2026年6月22日・23日の2日間、渋谷スクランブルスクエア24Fのレバレジーズ本社で開催された 「見えない障がい」をVRで体験する研修に参加しました。 主催は障がい者就労支援サービス「ワークリア」。 障がい者雇用担当者や経営層など、両日合わせて約30名が参加する注目度の高い研修でした。

今回の研修は、法定雇用率が2.7%へ引き上げられる直前というタイミングもあり、 「精神・発達障がい者雇用への不安をどう解消するか」 「現場で本当に役立つ“調整”とは何か」 を深く理解することを目的として実施されました.
第1部:VRで体験する“見えない障がい”の世界

体験に使用したのは、シルバーウッド社の VR発達障害。 五感の過敏や注意欠如など、当事者が日常で直面している“見えない困難”を疑似体験できるVR機器です。
https://www.silverwood.co.jp/identity

今回体験したのは以下の3つ。
① 聴覚過敏の世界
聴覚過敏は、個々により症状が異なりますが、日常のさまざまな音が絶えず耳に入ってくるような状態です。話し声や、周囲の物音などを同じボリューム感でとらえてしまうため、常に音が耳に入り続ける状態などが挙げられます。静寂や無音とは真逆の世界であり、必要な音に集中することが難しい状態が 「普通の環境」である当事者にとっては、強いストレスになることを体感しました。
② 視覚過敏の世界
視覚過敏の主な特徴として、光が強く、視界がチカチカと揺れ、光や視覚刺激が強く感じられる感覚に襲われます。また、光が強く感じられたり、視界全体に砂嵐のような細かなノイズ(ビジュアルスノー)が見えたりすることで、脳が疲弊してしまう状態が挙げられます。光や視覚刺激による負担が積み重なり、パニックを起こす可能性があること、目から得る情報をコントロールできない状態が続くことが体調に影響を及ぼす理由などを知ることができる体験でした。
③ ADHD(注意欠如・多動)の世界
ADHDも個々によって特性は大きく違いますが、主な特徴としては、周囲の刺激に注意が奪われ、 目の前の作業に集中し続けることが困難になります。さまざまな情報を処理しきれず、注意が散漫になってしまうこと、他のことに意識を奪われてしまうことなどが、「やる気の問題ではない」 「環境によってパフォーマンスが大きく変わる」 という事実をVR体験から強く感じました。

第2部:当事者社員の解説とグループワーク
また、セミナーではレバレジーズで働く障がいのある社員が登壇しました。
印象的だったのは、 「VRで見えた世界は良く表現されているけど、“当事者の一部”であって、すべてではない」 という言葉でした。
さらに、職場で大切なのは “配慮”ではなく“調整”である という視点が共有されました。
配慮ではなく調整とは?
- 「優しい言葉を使う」ことが配慮
- 「伝わりやすい言い方に変える」ことが調整
- 「静かな席に移す」ことが配慮
- 「業務の流れを整理する」ことが調整
つまり、 障がいのある社員だけに特別扱いをするのではなく、 誰もが働きやすい環境を“構造として整える”ことが重要 という考え方です。
参加企業による意見交換タイム

参加者同士で、現場での課題や気づきを共有する時間が設けられました。 その中で出た声は、どれも実感のこもったものばかりでした。
参加企業の声(抜粋)
- 「これまで障害のある社員の声を聞きながら配慮していたつもりだが、少しずれがあったように思う」 → VR体験によって、本人の感じ方をより深く理解できたという声。
- 「今まで優しい言葉を使っていたと思うが、どう伝わっていたのかもう一度考えてみる」 → “優しさ=伝わりやすさ”ではないという気づき。
- 「知識で知っていたことと実際に体験するのでは、全く別物であると感じた」 → VR体験の効果を象徴するコメント。
- 「業務指示で『お手隙で』という表現を使いがちだったが、それが混乱を招く原因になると知り、改めて気をつけようと思った」 → 配慮したつもりの声掛けが、曖昧な指示として伝わり負担になることを体感した参加者の声。
- 「社内研修に活かしたい内容だった。必要な配慮について、社内で働く障がい者の方と改めて対話をしたい」 → 組織全体での改善に活かしたいという前向きな意見。
まとめ:VR体験は“理解の入口”であり、職場づくりの第一歩
今回の研修は、 精神・発達障がい者の働く世界を“体感”し、 その上で職場環境をどう整えるかを学ぶ場 でした。参加者の多くが 「知識ではなく体験が理解を深める」 と語っていたように、 VRは職場づくりの大きなヒントになります。
しかし、VR体験はあくまで入口であり、 本当に大切なのはその後の“対話”と“調整”です。そして何より、 配慮ではなく調整 という視点は、障がい者雇用だけでなく すべての働く人にとって有益な考え方だと感じました。

