法定雇用率2.7%引き上げ目前!中小企業の障害者雇用準備状況と直面する壁

法改正が迫る中、中小企業の準備状況は二極化していることが分かります。調査では、約6割の企業がすでに新基準での採用人数を達成しているか、または必要な採用人数を正確に把握していると回答しました。しかし、その一方で多くの企業が障害者雇用を進める上で特有の課題を抱えている実態も浮き彫りになっています。

具体的には、「障害者に任せる業務の切り出しが難しい」と回答した企業が37.3%と最も多く、次いで「障害者雇用のノウハウが不足している」(35.1%)、「専任の担当者を配置する余裕がない」(28.3%)といった課題が上位を占めています。

中小企業が障害者雇用を進める上で課題だと感じるもの

中小企業では、個々の社員が多岐にわたる業務を担当することが多く、障害のある方が安定して取り組めるような定型業務を独立して抽出することが構造的に難しい状況が見受けられます。また、ノウハウ不足や人的リソースの制約も、受け入れ体制の構築を遅らせる要因となっているようです。

障害者雇用に関する実務は、主に人事・採用担当者(43.0%)が行っており、特定の担当者に負担が集中している状況が確認できます。現場社員やリーダーが実務を担う割合も約3割に達しており、日々の業務と並行しながら対応を進める現場の実態が示されています。

障害者雇用代行サービスの現状と中小企業の期待・懸念

限られたリソースの中で法定雇用率を達成する手段として、「農園型・サテライトオフィス型」などの障害者雇用代行サービスが注目を集めています。調査によると、約6割の中小企業が代行サービスに関心を示しており、実際に利用している、または利用を検討していることが明らかになりました。

障害者雇用代行サービス(農園型・サテライトオフィス型など)の認知および利用・検討状況

代行サービスを利用・検討した理由としては、「自社で雇用管理や定着支援を行うノウハウがない」(39.2%)、「専任担当者を置く余裕がない」(34.0%)、「自社で採用活動を行う手間・コストを省きたい」(30.9%)が上位に挙げられています。これは、中小企業が抱える社内リソースの課題と一致しており、自力での受け入れ体制構築に支障が生じている現状を反映していると言えるでしょう。

しかし、代行サービスに対する評価は一様ではありません。最も多かった回答は「活用できる場面はあると思うが、課題もあると感じる」(40.3%)でした。実際に利用して「期待を下回った」と回答した企業も16.7%に上り、何らかの課題を実感している企業が約6割に達しています。

障害者雇用代行サービスについて、あなたの評価・印象として最も近いもの

代行サービスのメリットとしては、「採用活動や雇用管理にかかる手間・コストを削減できる」(39.5%)と「現場の社員に負担をかけずに済む」(39.4%)がほぼ同率で上位を占めました。外部施設を利用することで設備投資が不要となり、現場の社員がサポート業務に時間を取られずに本業に集中できる点が評価されています。

一方で、代行サービスに対する懸念・課題として最も多く挙げられたのは「自社内に障害者雇用のノウハウが蓄積されない」(45.8%)でした。その他、「人材が定着しない(離職してしまう)」(29.7%)や「障害者本人のキャリア形成や成長につながりにくい」(28.3%)といった声も約3割に上っています。

障害者雇用代行サービスの懸念・課題として感じる(または感じそうな)もの

実務を外部に委託することで、社内の受け入れ体制や知見が育ちにくい状況に不安を感じている企業が多いことが示されています。この企業側の懸念は、先日厚生労働省が障害者雇用代行サービス(ビジネス)における「企業側の雇用責任の希薄化」や「不十分・不適切な雇用管理」といった課題を指摘したこととも深く重なります。

障害者雇用がもたらす本質的な価値とは?企業が期待する「その先」

単に法定雇用率を達成するだけでなく、障害者を自社内で雇用し活躍してもらうことには、企業にとって多様な良い影響や価値が期待されています。調査では、「人手不足の解消」(33.7%)が最も多く挙げられましたが、それに続いて「現場社員のマネジメント能力やコミュニケーションスキルの向上」(31.7%)、「多様性(ダイバーシティ)の推進による、組織の活性化や企業価値の向上」(30.0%)といった回答も多く見られました。

障害者を自社内で雇用し活躍してもらうことは、貴社にとってどのような良い影響・価値があると思いますか?

多くの中小企業が、障害者雇用を単なる義務の達成としてだけでなく、組織全体に良い影響をもたらす機会と捉えていることが分かります。多様な人材と直接関わりながら業務を進める経験は、既存の社員にとっても新たな視点を得る有意義な機会となる可能性を秘めています。

持続可能な障害者雇用戦略へ:柔軟な組み合わせが未来を拓く

今回の調査を通じて、2026年の法改正を前に、中小企業が障害者雇用で直面する現実と、その解決策を模索する姿が浮き彫りになりました。「業務の切り出し」や「ノウハウ・人的リソースの不足」といった課題を抱えながらも、多くの企業が法定雇用率達成に向けて動き出しています。

障害者雇用代行サービスは、手間やコストを削減できる現実的な選択肢として関心を集める一方で、企業内でのノウハウ蓄積や人材定着といった点で課題も認識されています。これは、外部サービスに完全に委託するだけでは、障害者雇用における根本的な解決には至らないという実情を示唆していると言えるでしょう。

今後の障害者雇用においては、自社ですべてを抱え込むことでも、完全に外部へ切り出すことでもない、柔軟なアプローチが求められます。例えば、代行サービスをコストや手間の削減のために活用しつつ、社内では専門機関のサポートを受けながら少しずつ受け入れ体制を整えていくなど、自社の状況に合わせた多様な組み合わせが有効です。

法改正を契機として、無理のない範囲で多様な人材が活躍できる仕組みを作っていくことが、結果として変化に強い組織づくりにつながっていくのではないでしょうか。

障がい者総合研究所について

今回の調査を実施した株式会社ゼネラルパートナーズは、障がい者の総合就職・転職サービス「atGP」等を運営するとともに、調査・研究機関「障がい者総合研究所」を運営しています。

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障がい者総合研究所は、10年以上にわたり障がい者雇用において培った知識と経験を活かし、有益な情報を広く社会へ発信しています。

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長く働き続け、活躍したい障害のある方に向けた就職のためのスキルアップ研修や就職活動のサポートを行っています。

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Written by

菅間 大樹

findgood編集長、株式会社Mind One代表取締役
雑誌制作会社、広告代理店、障害者専門人材サービス会社を経て独立。
ライター・編集者としての活動と並行し、就労移行支援事業所の立ち上げに関わり、管理者も務める。職場適応援助者(ジョブコーチ)養成研修修了。
著書に「経営者・人事担当者のための障害者雇用をはじめる前に読む本」(Amazon Kindle「人事・労務管理」「社会学」部門1位獲得)がある。
https://www.amazon.co.jp/dp/B0773TRZ77