実証プロジェクトが全国に広がり、より多くの空き家が活用され、障がいのある方が活躍できる社会が実現することに期待が高まります。障害福祉に関心のある方々にとって、この取り組みは今後の福祉と地域共生のあり方を考える上で重要な一歩となるかもしれません。

Written by

菅間 大樹

findgood編集長、株式会社Mind One代表取締役
雑誌制作会社、広告代理店、障害者専門人材サービス会社を経て独立。
ライター・編集者としての活動と並行し、就労移行支援事業所の立ち上げに関わり、管理者も務める。職場適応援助者(ジョブコーチ)養成研修修了。
著書に「経営者・人事担当者のための障害者雇用をはじめる前に読む本」(Amazon Kindle「人事・労務管理」「社会学」部門1位獲得)がある。
https://www.amazon.co.jp/dp/B0773TRZ77