発達障害への社会理解は進むも、保護者には新たな課題

多様性への意識が高まる中、発達障害を持つ当事者とその家族を取り巻く環境は変化しています。今回の調査では、保護者の視点から現在の状況が詳細に報告されています。

LITALICO発達ナビが実施した大規模調査とは?

2026年6月に実施された「LITALICO発達ナビ ユーザーサーベイ2026」は、総回答数911名のうち、発達障害や多様な特性のある子どもを育てる保護者(ご家族)が68.4%(623人)を占めました。他に、日々現場で向き合う支援者が23.2%(211人)、自身が生きづらさを抱える障害のある当事者が8.5%(77人)となっています。

保護者を対象としたお子さまの診断名や特性の傾向の調査(複数回答/回答数580名)では、ASD(自閉スペクトラム症)が78.8%と最も多く、次いでADHD(注意欠如多動症)が45.5%、知的障害(知的発達症)が24.7%という結果でした。その他にも、LD・SLD(限局性学習症)(特定の学習能力に著しい困難がある状態)、境界知能(知的機能が平均より低いが知的障害の診断基準には満たない状態)、確定診断のないグレーゾーン(発達特性が見られるが診断基準を満たさない状態)などの特性も一定の割合を占めています。

約6割が実感する「社会の理解度の深まり」

ここ数年での社会や周囲の発達障害に対する理解度について、保護者の62.8%(391人)が「やや深まってきたと感じる」「とても深まってきたと感じる」と回答しました。これは、多様な特性に対する社会の認知や受容が着実に浸透しつつあるという、前向きな傾向を示唆しています。

社会や周囲の発達障害に対する理解度

子どものサポートが保護者の「働き方」と「心の健康」に与える影響

社会の理解が進む一方で、保護者の日常生活には大きな影響が見られます。

57.9%の保護者が働き方を調整:柔軟な働き方と退職の選択

子どもの通院や療育(発達に課題のある子どもに対し、専門的な支援や指導を通じて発達を促すこと)、学校生活のサポートに合わせて、保護者の57.9%(361人)が働き方に「変化があった」「やや変化があった」と回答しています。

子どものサポートに伴う保護者の働き方の変化

具体的な変化(複数回答)としては、「勤務時間・シフトの変更(181人)」や「パートへの切り替え等(76人)」「在宅勤務・時短勤務等の制度利用(61人)」など、子どもの特性やスケジュールに合わせられる柔軟な働き方を工夫・選択する姿が目立ちます。しかしその一方で、サポート時間を確保するために「休職・退職・転職(131人)」といった決断を迫られるケースも依然として存在しており、育児と仕事の両立における環境整備への継続的なニーズが示されています。

保護者からは、以下のような声が寄せられています。

  • 「感覚過敏、特性で学校に行けない日があるので両親のどちらかが在宅勤務をするようにしている」(中学生の保護者 / 働き方を変えた理由より抜粋)

  • 「勉強や持ち物等を一人でサポートしながらのフルタイム勤務は厳しいと感じ、短時間正社員として勤務しています。」(中学生の保護者 / 働き方を変えた理由より抜粋)

76.2%の保護者が感じるメンタルヘルスへの影響

「自身の睡眠や心の健康(メンタルヘルス)への変化」については、保護者の76.2%(475人)が「とても感じる」「やや感じる」と回答しており、多くの方が日々変化や負担を実感しながら子どもを支えていることが分かりました。

子どものサポートによる保護者の睡眠・心の健康への影響

子どもの豊かな発達を長期的に支えるためには、保護者自身が心身ともに健康であり、孤立しないための周囲の温かい見守りや、リフレッシュのための適切な休息(レスパイトケア:介護者が一時的に介護から解放され、休息を取るための支援)が重要です。

保護者からは、以下のような具体的な意見も寄せられています。

  • 「支援や配慮のお願いなど、親がすべてコーディネートするのは疲れました。その子をよく知っているのは親であることはわかりますが、学校と家で様子が違うのも事実。そこも踏まえて、親に誰かが伴走してくれるような、導いてくれるような人が欲しい。」(小学校高学年の保護者 / 行政や社会への改善希望の自由記述より抜粋)

  • 「子どもの支援に関してもそうだが、子どもに関わっている親のケアも少し考えて欲しいと思う。母親にばかり負担がいく。」(中学生の保護者 / 行政や社会への改善希望より抜粋)

専門家が提言する「親と家庭」を支える社会の実現

鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授であり、LITALICO研究所 スペシャルアドバイザーを務める井上雅彦先生は、今回の調査結果について以下のように解説しています。

「アンケート結果から社会全体で発達障害への理解が深まっていると感じる人が増えている一方で、子育てのために働き方の見直しを余儀なくされている現状や、保護者ご自身のメンタルヘルス支援に対する高いニーズが分かります。発達障害者支援法においても家族支援の充実が掲げられている通り、子どもだけでなく、それを支える家庭全体への支援が必要であることがうかがえるデータです。発達障害に関する社会的な理解の広がりに比べ、家庭への具体的な支援の必要性がより際立つ調査結果だと思います。」

LITALICO発達ナビの役割と今後の展望

LITALICO発達ナビ運営事務局は、「障害は個性」という言葉だけでなく、一人ひとりの特性に合わせた環境調整が当たり前になる社会の実現を望んでいます。視力に合わせて眼鏡をかけるように、個別の支援が自然に受けられる社会を目指していくとのことです。

LITALICO発達ナビのロゴ

「LITALICO発達ナビ」は2026年1月に10周年を迎え、発達障害の基礎知識に関する情報発信や、ユーザー同士のコミュニティ形成を支援してきました。今後も読者の具体的な悩みに寄り添う情報や機能を提供し、社会全体の正しい理解促進に向けて発信を続けていく方針です。

まとめ:発達障害への理解深化と家族支援の強化が不可欠

今回の調査結果は、発達障害に対する社会の理解が着実に進んでいることを示す一方で、発達障害を持つ子どもを育てる保護者が直面する現実的な課題を浮き彫りにしました。特に、働き方の調整やメンタルヘルスへの影響は深刻であり、保護者への具体的な支援やレスパイトケアの重要性が再認識されます。

子どもたちの健やかな成長のためには、その家族、特に保護者が心身ともに健康であることが不可欠です。社会全体で発達障害への理解をさらに深めるとともに、保護者と家庭を包括的に支える仕組みの整備が、今後の重要な課題と言えるでしょう。

調査概要

  • 調査名: LITALICO発達ナビ ユーザーサーベイ2026

  • 調査期間: 2026年6月

  • 総回答数: 911名

  • 本リリースの有効回答数: 623名(「保護者(ご家族)」と回答した方のデータ)

  • 調査方法: インターネットによる匿名調査

Written by

菅間 大樹

findgood編集長、株式会社Mind One代表取締役
雑誌制作会社、広告代理店、障害者専門人材サービス会社を経て独立。
ライター・編集者としての活動と並行し、就労移行支援事業所の立ち上げに関わり、管理者も務める。職場適応援助者(ジョブコーチ)養成研修修了。
著書に「経営者・人事担当者のための障害者雇用をはじめる前に読む本」(Amazon Kindle「人事・労務管理」「社会学」部門1位獲得)がある。
https://www.amazon.co.jp/dp/B0773TRZ77