2026年法定雇用率2.7%引き上げで高まる「障害者雇用の質」への期待
2026年7月、企業の法定雇用率(従業員に占める障害者の割合)が2.5%から2.7%に引き上げられます。これは、企業が障害のある方を雇用する際の「量の確保」だけでなく、厚生労働省が重視する「雇用の質」への関心が高まっていることを示唆しています。
株式会社エス・エム・エスが運営する「かべなし 法人向け障害者雇用支援サービス」は、全国の障害者雇用担当者157名を対象に「障害者雇用に関する実態調査」を実施しました。この調査は、法定雇用率引き上げを目前に控え、担当者の実態と現状の課題を明らかにし、より質の高い障害者雇用へと繋げるための示唆を得ることを目的としています。
経営層が重視する「雇用率達成」と「戦力化」の実態
調査結果によると、障害者雇用担当者が経営層から最も期待されていることは「法定雇用率の着実な達成(コンプライアンスの遵守)」(65.6%)でした。これに次いで「採用後の活躍や戦力化(生産性の追求)」(58.0%)が挙げられており、経営層も雇用の「質」を重視している実態が明らかになっています。

障害者雇用担当者のリアル:7割が兼務、裁量・サポート不足が顕著に
法定雇用率の達成と戦力化への期待が高まる一方で、障害者雇用を推進する現場の担当者は多くの課題に直面していることが調査から浮き彫りになりました。
兼務と人員不足がもたらす担当者の孤立
障害者雇用担当者の72.6%が他の業務と兼務しており、専任担当者は26.1%にとどまっています。この状況に加え、障害者雇用に関する業務においてサポート人員が「十分に足りている」と回答した担当者は19.1%に過ぎず、約8割の担当者が人員不足や現体制での負担の大きさを感じていることが示されました。


予算や組織変更への裁量不足が施策推進の壁に
障害者雇用における「予算」や「組織変更」を伴う施策について、自身の判断で予算執行や配置変更を完結できる権限がある担当者は33.8%でした。最多は「上申(提案)の権利はあるが、最終決定権はない」(46.5%)であり、約7割の担当者が単独で予算・配置の変更を完結できないと見られています。これにより、施策の迅速な推進が困難になっている可能性が指摘されます。

社内外の相談体制不足が課題を深刻化
社内外で相談・協力が得られる体制について、「体制はあるが、十分に機能しているとはいえない」(48.4%)が最多でした。「体制はなく、担当者のみが動いている」(16.6%)と合わせると65%となり、3社に2社近くが社内外の相談・協力体制が十分でないと回答しています。これは、課題が担当者個人に集中し、孤立しやすい状況を示唆していると言えるでしょう。

職場定着と戦力化を阻む「ノウハウ不足」と「業務切り出し」の壁
障害者雇用における「雇用の質」を高め、障害のある社員が職場に定着し戦力として活躍するためには、受け入れ側の体制とノウハウが不可欠です。しかし、この点にも大きな課題があることが調査から明らかになりました。
配属先と障害のある社員間の認識齟齬が定着を困難に
担当者の69.4%が、配属先環境と障害のある社員の間の認識のすり合わせや環境調整に困難を実感しています。約7割がこの課題を抱えていることから、配慮事項の共有や業務設計といった、スムーズな受け入れや職場定着に必要な前提情報が不足している可能性が示唆されます。

現場での受け入れ障壁:専門知識・ノウハウ不足が最大の課題
自社雇用(現場での受け入れ)を推進する上での最大の障壁は、「配属先部署の専門知識・ノウハウ不足で受け入れ体制が整っていない」(29.9%)が最多でした。次いで、「障害のある方に任せられる『業務の切り出し』ができない」(24.8%)、「配属先部署の工数・人手不足で十分な受け入れ体制が整っていない」(17.2%)と続きます。これらの結果から、障害者雇用のノウハウ不足に加え、具体的な業務設計や受け入れ体制の両面に課題があることが推察されます。

課題解決への光:「かべなし 法人向け障害者雇用支援サービス」が提供する内製化支援
このような状況に対し、外部の専門的な支援への期待が高まっています。
外部支援に期待される「現場への説明」と「専門知見」
外部の伴走支援を利用できるとしたら何を最も期待するかという問いに対し、「現場部署への説明や、マニュアル作成の代行・サポート」(31.8%)が最も多く、次いで「専門知見を持った相談窓口の確保」(26.8%)が続きました。この結果は、企業が現場で自ら対応できるようになるための専門知見による後押しを必要としている状況を示唆しています。

株式会社エス・エム・エスの実践と「かべなし」サービス
株式会社エス・エム・エスは、2020年に障害者雇用の内製化に本格的に取り組み、現在では精神・発達障害のある方が9割を占める約90名規模の「シェアードサービスグループ」を運営しています。この組織は、人事・総務・各事業部から切り出した約400種類の業務を担い、本業の生産性向上にも寄与するまでに成長しました。
同社は、この自社実践で培った知見を活かし、2026年6月より「かべなし 法人向け障害者雇用支援サービス」(https://hr.kabe-nashi.jp/)の提供を開始しました。
このサービスでは、法定雇用率2.7%への引き上げやその先を見据え、企業の自社内での障害者雇用について、受け入れ体制の構築支援やナレッジの提供といった「内製化支援」を通じて、障害者雇用に取り組む企業の課題解決に貢献していくとのことです。
「かべなし」は、「障害によって生きづらさを抱えている人たちのウェルビーイング向上に貢献する」をミッションに掲げる総合的な支援ブランドです。「かべなし」という名称は、障害は個人ではなく社会の側にあるとする「障害の社会モデル」の立場から「社会的障壁(かべ)をなくす」というコンセプトを事業活動の核としています。
障害のある方向けの人材紹介サービス「かべなし求人ナビ」(https://dei-go.com/)も提供しており、障害特性やスキル、経験などを考慮した最適なマッチングと、入社後の定着支援を行っています。
まとめ:職場全体でノウハウを底上げし、障害者雇用の質を高めるために
今回の調査結果は、2026年7月の法定雇用率引き上げを目前に控え、企業が障害者雇用において「量の達成」だけでなく「質の向上」を求められている現状と、それを推進する担当者が抱える課題を浮き彫りにしました。
担当者が兼務する中で裁量やサポートが不足し、受け入れ部署を含む職場全体のノウハウ浸透が追いついていないことが、障害のある社員の戦力化や職場定着のボトルネックになっている可能性が示唆されます。
この課題を解決するためには、担当者個人の努力だけでなく、組織として仕組みを作り、職場全体の受け入れ環境を整えることが重要です。外部の専門的な知見や支援サービスを活用し、現場への具体的なアドバイスやマニュアル作成のサポートを得ることで、企業はより質の高い障害者雇用を実現し、障害のある社員が能力を最大限に発揮できる環境を構築できるでしょう。
【専門用語解説】
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法定雇用率: 障害者の雇用の促進等に関する法律に基づき、企業が従業員に占める障害者の割合として義務付けられている比率です。この比率は定期的に見直され、2026年7月には2.7%に引き上げられる予定です。
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ウェルビーイング (Well-being): 身体的、精神的、社会的に良好な状態を指す概念で、「幸福」や「健康」よりも広範な意味を持ちます。個人の権利や尊厳が尊重され、誰もが自分らしく生きられる社会を目指す上で重要な視点です。
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障害の社会モデル: 障害を個人の心身機能の障害そのものと捉えるのではなく、社会の側にある物理的・制度的・文化的障壁によって生み出されるものと捉える考え方です。このモデルに基づき、社会全体のバリアフリー化や多様な人々を受け入れる環境整備が求められます。

