医療的ケア児の親が働く場所を実証するカフェの挑戦

カフェドゥチルミルは、2024年4月に仙台市泉区にオープンしました。このカフェは、社会福祉法人あいの実が長年取り組んできた「仙台あばいんプロジェクト」の一環として誕生しました。あいの実は、2005年の設立以来、重症心身障がい児者や医療的ケア児者のケアを担ってきましたが、その中で見えてきたのは、医療的ケア児の親、特に母親たちが直面する「社会との断絶」という現実でした。

24時間体制で続く医療的ケア、急な発熱や入院といった予期せぬ事態。命を守るという重い責任を担う中で、多くの親が社会とのつながりを失いがちです。しかし、「社会とつながっていたい」と願う母親たちの声に応える形で、このカフェは始まりました。

カフェドゥチルミルでは、「医療的ケア児の親にはどのくらい休む時間が必要か」「シフトはどう組むのか」「急な欠勤をどう支え合うか」といった具体的な課題に対し、日々の運営の中で答えを探っています。この実践は、将来的には他の事業者にも参考にされるような、持続可能な働き方モデルとして確立されることを目指しています。

働く喜びを実感する母親たち:月95時間の「楽しい」シフト

カフェを支えるのは、5人の医療的ケア児の母親たちです。彼女たちは一人あたり平均月95時間勤務し、コーヒーをドリップしたり、ホットサンドを焼いたりするだけでなく、ピアサポートの場としても機能しています。シフトは互いの体調や子どもの状態を見ながら、スタッフ自身が柔軟に組んでいます。急な欠勤者が出た場合でも、別の誰かがサポートに入ることで、支え合いながら運営されています。

「働くって、どうしてこんなに楽しいんでしょうか」と笑顔で語るスタッフの言葉は、2年間の運営で積み重ねてきた確かな事実に基づいています。この場所が、母親たちにとってかけがえのない社会との接点となり、自己実現の場となっていることが伺えます。

カフェ継続の鍵:クラウドファンディングで新たな支援の輪を

オープンから3年目を迎えたカフェドゥチルミルは、運営上の新たな課題に直面しています。特に、テラス席のアウトドア家具の傷みや、夏の暑さ対策が急務となっています。

社会福祉法人あいの実の専務理事である久保潤一郎氏が述べているように、社会福祉法人会計基準により、社会福祉事業とカフェ事業はそれぞれ独立採算で運営され、他の事業から資金を補うことはできません。カフェが自立し、持続可能な運営を続けるためには、カフェ自身の力、あるいは支援者の協力が不可欠です。

モダンなカフェ外観

2年間の運営を通じて、月95時間×5名という労働量、客単価、回転率、季節変動といった具体的な数字が見えてきました。しかし、これらの売上だけで設備の更新や夏の暑さ対策までを賄うには、現状の規模ではまだ足りていません。

目標は60万円!テラス家具更新とスポットクーラー購入へ

今回のクラウドファンディングの第一目標は60万円です。この資金は、主にテラス席のアウトドア家具の更新と、スポットクーラーを中心とした夏の暑さ対策に充てられます。

爽やかなドリンク

テラス席

2023年に実施された前回のクラウドファンディングがカフェの「場をつくる」ための建設資金(400万円達成)だったのに対し、今回は「場を続ける」ための実費調達となります。実行確約型のため、仮に目標金額に届かなかった場合でも、自己資金で補い、最低限の家具更新と暑さ対策の一部は実施される予定です。

第一目標を達成した場合のネクストゴールは、100万円から150万円で、レジ棟とテラス席をつなぐ通路の屋根設置工事に挑戦します。これにより、雨天時や夏の強い日差しの中でも、スタッフと来店者が安全かつ快適に行き来できる動線が確保されます。

傷んだアウトドアチェア

支援方法とリターン:感謝のメッセージからオリジナルマグカップまで

クラウドファンディングは、READYFORのプロジェクトページから支援が可能です。募集期間は2026年6月5日(金)10:00から7月26日(日)23:00までの51日間です。

リターンは、カフェスタッフからの感謝メッセージを基本に、来店時のコーヒーまたはドリンク1杯、オリジナルマグカップの郵送など、計4種類が用意されています。すべてのリターンには、2026年8月発行の年次報告書が同送されます。この機会に、医療的ケア児の親たちの働き方を支えるこの取り組みを応援してみてはいかがでしょうか。

プロジェクトページはこちら:

障害福祉の未来を拓く「カフェドゥチルミル」の意義

カフェドゥチルミルの取り組みは、単なるカフェ運営に留まらず、医療的ケア児家族の就労支援における新たなモデルケースとして、障害福祉分野に大きな意義をもたらしています。医療的ケアを必要とする子どもを持つ親たちが、社会とのつながりを保ちながら、自分のペースで働ける環境を提供することは、親のQOL向上だけでなく、子どもたちの生活にも良い影響を与えるでしょう。

モダンなカフェ外観別アングル

社会福祉法人が介護報酬とは別の会計でカフェ事業を展開し、自立したソーシャルビジネスとして成立させようとする挑戦は、今後の障害福祉分野における多様な事業展開の可能性を示唆しています。このカフェが地域に根差し、多くの人々に愛される場所として長く続くことを願わずにはいられません。

医療的ケア児の親たちが、安心して働き、笑顔でいられる場所「カフェドゥチルミル」。この温かい空間が、これからも多くの人々にとって希望の光であり続けるために、皆さんの温かいご支援を心よりお待ちしております。

Written by

菅間 大樹

findgood編集長、株式会社Mind One代表取締役
雑誌制作会社、広告代理店、障害者専門人材サービス会社を経て独立。
ライター・編集者としての活動と並行し、就労移行支援事業所の立ち上げに関わり、管理者も務める。職場適応援助者(ジョブコーチ)養成研修修了。
著書に「経営者・人事担当者のための障害者雇用をはじめる前に読む本」(Amazon Kindle「人事・労務管理」「社会学」部門1位獲得)がある。
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