うつ病などの精神疾患を抱えるご家族を支える中で、「自分の心の不調や不安をどこに相談すればよいかわからない」と悩んでいませんか?本記事では、2026年10月に公表された株式会社ベータトリップの実態調査をもとに、うつ病等の家族が直面する心理的苦痛や仕事との両立(ビジネスケアラー)の現状を解説します。活用できる公的支援制度や相談窓口、専門用語の解説もまとめました。


この記事で分かること

  • うつ病等の家族の約半数(49.7%)が強い心理的苦痛を感じている実態(K6スコアによる分析)
  • 働く家族の40%が職場で相談できず孤立している「ビジネスケアラー」の課題と介護休業制度
  • 家族が抱える孤立感と、専門的な相談窓口(地域包括ケアシステム等)やピアサポートの重要性
  • 障害福祉サービスや家族支援に関するよくある質問(Q&A)

うつ病患者を支える家族の心理的負担と心身の実態

うつ病をはじめとする精神疾患のある方を自宅や日常生活で支えるご家族は、当事者本人のケアに心を配る一方で、ご自身の心身の健康や生活に大きな負担を抱えているケースが少なくありません。株式会社ベータトリップが2026年10月10日の世界メンタルヘルスデーに合わせて実施した調査(有効回答数322サンプル)では、支えるご家族の切実な実態が明らかになっています。

心理的苦痛が強い家族は全国平均の約5倍(K6スコアによる分析)

本調査では、ご家族自身の心の健康状態を測定するために「K6(ケーシックス)」と呼ばれる尺度が用いられました。

【専門用語解説:K6(ケーシックス)スコアとは】
厚生労働省の「国民生活基礎調査」などでも広く使用されている心理的ストレス度の測定尺度です。過去1か月間に「気分が落ち込んだ」「絶望的だと感じた」などの6つの質問に対し、0点から24点で点数化します。一般的に10点以上の場合、「強い心理的苦痛を感じている」と判定されます。

調査結果によると、うつ病等の家族を支える方のうち、K6スコアが10点以上(強い心理的苦痛がある)に該当した人は49.7%に達しました。これは20歳以上の全国平均(9.8%)と比較して約5倍という高い割合を示しています。

また、身体的な不調(自覚症状)があると回答した人も45.7%にのぼり、全国平均(27.7%)を18.0ポイント上回る結果となりました。本人を支えることに対する心理的負担を「かなり/非常に強く」感じている家族は全体の48%であり、本人が症状の激しい急性期にある場合に限ると70%に達することが報告されています。さらに、64%のご家族が「本人の状態や今後について不安や心配を感じている」と回答しています。

予後への不安と慢性的な緊張状態

精神疾患の経過は個人差が大きく、症状の波や再発の可能性を伴う場合があるため、ご家族は常に緊張感を持って生活している様子がうかがえます。

調査の一環として行われた座談会では、妻を支える夫から次のような体験談が寄せられています。

「またしんどい時がいつ来るだろうかと、記録もしているんです。この辺で来そうだなと身構えてはいるのですが、やっぱり予測がつかないので、また来るのは嫌だなと思いながら過ごしている状況です。」

このように、いつ体調が変化するか予測がつきにくい状況の中でご家族がサポートを続けることは、精神的な疲弊や慢性的な不安につながりやすいと考えられます。


仕事と家族のサポートを両立する「ビジネスケアラー」の現状

近年、働きながら家族の介護や支援を行う労働者は「ビジネスケアラー」と呼ばれ、社会的な支援の必要性が注目されています。従来のビジネスケアラー議論は主に高齢者介護が中心でしたが、精神疾患のあるご家族を支えながら働く人の実態については、これまで十分な把握が進んでいませんでした。

職場で家族の病気を打ち明けられない背景と孤立リスク

本調査において、働いているご家族(275人)に職場での状況を尋ねたところ、本人の病気や状況について職場の「誰にも伝えていない」と回答した人が40%と最も多い結果になりました。

また、勤務先に家族の介護や両立を支援する制度が「ない」、あるいは「あるかどうかわからない」と答えた人は43%に上っています。周囲に打ち明けにくい背景には、精神疾患に対する誤解や偏見への懸念、職場で個人的な事情を話すことへのためらいが存在すると推測されます。

一方で、勤務先の支援制度を利用したことがある人のうち69%は「役に立った」と回答しており、さらに「会社に家族のことを相談できる窓口があれば利用したい」と考えている人は全体の67%に達しています。

【座談会での実際の声】
「上司に夫のことを相談したら『なんでもっと早く言わないのよ』とは言われましたが、職場ですごく配慮してもらえました。『しんどい時は残業しなくていいからね』と言ってもらえたり、急なお休みにも配慮してくださったり。」(夫を支える妻)

適切な相談環境や配慮が得られれば、仕事と家族のサポートを両立しやすくなる可能性が示されています。

介護休業制度と2025年4月からの企業による義務化

国の法律に基づく「介護休業制度」は、高齢者の介護だけでなく、精神上の障害によって常時介護が2週間以上にわたり必要な状態も対象となり得ます。

さらに、法律の改正に伴い2025年4月からは、介護に直面したことを申し出た従業員に対して、企業が介護両立支援制度などを個別に周知し、利用の意向を確認することが義務付けられました。

うつ病等のご家族を支える働き手であっても、本人の状態によっては介護休業や短時間勤務制度などの対象となる場合があります。職場での制度周知や相談しやすい体制づくりを進めることが、労働者の離職を防ぐ観点からも重要であると考えられます。


家族が抱える孤立感と障害福祉における相談先の確保

精神疾患のある方を支えるご家族は、周囲に相談相手を見つけにくく、孤立状態に陥りやすい傾向が指摘されています。

一人で抱え込む家族の実態と「相談窓口」への高いニーズ

調査結果によると、本人を支えることについて「自分一人では抱えきれない」と感じることが多いご家族は55%にのぼりました。

しかし、医療機関、福祉サービス、親族、友人知人のいずれにも「相談できていない」と答えた家族が20%存在しています。また、障害福祉サービスなどの公的機関に「定期的に/ときどき相談している」家族は19%にとどまっています。

ご家族が必要としている支援について尋ねたところ、最も多かった回答は「家族が相談できる専門的な窓口」(68%)でした。当事者本人への直接的な医療・福祉サービスだけでなく、支える家族自身を対象とした相談支援の充実が強く求められていることが分かります。

【専門用語解説:傷病手当金(しょうびょうてあときん)とは】
健康保険などの被保険者が病気やケガで仕事を休む際、一定の条件を満たすことで支給される手当金です。座談会では「医師から教えてもらうまで傷病手当金の存在を知らなかった」という声もあり、制度情報の周知が重要であることがうかがえます。

孤独・孤立対策推進法と「ピアサポート」の役割

制度や施策の面でも、家族支援を位置付ける動きが進んでいます。

  1. 孤独・孤立対策推進法(2024年4月施行)
    当事者本人だけでなく、そのご家族も含めてそれぞれの状況に応じた支援を行うことが基本理念として掲げられています。
  2. ピアサポート(家族同士の交流)
    「ピア(peer)」は仲間や同僚を意味します。同じようにうつ病等の家族を支える立場の人々が集まり、体験や悩みを共有する「ピアサポート」の場は、「自分一人ではない」という安心感をもたらし、孤立感を和らげる効果が期待されています。
  3. 精神障害にも対応した地域包括ケアシステム
    厚生労働省は、精神障害を持つ方が地域で安心して暮らせるよう、医療・福祉・自治体が連携する仕組み作りを進めています。検討会報告書では、市町村等においてご家族が相談しやすい分かりやすい窓口の設置推進が求められています。

よくある質問(Q&A)

コラム

Q1. うつ病の家族を支える中で医療費や生活費が心配です。どのような相談先がありますか?

A. 医療費の自己負担を軽減する「自立支援医療(精神通院医療)」や、休職時の経済的支援である「傷病手当金」などの制度が存在します。まずは通院先の医療機関にいる精神保健福祉士(PSW)や、お住まいの市区町村の障害福祉担当窓口、精神保健福祉センターなどに相談することをおすすめします。

Q2. 働いている職場で、家族がうつ病であることを伝えるべきでしょうか?

A. プライバシーに関わる事項であるため開示は任意ですが、上司や人事部、産業医などに相談することで、残業の調整や休暇の取得といった勤務上の配慮を受けやすくなる場合があります。2025年4月からは企業による両立支援制度の個別周知や意向確認も義務化されているため、社内の相談体制を確認してみるとよいでしょう。

Q3. 家族自身が悩みや不安を感じたとき、どこに連絡すれば相談に乗ってもらえますか?

A. 各自治体の保健センターや精神保健福祉センターのほか、地域の基幹相談支援センター、障害者相談支援事業所などが相談を受け付けています。また、同じ悩みを抱える家族が集まる家族会や、家族向けオンラインコミュニティ(例:株式会社ベータトリップが運営する「encourage」など)を活用するのも一案です。


まとめ|一人で抱え込まず、地域や専門機関の支援につながることが大切

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今回の調査結果からは、うつ病等の精神疾患のある方を支えるご家族の約半数が強い心理的苦痛を感じており、仕事との両立や相談先の確保において課題を抱えている実態がうかがえます。

なお、本調査は家族向けコミュニティサイト「encourage」の会員322人を対象としたものであり、精神疾患の家族全体を厳密に代表するものではありませんが、家族支援の重要性を示唆する貴重なデータといえます。

ご家族が自身の健康を守り、適切な公的制度や専門窓口、地域社会のサポートとつながることは、ご家族自身の生活を守るだけでなく、長期的には当事者本人の回復を支える土台にもなります。

障害福祉やメンタルヘルスの分野では、当事者だけでなく「支える家族への支援」の輪を広げていくことが、今後ますます期待されています。


本記事は、株式会社ベータトリップが配信したプレスリリースを基に作成しました。

Written by

菅間 大樹

findgood編集長、株式会社Mind One代表取締役
雑誌制作会社、広告代理店、障害者専門人材サービス会社を経て独立。
ライター・編集者としての活動と並行し、就労移行支援事業所の立ち上げに関わり、管理者も務める。職場適応援助者(ジョブコーチ)養成研修修了。
著書に「経営者・人事担当者のための障害者雇用をはじめる前に読む本」(Amazon Kindle「人事・労務管理」「社会学」部門1位獲得)がある。
https://www.amazon.co.jp/dp/B0773TRZ77